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チート能力をもらって異世界に行ったら、全員チート能力持ちだった件  作者: ぱん


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07 俺のチート能力最低ランクでした

 街を歩く。石畳の大通りには木造や石造りの建物が立ち並び、店先には色とりどりの看板が掲げられていた。パン屋からは焼きたての香ばしい匂いが漂い、別の店では見たこともない果物や野菜が所狭しと並べられている。行き交う人々の姿も、現代の街とはまるで違った。


 ガルドの話していた通り、この街では人間以外の種族も普通に暮らしているらしい。人混みの中には、頭に獣の耳を生やした獣人の姿がちらほらと見える。狼のような耳を持つ者もいれば、猫のような耳を持つ者もいる。大きな尻尾を揺らしながら歩いている者までいた。


「……本当に獣人がいるんだな」


 思わず呟く。さらに目を向ければ、長く尖った耳を持つ者や、人間よりもずっと小柄な身体をした者の姿もあった。


「さっき話していたエルフやドワーフも、こうして普通に街を歩いているのか……」


 ローブをまとい、杖を手にした魔法使い。腰に剣を下げ、革の鎧を身につけた冒険者。大きな斧を背負った男に、弓を持った女性。背中に大量の荷物を背負った商人らしき人物までいる。


 遠くには街を囲む高い城壁がそびえ立ち、上空では鳥が羽ばたいていた。荷物を載せた馬車が石畳を走り、建物の看板には見たこともない文字が並んでいる。どこを見ても、ゲームやファンタジー映画でしか見たことのない光景ばかりだった。


「……本当に異世界なんだな」


 画面の中で眺めていた世界が、今は自分の目の前に広がっている。改めてそう実感すると、不思議な高揚感が込み上げてきた。そんな街並みを眺めながら歩いていると、隣を歩いていたリナが口を開いた。


「そういえば、タツヤさん。この街に美味しいスイーツのお店があるんです」


「スイーツ?」


「はい。甘いものが好きなら、今度一緒に行きませんか?」


「……え?」


 一瞬、思考が止まった。女の子と二人でスイーツを食べに行く。それって、つまり――。


 ……これ、もしかしてデートの誘い?。


 危うく声に出しそうになり、慌てて飲み込む。


 いや、待て。落ち着け、俺。


 そもそも、女の子と二人で出かけた経験なんて一度もない。それどころか、女の子から誘われたこと自体が初めてだった。出会ってから、まだ数十分しか経っていない。それなのに、いきなりスイーツに誘われるなんて……。


 もしかして、リナは俺に気があるのか?。


「タツヤさん?」


「……あ、いや。なんでもない」


 考え込んでいた俺を、リナが不思議そうに覗き込んでくる。


「どうかしました?」


「いや……その、スイーツってどんな店なんだ?」


「ふふっ。行ってみてからのお楽しみです」


 リナは楽しそうに笑った。


「じゃあ、今度一緒に行きましょうね」


「……ああ」


 俺は頷いた。そういえば、あれから女神からは何の音沙汰もない。異世界に送り込んだ張本人のくせに、いったい何をしているんだか。少しばかり苛立ちを覚えたものの、隣を歩くリナを横目で見ると、そんなことはどうでもよくなった。


 可愛いな……。


 自然と顔がほころぶ。まさか異世界に来て、こんな展開が待っているとは思わなかった。――異世界生活、案外悪くないかもしれない。


 そんなことを考えているうちに、目の前に大きな建物が見えてきた。建物の正面には、ひときわ目立つ看板が掲げられている。


《冒険者ギルド》


「……ここか」


「はい」


 リナが頷く。


 扉を開けて中に入ると、広々とした空間に大勢の人々が集まっていた。武器を携えた冒険者たちが談笑し、壁に貼られた依頼書を眺める者もいれば、受付で職員と話をしている者もいる。まさに、俺が想像していた冒険者ギルドそのものだった。


「いらっしゃいませ。冒険者登録でしょうか?」


 受付に座っていた女性が、こちらに笑顔を向ける。


「ああ。初めてなんだけど」


「かしこまりました。それでは、登録の前に能力を確認させていただきます」


「能力?」


「はい。冒険者の方には、それぞれ得意不得意がありますので、まずは能力ランクを確認いたします」


 受付嬢はそう説明すると、奥から透明な水晶を取り出した。


「こちらに手を置いてください」


「分かった」


 言われた通り、水晶に手を置く。すると、水晶が淡く光り始めた。


「…………」


 受付嬢は水晶に表示された結果を確認する。そして――。


「……え?」


「どうした?」


 受付嬢の顔から笑顔が消えた。


「……Dランク?」


「D?」


 俺は首を傾げた。


「Dって何?」


「……能力ランクです」


 受付嬢は困惑した様子で、もう一度水晶を確認する。表示が変わる気配はない。


「間違いありません。能力ランクはDです」


「能力ランク……D」


 リナが呟いた。受付嬢の表情も、次第に険しくなっていく。


「まさか……」


「おい、どうしたんだ?」


 嫌な予感を覚えながら尋ねると、受付嬢は真剣な顔でこちらを見た。


「Dランクの能力者が確認されるのは……十年ぶりです」


「……マジかよ」


 俺は水晶に表示された文字を見つめた。


《能力ランク:D》


「俺……そんなに珍しいの?」


 受付嬢は真剣な表情で頷いた。


「はい。非常に珍しいです」


「……マジかよ」


 いや、ちょっと待て。俺は何のために異世界に来たんだ?女神からチート能力をもらい、異世界で無双する。強敵を圧倒し、周囲から「すごい!」「さすがタツヤさん!」と称賛される。やがて王族や貴族からも一目置かれ、民衆からは英雄と呼ばれるようになる。気づけば人望も名声も手に入れ、隣には美少女のヒロイン。さらにもう一人、二人と増えていき――両手に花どころか、人生そのものがバラ色。


 それが俺の望んでいた異世界ライフだった。なのに、現実はどうだ。異世界に来て、ようやく冒険者ギルドにたどり着いたと思ったら、十年ぶりのDランク認定。


 ……なんでDランクなんだよおおおおおっ!。


 心の中で絶叫する。


 俺の異世界生活、いったいどうなっちまうんだ……?


 異世界に来て三日目。俺はどうやら――十年ぶりに現れたDランクの能力者だったらしい。

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