37 その名はヴァルグレイユ
俺は黒銀色の鎧に覆われた拳を握り締め、古代竜の横顔を思い切り殴りつけた。
ドゴォンッ!!
『ぐおおおおおっ!?』
古代竜の巨体が大きく揺らぐ。顔面がひしゃげ、口元から血が飛び散った。今まで、どれほど攻撃を叩き込んでもほとんど動かなかった相手だ。それが、たった一発の拳でここまで吹き飛ぶとは。
「どうだ……!」
『貴様ぁぁぁ!!』
古代竜が怒号を上げた。次の瞬間、その巨大な口が俺へと迫る。
「なっ!?」
上下の顎が、俺を挟み込むように閉じてきた。
ガキィィンッ!!
「ぐっ……!」
俺は咄嗟に両腕を上げ、上顎の牙を両手で側面を掴んで受け止めた。鋭い牙の先端が黒銀色の鎧に食い込み、ギリギリと嫌な音を立てる。だが、それだけでは終わらない。下顎の牙も、俺の身体を挟み潰そうと迫ってきた。
「くそっ……!」
俺は両足を下顎の牙の側面に押し当て、必死に踏ん張った。上下から押し寄せる凄まじい圧力に、全身の鎧が軋む。足を押し当てた巨大な牙には、ミシミシと亀裂が走り始めていた。
おいおい……冗談だろ。
打撃耐性を100%まで高めていなかったら、今頃は一瞬で噛み殺されていたかもしれない。そう思えるほど古代竜の顎の力は凄まじかった。
「……どれだけ強いんだよ、お前!」
『小癪な真似を! そのまま噛み砕いてくれるわ!』
「悪いが、黙って食い殺されてやるほど大人しくはないぜ!」
俺は上顎を押し返すように腕へ力を込めた。歯の側面を掴み、身体をひねる。
ミシッ……!
『な、何を――』
「そらよっ!」
思い切り捻り上げると、古代竜の上顎の歯が根元から抜けた。
『ぐああああああああっ!!』
古代竜が絶叫する。俺は抜き取った歯を放り捨て、その口元から一気に離れた。
ズシンッ!
古代竜が痛みに身をよじり、地面を揺らす。だが、次の瞬間には怒りに満ちた目が俺を捉えていた。
『貴様……よくも我輩の身体に傷をつけたな……!』
「そっちが先に噛み砕こうとしたんだろ!」
『やかましいわ!!』
古代竜が大きく口を開いた。
まずい。何か来る!
そう思った時には、すでに身体が引っ張られていた。
「うわっ!?」
凄まじい吸引力が周囲の空気を巻き込み、俺の身体を古代竜の口へと引き寄せる。地面に転がっていた岩や砕けた石まで、次々と宙へ舞い上がっていった。
「くっ……!」
俺は地面に手を伸ばそうとしたが、間に合わない。
『そのまま我輩の腹の中で消え去るがいい!』
「しまっ――!」
俺の身体は、古代竜の巨大な口の中へと吸い込まれた。そして、口が閉じる。
ゴクリ。
古代竜の喉が大きく動いた。
「タツヤーーーッ!!」
「タツヤさん!!」
「タツヤ!!」
クラウス、リナ、ヴィル、ノノたちの叫び声が響く。
だが、返事はない。古代竜はゆっくりと口を閉じ、何事もなかったかのように顔を上げた。
『ふん。身の程を知らぬ人間め。これで一匹片付いたか』
「タツヤ……!」
クラウスが歯を食いしばる。神剣を握る手に力がこもったが、その身体にはまだ古代竜の攻撃による傷が残っていた。ガルヴァンも立ち上がろうとしているものの、すぐには動けない。
『次は貴様らだ』
古代竜が一歩踏み出した。その足が地面に触れるたび、周囲の岩が砕け、地面が揺れる。
空からは、いつの間にか小雨が降り始めていた。ぽつり、ぽつりと落ちていた雨粒は、次第に数を増やしていく。頭上に広がる雲も薄暗くなり、辺りを覆うように垂れ込めていた。
『我輩をここまで痛めつけた代償は高くつくぞ。貴様ら全員、骨の一片も残さず消し去ってくれるわ』
古代竜の身体から、黒い溶岩のような炎が滴り落ちた。その時だった。
『……む?』
古代竜の腹部が、不自然に膨らんだ。
ぼこり。
次の瞬間、今度は大きくへこむ。
『何だ……?』
ぼこっ、ぼこっ!
腹の内側で、何かが暴れているかのようだった。
「まさか……!」
クラウスが目を見開く。そして――。
『ヴォエエエエエエエエッ!!』
古代竜が突然、激しく嘔吐した。口から大量の溶岩状の炎が吐き出され、その中に一つの人影が混じっていた。
「ぐああああああああっ!!」
俺だった。
黒炎にまみれた身体が地面へ叩きつけられる。全身を覆う黒い鎧はところどころ変形し、溶岩のような黒炎が身体にまとわりついていた。
「タツヤさん!」
「タツヤ!」
リナたちが駆け寄ろうとする。
「来るな……!」
俺は地面を転がりながら、なんとか声を絞り出した。
「ぐっ……ああああっ!」
全身が焼けるように熱い。身体の内側まで灼かれているような感覚に、思わず悲鳴が漏れた。火炎耐性があるとはいえ、先ほどまで古代竜の腹の中で、溶岩状の黒炎と一緒に激しく揺さぶられていたのだ。まとわりつく黒炎は消える気配もなく、俺はその場でのたうち回った。
『無様なものだな』
古代竜が俺を見下ろす。
『どの道、貴様が我輩に飲み込まれた時点で死は確定している。少しばかり長く苦しんだところで、結果は変わらぬ』
「……っ、誰が……死ぬかよ……!」
『まだ口が利けるか。だが、そこで這いつくばっているがいい』
古代竜は俺を跨ぎ、クラウスたちの方へと歩き始めた。
『貴様ら、先ほどまでの礼を、たっぷりと返してやるぞ』
古代竜が低く唸った。その直後、全身を覆う鱗の隙間から、白金色の光が漏れ始める。光は次第に強さを増し、やがて鱗の隙間から細い炎となって染み出してきた。
白金色の炎は古代竜の身体を伝い、溶岩のように揺らめきながら全身へと広がっていく。炎が地面に触れるたび、周囲の岩が赤く焼け、表面がどろりと溶け始めた。
『我が力を見せてやろう』
古代竜が翼を大きく広げる。すると、身体から溢れ出した炎が一気に勢いを増し、その巨体を包み込んだ。
『ゼニススキル――《焔喰竜鱗》』
白金色の炎が古代竜の全身を覆い、鱗の一枚一枚に沿うように形を変えていく。やがて炎は竜の鱗を思わせる形に固まり、隙間なく全身を覆う白金色の炎の鎧となった。ただ炎を纏っただけじゃない。まるで、古代竜の鱗そのものが炎へと置き換わったかのようだ。
『この炎は《終焉之焔》と同じく、一度触れれば対象を燃やし尽くすまで決して消えぬ。だが、《終焉之焔》とは違い、この炎は我輩に向けられた攻撃も魔力も喰らい尽くす。触れたものを燃やし尽くすまで消えぬうえに、喰らった力はすべて我輩のものとなるのだ』
古代竜がゆっくりと翼を広げる。白金色の炎が翼の輪郭に沿って揺らめき、周囲の空気が陽炎のように歪んだ。
「そんな……!」
リナが息を呑む。
「攻撃を吸収して、自分の力に変えるってことか……!」
ヴィルが悔しそうに拳を握った。
つまり、これまで俺たちが叩き込んできた攻撃も、これからはこいつの力になってしまうということか。しかも、全身を覆っているのは消えない炎。下手に触れれば、それだけで焼かれる。攻撃すれば相手を強化し、近づけば炎に焼かれる。厄介なんて言葉じゃ済まない能力だ。
『我輩に触れた時点で貴様らの負けだ。さて、どこまで耐えられるかな?』
古代竜が身体を低く沈めた。次の瞬間、巨大な尻尾が地面すれすれを薙ぎ払う。
「来るぞ!」
クラウスが神剣を構えた。だが、その身体はまだ万全ではない。先ほどまでの戦闘で負った傷も深く、立っているだけでも相当な負担がかかっているはずだ。それでも、クラウスは剣を握り直した。
神剣レガリアの刀身が淡く輝く。すると、クラウスの身体を覆っていた傷が少しずつ塞がっていった。神剣の力によって、受けた傷が回復しているのだ。
「……まだ、動ける」
クラウスは息を整え、隣にいるガルヴァンへ視線を向けた。
「なんとしてでも、俺が後ろにいるみんなを守る。これ以上、誰も倒させるわけにはいかない」
「俺もまだやれる」
ガルヴァンも苦痛に顔を歪めながら、なんとか立ち上がった。
「息子のお前一人に背負わせるわけにはいかん。一緒に戦うぞ」
「ありがとう、父ちゃん」
二人は並んで剣を構えた。その後ろには、倒れた仲間たちがいる。リナやヴィル、ノノもすぐには動けない状態だった。
古代竜の尻尾が、二人に向かって迫る。
『潰れよ!』
その瞬間だった。
ボオオオオッ!!
燃え盛る炎の塊が、古代竜の尻尾を横から受け止めた。
『なっ……!?』
尻尾の動きが止まる。そこにいたのは、全身を黒い炎に包まれた俺だった。
「……危なかったな」
「タツヤさん!?」
リナが声を上げる。俺は古代竜の尻尾を両腕で押さえたまま、ゆっくりと顔を上げた。
身体にはまだ黒い炎がまとわりついている。だが、先ほどまで感じていた焼けるような苦痛は、もうほとんどなかった。
そのとき、頭の中に聞き覚えのある通知音が響いた。
《火炎耐性が一定値に到達しました》
《火炎耐性+100》
《耐性値が上限に達したため、該当する耐性を100%発揮できます》
《耐性値が+100に到達しました。耐性に応じた形態モードへの移行が可能です》
「……そういうことか」
俺は自分の身体を見下ろした。これまで何度も炎を受け、そのたびに積み重ねてきた火炎耐性。それが、ついに上限へ到達したらしい。
古代竜の《終焉之焔》は、確かに俺の身体を覆っている。だが、もう俺を焼くことはできない。消えない炎であることと、俺にダメージを与えられることは別の話だ。耐性が100%になった今、こいつの炎は俺にとって脅威ではなくなった。
「はは……なるほどな」
俺は尻尾を押さえる腕に力を込めた。
「これなら、もう怖くない」
『馬鹿な……! 我輩の炎を受けて、なぜ平然としている!?』
「さあな。けど、一つだけ言えることがある」
俺は古代竜を睨みつけた。
「みんなを傷つけることは、絶対に許さない!」
全身を覆う黒銀色の鎧が、再び強く輝いた。胸部を守る重厚な装甲。竜の鱗を思わせる肩当て。そして、拳を包み込む巨大な籠手。そこへ、今度は黒い炎が重なる。
「形態変化――火炎!」
ゴオオオオオッ!!
炎が鎧の隙間から噴き出し、黒銀色の装甲を包み込んだ。黒炎は俺の身体を焼くことなく、鎧と一体化するようにまとわりついていく。やがて炎そのものが新たな装甲となり、全身を覆った。
打撃の形態に、火炎の形態が重なったのだ。重厚な黒銀色の鎧の上を、消えない黒炎が絶え間なく流れている。拳を握ると、炎が籠手の周囲で渦を巻いた。
「……これなら!」
俺は古代竜の尻尾を押し返した。
『ぐっ!?』
そのまま地面を蹴る。
ドンッ!!
足元の岩盤が砕け、俺の身体が一瞬で空高く舞い上がった。
「速っ……!」
自分でも驚くほどの速度だった。打撃形態によって強化された身体に、火炎形態の力が重なっている。今までとは比べものにならないほど身体が軽い。
俺は空中で古代竜の尻尾を掴んだ。
『離せ!』
「誰が離すかよ!」
両手で尻尾を握り締め、そのまま身体を反転させる。
古代竜の巨体が、持ち上がった。
『なっ……!?』
「おおおおおおおおっ!!」
俺は空中で身体を大きく回転させた。古代竜の巨体も、尻尾を支点にして引きずられるように回転していく。そして、勢いを最大まで乗せたところで――。
「地面に叩きつけてやる!!」
ドッゴォォォォン!!
古代竜の巨体が地面へ叩きつけられた。
『ぐはあああああっ!!』
凄まじい衝撃が周囲へ広がる。地面が大きく陥没し、岩盤が砕け散った。その衝撃は、古代竜の傍らに生えていた聖命草にまで及び、広範囲に広がっていた草の大半が、砕けた岩とともに押し潰されてしまった。
「しまった。聖命草まで巻き込んじまった……!」
俺は一瞬、地面に目を向けた。だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。古代竜はまだ倒れていない。
陥没した地面の中央で、古代竜がゆっくりと身体を起こした。
『ぐ……おお……!』
その身体は不自然に曲がり、全身の鱗にも亀裂が走っている。口元からは血が流れ、苦悶の表情を浮かべていた。それでも、古代竜は立ち上がった。
『ここまで……我輩を追い詰めるとは……』
古代竜の目が、俺を捉える。その目に宿っていたのは、先ほどまでの余裕ではない。明確な怒りと、俺への敵意だった。
『理解しているのか? 貴様が我輩に攻撃を仕掛けるほど、《焔喰竜鱗》によって、我輩はさらに強くなるのだ。貴様がどれほど強力な攻撃を叩き込もうと、我輩を強化する結果にしかならぬのだぞ!』
「そんなことは分かってるさ。だが、だからといって仲間がやられるのを黙って見ているわけにはいかねえだろ」
古代竜の身体を覆う白金色の炎が、さらに激しく燃え上がった。
分かっている。こいつの能力は、受けた攻撃や魔力を炎として喰らい、自身の力に変えるものだ。まともに攻撃を仕掛ければ、かえって相手を強化してしまう。それでも、仲間を守るために退くつもりはなかった。
『ならば、その無謀さを後悔させてやろう!』
古代竜が大きく身を沈めた。そして、次の瞬間――。
ドォンッ!!
古代竜の巨体が、空へ向かって跳躍した。
「なっ!?」
その巨体が、俺のいる高さまで一気に迫ってくる。古代竜は頭を突き上げるようにして、俺の身体を下から押し上げた。
「ぐおっ!」
凄まじい衝撃が全身を貫く。俺の身体はそのまま雲を突き抜け、さらに上空へと弾き飛ばされた。視界を覆っていた厚い雲を抜けた先には、どこまでも広がる晴れ渡った青空があった。
『まだ終わらぬぞ!』
古代竜も空中で身体を反転させる。尻尾の上部に並ぶ、白金色の炎を纏った鋭い三角形の突起。それらを刃のように振り立て、俺を切り裂こうと勢いよく振り抜いてきた。
このままでは直撃する!
俺は空中で身体をひねり、迫り来る尻尾に向かって両手を伸ばした。
「これが真剣白刃取りだ! そして、捕まえたぞ!」
ガシッ!
尻尾を掴んだ瞬間、凄まじい衝撃が腕に走る。だが、今の俺なら耐えられる。俺はそのまま古代竜の頭部にも手を伸ばした。
『何をするつもりだ!?』
「こうするんだよ!」
頭と尻尾をそれぞれ掴み、身体を大きく丸める。まるで巨大な縄跳びでもするように、古代竜の身体を自分の周囲で回転させた。
『ぐおおおおっ!?』
古代竜の巨体が空中で一回転する。さらにもう一回。回転するたびに勢いが増していく。俺はその勢いを利用し、古代竜を地面へ向けて一気に振り下ろした。
「これで――決めるっ!!」
ドッゴォォォォォン!!
古代竜の巨体が、地面へ激突した。先ほどとは比べものにならない衝撃が大地を揺るがす。地面はさらに深く陥没し、周囲の岩盤が砕け散った。残っていた聖命草も、衝撃に巻き込まれて次々と押し潰されていく。そして、陥没した地面の奥から、赤黒い光が漏れ始めた。
「……何だ?」
次の瞬間、地面が大きく裂けた。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
亀裂の奥から、赤く煮えたぎる液体が噴き上がる。
「マグマ……!?」
地中から溢れ出したマグマが、陥没した地面を満たしていく。周囲の岩が赤く染まり、熱気が一気に押し寄せてきた。
雨はいつの間にか本降りになっていた。空を覆う雲はさらに厚くなり、降り注ぐ雨粒がマグマの表面で白い蒸気へと変わっていく。その中心で、古代竜がうつ伏せになっていた。
『ぐ……ぬ……』
身体は大きく歪み、全身に亀裂が走っている。白金色の炎を纏った鱗も、ところどころ形を崩していた。それでも、古代竜はゆっくりと顔を上げる。
『……人間如きのくせに、中々やりおるわ』
その目が、俺を真っ直ぐに捉えた。
『認めてやろう。貴様は我輩がこれまで相手にしてきた者たちの中でも、相当な力を持っている』
「そりゃどうも……。でも、そろそろ諦める気になっただろ?」
『無論だ』
「……え?」
思わず聞き返した。
無論だと? まさか、降参するという意味じゃないよな……?
『貴様には我輩の名を教えておこう。強者に敬意を払うのは、我輩なりの流儀よ』
古代竜はゆっくりと顔を上げた。その瞳には、先ほどまでとは違う光が宿っている。
『我が名はヴァルグレイユ。幾千の時を生き、幾多の強者と刃を交えてきた古代竜だ』
「ヴァルグレイユ……」
その名を口にした瞬間、背筋に嫌な予感が走った。
まさか、こいつ……まだ戦うつもりなのか?
『その名を聞いたからには、覚悟してもらおう。ここから先は、貴様らを敵としてではなく、全力で打ち倒すべき相手として迎えよう』
「……おいおい、嘘だろ」
全力で打ち倒す? ここまでやって、まだ本気じゃなかったっていうのかよ……!
次の瞬間、古代竜の身体を覆っていた白金色の炎が、一斉に膨れ上がった。
炎は鱗の形を保てなくなったかのように揺らぎ、全身を包み込むように渦を巻き始める。白金色の光が激しさを増し、古代竜の輪郭さえも覆い隠していった。周囲に降り注ぐ雨も、炎に触れた瞬間、音を立てて蒸発していく。
『見せてやろう。我が力の、その真髄を』
古代竜の巨体が、白金色の炎の中で大きく揺らいだ。
『アルティマスキル――《不滅竜体》』
その瞬間、白金色の炎が激しく脈打った。炎の鎧が砕けるように形を失い、古代竜の全身へと溶け込んでいく。鱗も、翼も、爪も、尾も――そのすべてが白金色の炎へと変わり始めた。やがて、そこにあったはずの古代竜の肉体は完全に炎へと置き換わっていく。
それでも、竜の姿は崩れない。巨大な翼を広げ、鋭い爪を構え、長い尾を揺らめかせる。その姿は、白金色の炎そのものとなった古代竜だった。
俺たちの目の前で、ヴァルグレイユは肉体を捨て、白金色の炎を纏った竜へと変貌を遂げた。




