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ハートフルな生活を求めて異世界放浪  作者: 時雨
一章

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02 世界組合へ

「組合に行くって言ってたけどさ、俺たちが今さっきまでいた海とは打って変わってえらいムワムワした所を通るんだね」


俺たちが歩いている場所は、いまさっきの砂浜や舗装されていない道とは違いもはやけもの道と言っても過言ではない所を歩いていた。


「まぁ…魔王達に場所を知られた時に平地だと攻撃を受けやすいからね。こういった入り組んだ山の方が守りに徹しやすいんだよ」


なるほど納得だ。日本の昔の歴史でも重要な機関を山に囲われた海に面した土地に置いてたりした気がするし、おそらくそのような感じなのだろう

だが、自然の力まで借りて立ち向かわなければいけないのか。

組合という魔物に対して対抗できる施設を破壊しようと率先して動くあたり、魔王達に対して組合がどれだけ影響を与えているかが目に見えてわかる。

そんなヤバい場所に俺は今から行くのだろう?

無茶だ死ぬか気がする


「それ聞いて思ったんだけどさ、組合って魔王が注目するほどかなり有力な施設なんだろ?それってつまりさ、国の防衛機関に半魔半人の俺が行くのは、ちょっとアブナイ気がするんだけどどう思う?」


流石に心配しすぎかな?とは思ったが今回の人生はそう易々と死にたくないし、対策をしておいて損をすることはないからな。


「だから大丈夫だってば!いくら魔法が発展していても、センサーだけで種族を判定します。みたいな物は存在しないから大丈夫だよ。それに目を見られそうで心配なら眼帯でも作ってつければいいじゃん」


今の服装に眼帯ってかなりヤバい人に見えると思うのだがそこら辺はどうなのだろう。ま、きっと似合うやつが見つかるはずさ

そうして俺は自分の心配をどうにか押し付けながら歩く


歩…いているのかこれは


「なぁクレア、俺たちずっと同じ場所を歩いてないか?」


「そうだよ?」


そうだよ?じゃねーよ何でそんな当然のこと聞かないでみたいな顔するんだよおかしいだろ!!


「これどういうこと?俺みたいな存在がいるから進めないのか?それとも組合の方の嫌がらせ?」


「大丈夫。そろそろパネルが出現して面接みたいなやつがあるから、それで合格したらオウカも冒険家として組合に入れるようになるよ!」


やっぱ俺のせいだったんですね。

そして冒険家って面接とかしないとならないのか。この世界は何だか思ってたより色々と変だな

そんな事を考えながらずっと歩いているうちにモニターが飛んできた


その時俺に質問が一つ


「あなたは異世界人ですか?民間人ですか?それともトマトですか?」


何だそれ

お風呂にする?ご飯にする?それとも私?的な言い方でトマト出すのはやめろ気持ち悪い

そして何で異世界人かだなんて聞くんだ?流石にそこら辺にわちゃわちゃ異世界人はいないだろ。そんなこと聞く意味もわからない。そして結局意味がわからなかった俺はとりあえず正直に異世界人を選択した

そうするとモニターは元の場所へと戻っていった…かと思うとまた戻ってきた

画面には合格の二文字


「…ここはなんなの?クレアは俺に組合に行くと嘘をついたのか?」


「んなわけないじゃないか!僕は前回トマトを選んだら空からMe too!って聞こえてきて、ミスったかなかと思ってたのに気付けば僕は組合の中に立っていたんだよね。だから僕はおそらく間違っていない。ハズ」


まだトマトが消化しきれてないのに変なこと言わないでくれ…てかお前トマトって答えたのか

てかなんで選択肢にトマトが入るんだよ。魔王人参とかとおんなじ感じ?そう考えると気持ち悪いなぁ…てか意思を持った人参って、幼い頃に見たらトラウマ物だよね


そうしている間にも道をずっと進んでいたのだが、体感で五分間ほど歩いていると空から「お前は合格。早く来い」と聞こえてきたのでそのまま歩くことにした。

…もしかして組合に不合格になる方が難しかったりする?


「おっ、オウカ!ここだよ!ここが組合の入り口」


そうして案内された場所には…


何もなかった


「あの…何もないように見えるんですけど…」


「あぁっごめん。まだこの世界に来てから日が浅いから魔法の使い方とかわかんないんだよね。じゃあ僕がいる時は僕が透明化の魔法を一時的に無効化させてあげるから、また今度魔法の使い方は教えるね」


そうクレアが言った次の瞬間、目の前には重厚感のある大きな建物が立ち尽くしていた

今風のビルって感じではなく、中世ヨーロッパの要塞みたいな、そんな感じの堅牢さをどことなく感じる建物だった。そんな事をクレアに話している時、空からまた声が聞こえた


「この組合は元は要塞としてこの国を代々守り継いで来た由緒正しい建物なのじゃよ」


空を見上げると青い空と太陽によって生み出された影が少しずつ大きくなってきていた。


「いやぁ、最近は組合に登録して冒険をしようとする若者がほとんどおらんくなって困ってあったんじゃ。ありがとのう…」


このお爺さんは一体…?

てかやばい!ぼーっとしてたから忘れてたけど眼帯作ってないよどうしよう


流石に危機感を覚えた俺は瞬時に右目に髪をかけて紅いほうの目を隠すことで対策を施したが…バレないよね…?


「元勇者様!?お久しぶりです!」


…今元勇者って聞こえた気がするが気のせいだろうか。やはり俺みたいな体質の人が来る場所じゃなかったんだよ…


「おぉ、クレア。この娘はお主の彼女か?随分と可愛い娘を…」

「違うが!?」


素でツッコんでしまった。

忘れかけていたが俺は目だけでなく容姿までも変わってしまったんだったな。常に意識しておかないとすぐに忘れちゃいそうだよ


「この娘…?の名前はオウカ。海で溺れてたのを助けて冒険についてくるように言ったのです」


「ふむ。それは良いのだがな…わしが見るところに、オウカと言うやつは魔力がゼロだぞ?そんな娘と一緒に冒険に行ったら最悪の場合二人とも死んでしまうわい」


「「!?」」


えっ何?半魔半人なのに魔力ゼロなの!?せっかく転生したんだからステータスが高くあって欲しかったなぁ…

一応魔力ゼロが珍しいのかを聞いておこう


「魔力ゼロって珍しいのか?」


「300年ほど生きてきたが、魔力ゼロなんてやつを見たのは今日が初めてじゃわい」


300歳の勇者様でも初めて見るのか。それって俺ある意味逸材なのかも知れない


「まぁ、冒険者になる事に対して反対はせぬよ。ま、せいぜい頑張りなさい。オウカ」


「…わかりました」




その後は特に何かが起こるわけでもなく冒険者カードを発行され、クレアと一緒に一ヶ月ほど旅をしてきなさいと言われた俺らはその後すぐに組合を出発し、現在旅路についている


「何も疑われなくて良かったぁ…」


「そうだな。もっと魔物かとか疑われると思ってたんだけど…」


クレアによると、魔物ってのは異形な形をしているらしく、一眼で魔物だと理解できるのだそう。まだ俺は魔物を見たことがないのでハッキリとはわからないが、きっと相当わかりやすいのだろう


「そんな事より、オウカの魔力がゼロだったことの方が驚きだよね」


確かにそうかも知れない。俺は半魔半人だから魔力はあると勝手に思い込んでいたが、まさかその真逆。魔力がなかっただなんて…


「正直言うとショックだよ」


そう言うとクレアは軽やかに笑い、俺の方を向いてこう宣言した


「大丈夫。僕が守るから」


コイツ…!どうせモテてたんだろうなぁぁぁあ!!


「ちょっ痛っ!?何で殴ってくるの!?痛いからやめてオウカ!!」


やめてと言われたらやめるしかないか。だって怒ってないんだし


「…僕が君が魔力がないからって勝手に戦力外にしたのがいけなかったのか?それなら謝ります」


なるほどそう言う見方も出来るよな

俺はもう一度、今度は少し強めにポカスカ殴り始めた


「!?…えっ!?なんで?」


クレアの本気で困惑している様子が見ていてとても面白い。可能ならばこのままずっと殴っていたい


とは言え元勇者様に言われた一ヶ月間を無駄に過ごすわけには行かないので、殴るのをやめて歩き出す


「ねぇ、僕が悪かったからさ。もう殴らないでよ…何で無視してくるの…?」


俺は少し悲しそうなクレアと共に一ヶ月の旅に出発した




-オウカの日記-


一日目

今日は組合を出発して一日目。クレアがこの世界において知っておくと便利な事を教えてくれた。俺がその瞬間で覚えることの出来たものをここに書き記しておこうと思う


魔法は空気中の魔力量と自分の持つ魔力量に比例して威力又は効果が強くなる事

魔王は古代魔法を使ってくるので現代魔法科学では太刀打ちができない事

魔力は分け与えることができる事。ただしこれは魔力が少なからずある生物に限る。だから俺は分けてもらうことができないらしい

そして最後に、失われた命は現代魔法科学だと蘇生できないこと。今は見つかっていないが古代魔法に蘇生に近しい魔法が存在していたと言う文献があったらしい



三日目

毎日書くのしんどいわ。今日から書きたい日だけ書いていきます

今日はこの世界の法則について教えてもらった。結局法則なんてのは元いた世界とほとんど変わらない。違うところは魔法に関する云々のみであった


魔法は重力の影響や空気抵抗などを受けない。また、自分で意図して他の力に分散させない以上、摩擦などで力が失われることもない。ただしこれは放射系魔法に限った話であり、自分自身にかける魔法などは物理の法則をもろに受けるらしい



七日目

死ぬかと思った。一応俺とクレア両方無傷だったが、いきなり脇道から蛇が数十匹飛んできた時はどうなるかと思った


最近気付いたと言うか思い出したのだが、性別が中性になった影響で性欲が無くなっていた


嬉しいような悲しいような…?


そういえば俺って食欲もないわ。



十三日目


今日は崖の壁沿いを一日中ずっっと歩いていた。下を覗いちゃいけないと思えば思うほど下に対して興味を持ってしまい崖の下を覗いた瞬間に、今は亡き俺の息子が震え上がった。死ぬかと思った

最近冒険しかしないせいで死に対する恐怖心が薄れてきた気がする。今日だって何回落ちかけたっけ…まぁ、俺が前世で死んだ時に死への感覚ってのは狂ったんだろうな



二十一日目


最近クレアの様子がおかしい。いつもは落ち着いて対処できる敵から攻撃を受けたり、夜中何かを呟き始めたかと思うと何処かへ歩いて行ってしまう。しばらくすると静かになって戻ってくるので賢者になってるだけだと思われるが、とても心配だ。俺も戦い方と言うのを覚えた方が良いのだろうか?



二十二日目


クレアが消えた

どうしよう



二十三日目


朝起きたら目の前にクレアがいた。幻覚の俺と先に行っていたらしい。幻覚ってどうにかならないのかなぁ…?



二十四日目


たった今クレアが何か呟きながら暗闇の中に消えて行ったので尾行しようと思う。お取り込み中だったらすぐに引き返すつもりだったが、案外そうでもなさそうだ。何せ何かの魔法陣を描き始めたのだから。俺は魔法に詳しくはないので何もわからない。少しだけ怖いが、明日クレア本人に聞いてみよう



二十五日目


クレア自身は何も覚えていないらしい。どう言うことだ?確かにクレアは昨日何かを呟きながら魔法陣を描いていたぞ…?もしかしたらこれは深追いしてはいけないのかも知れない





-今現在-


「今日の日記は何を書こうか…」


そんな事を真剣に悩んでいると狩りを終えたクレアが戻ってきた。最近調子が悪そうだが大丈夫なのだろうか


「ただいま。今日も日記を書くのかい?最近は毎日日記書いてるけど大丈夫?疲れない?」


「クレアこそ、最近調子がおかしいぞ?一回ゆっくり休んだほうがいいんじゃないか?」


そう聞くと自分が元気だと誇示するかのように腕をパワーの形にして言う


「僕は大丈夫さ。しっかり睡眠も食事も摂ってるからね。それで、何度も聞いて悪いけど今日も腹減ってないの?」


またそれか。俺の体は食事の必要がないと何度言ったらわかるのだろうか


「大丈夫だって」


「そうは言うけどさ、普通の魔物でも、魔王だって食事は取るし排泄もするんだよ?それに比べたら、いくら新種だからとは言えイレギュラーすぎない?」


そんな学者としての思考で俺を見ないでほしいが、まぁしょうがないか


「いや、そんなことは」

「そんな事はなかろうて」


いきなり俺たちの会話に口を挟むなんて何事だよ。てか誰な…


「誰だお前!?」


気付けばクレアが戦闘体制に入っている

えっ、そんなやばいやつなの?コイツ


「フッ…あの老いぼれた勇者の弟子のくせして我のことすら知らぬとは、爆笑モノだわ」


そう言って俺の前に手をかざす


「危険分子は早めに摘んでおいたほうが良いと言うのが我ら魔王の意見だ。で、お前はどう思う?クレア」


「オウカ!ここは俺に任せて逃げろ!殺されるぞ!」


それ、本気?と言う前にクレアがその男に向かって拳を振るう


「そう言えば、お前は拳聖クレアとしての一面も持っていたんだったな。長期戦になると非常にめんどくさいので手短に終わらせようか」


そう言ってその男が俺に向かって―――


「グッ…!」


目を開けると目の前にはクレアが立っていた

…庇ってくれたのか?


「何…してんだっ!早く逃げろっ!!」


今までクレアから感じたことの無い気配を感じ、流石にこれはまずいと感じた俺は一目散に逃げることした



何で俺はこの時、最初に逃げろと言われた時にすぐに逃げなかったのだろうか。もし、もしあの時俺が逃げていれば






クレアが死ぬ事はなかったのかも知れなかったのに


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