01 魔王勢力
「いや、大事なことを伝えるのを忘れていたよ!魔王になるにはとある特定の行動をする必要があるんだ。それに君は瞳が片方赤いだけで、まだ魔物だと決まったわけじゃないしね」
いや俺どうみても魔物ですが?性別ないが?と内心ぼやきつつ、魔王のイメージをしてみる。やっぱり魔王って聞くと悪のイメージが強いからなぁ…ニューライフ開始早々魔王だと言われて殺されるのはごめんだし、とりあえずは安心だ。まぁ、俺が魔王になることなんて多分無いと思うけどね!
「そうなのか…ちなみに一応聞いておきたいんだが、魔王になるためには何をすればいいんだ?」
魔王になることなんてないと思うけどやっぱ気になっちゃうよね。ちょっとした探究心を肥大させて、いつまでも疑問を絶やさない事が生きていく上で重要だと思うし、知っといて損はないしな
「それがね…魔王ってのは基本的に人間との関わりを持たないから、魔王のなり方って言うのはほんの一部分しか解明されていないんだよ」
「ほうほう…」
その一部分が重要なのだが、何故か途中で話すのを辞めてしまったし、また今度聞き直すことにしよう
「ねぇ、ひとつ提案なんだけどさ?君は別に悪い魔物ではないっぽいし、俺と一緒にこの世界の種族をより詳しく知るために旅に着いてきてくれないか?」
「えっいいのか?」
どう言う風の吹き回しかはわからないが、この世界を知るにはうってつけじゃないか。旅をしながら世界の勢力や生態系の話をするもよし、少しだけ武術をやるもよしだな
「誘っといて断るなんて意地悪な事はしないよ」
つまり良いってことだよな
俺の体が魔物になったからかは分からないが、少し人間に対して疑心暗鬼になっている所があるな
気をつけないと疑いすぎで迷惑をかけかねないからな
そう決心している間にいつの間にかクレアが視界の遥か遠くへ消えていた
「はやっ!?おーい!クレアーッ!置いていくなよぉ!」
さすがにこれぐらいの声の大きさで読んだら気付くだろ……
…気付いていない…だと!?
クレアは気付いた時と同様ゆっくり歩いている
いけない。このままでは置いてかれてしまう。急がなくては
俺は少し駆け足でクレアを追いかけ、ようやく追いついた所で肩をポンと叩き驚かしてみる
「よーぅ!何で俺のこと置いて行ったんだよ?」
「…?あれ…?」
「どうしたんだよ?」
まるで双子を見るかのような目で俺のことを凝視してくるものだからすこしビビってしまう。別にビビる要素などどこにもないのだけどね
「…いや、持病の幻覚が引き起こされただけみたいだ。さ、行こう」
「いや持病の幻覚って何だよ!!」
思わずツッコんでしまった。俺が元いた世界では持病の幻覚なんて聞いたことないぞ?幻覚なんて余程体調が悪い時か、違法のそれだとか…この世界はそこら辺はしっかりしてそうだが、持病の幻覚なんてものがこの世にはあるのか
「あぁ、これは色々あって、幻覚を見せられる呪いがかけられてるんだよ。あまり気にしないでね」
「いや気にしまくるが」
呪いって持病判定なの?てか呪いって治るものじゃないのか?そんな疑問を読み取ったかのようにクレアが話し始める
「呪いって言うのは、基本的に術者に死が伴う物だから解除するのが大変だし、出来たとしても莫大な費用と生贄が発生するから、一国の王子がかけられたぐらいじゃないとこっちの世界では解除されないんだよ。オウカの元いた世界はどうだったんだい?」
自分が死ぬことでかける魔法だからそうとう効果が強いらしい。って、元いた世界の呪いだって?
「元いた世界に呪いなんてなかったよ。一応都市伝説的な感じで存在はしていたけどな」
「呪いは存在しているよ。オウカの世界での呪いの効果が薄いのは空気中の魔力がそれほど多くないからだろうけどね…人の思いはそのまま祝福にもなるし呪いにもなりうるんだ。それほど強力なんだよ。想いというのは」
なかなか深い事を言ってくれた。呪いというのは空気中の魔力量にも関係するのか
思い出してみれば、朝のニュースであってる運勢とかが良かった日は仕事がうまく行った覚えがある
なるほどね。気持ちは祝福にも呪いにもなる…か
覚えておこう
そういえば、この世界には種族だとか魔物だとかがいるらしいが、どうなっているのだろうか。
天使とかいるのか?まぁクレアに聞くのが1番か
「ところでひとつ疑問なんだけどさ?この世界に種族ってどれぐらい居るんだ?それと、魔王勢力について知ってる分をできるだけ詳しく教えてほしい。お願いできるかな?」
「勿論だよ。魔王勢力ってのは、天使と悪魔と龍と魚人と吸血鬼とスケルトンと人参がいて…」
…ンン?今人参って聞こえた気がするんだが、気のせいだろうか?まぁ続きを聞くとしよう
「魔王達は基本的に世界的な脅威ができない限りはお互い牽制しあってるんだ。そのおかげでここ数千年は戦争が起きてないって言われてるほど、魔王は人間界に影響を与えるんだ。ちなみに種族はそいつら以外にも色々あって、オークとか猪とかの獣類と、トンボなどの昆虫類、ゴブリンやスライムなどの魔物類など様々な種類の生き物が棲息してるんだよ。この世界ってすごいでしょ?」
一気に話してもらったせいでほとんどが右耳を通って左耳から流れて行ったが、とりあえず魔王に人参がいる…?ある…?ことは理解できた
クレアは自分の好きな事を話しているととっても生き生きしてていいなぁ。自分も死ぬ前はこんな生き方してみたかったなぁ…
「…どうしたの?僕が君に何か嫌な事言っちゃった?」
おっと、考えていた事が顔に出ていたようだ
どうもこの体は表情が豊かなようだから気をつけないと、今みたいに心配させてしまうかもしれないな。以後気をつけよう
「いや、そんな事はないよ。ほら、人参とか言う魔王いるらしいじゃん?そいつがどんな魔王なのか想像してただけだよ」
そう答えると少しだけホッとしたようにクレアは頷き、疑問に答えてくれた
「聞いて驚かないでよ?人参ってのは、野菜が唯一自我を持った存在なんだ。だから必然的に植物系の魔王の資格を入手して魔王になったらしいよ?でもね、無詠唱で魔法を扱える事以外は基本的にただの人参なんだって」
やっぱりそっちの人参だったかと謎に納得した自分がいる事に戸惑いを隠せない。野菜が自我を持つことってあるんだなぁ。
「野菜が自我を持つだなんて、この世界も何かに必死なんだな」
少し冗談を混ぜて言ったつもりだったが、クレアの顔が今さっきの穏やかな表情から一転真剣な顔になった。世界が必死なんて冗談を真に受けるってまさか…まさかね
「この世界って、実はもう崩壊寸前だったりする…?」
そんな物騒な質問にクレアは頷く訳でもなく、かと言って首を横に振るわけでもなく、ただ力無くこう言った
「…僕が生物学者を目指した理由ってのが、世界の生態系が最近増加傾向にある魔王とその配下によってバランスが崩されている事にあるんだ」
それはまた随分と規模が…
「それで、魔王と生態系のバランスを調べている過程で、魔王の幹部に出くわしてしまってね、その時にかけられた呪いが、幻覚の呪いだったってことさ」
なるほど。でもそんなことしたらいくら幹部だってタダでは済まないんじゃないのか?それとも何人も幹部のストックがあるのか?
「そいつが実は悪魔系の出身でさ、呪いが1番得意だったらしいよ。最悪だよね…」
なるほどそう来たか…確かにそれは最悪だ。相手はポンポン呪いをかけられるのに、それを解除するには大勢の犠牲が必要だなんて…普通に生命としての尊厳がぶっ壊されてる気がする
呪いとはそういうものなのか…魔法の恐ろしさを実感した感じだ…
「幻覚が見えるだけで生命活動に支障はないんだろ?ならきっと大丈夫だからさ、俺一緒にとこれから頑張って生きていこうよ」
「ありがとう…こうしてグダグダしてるのも時間の無駄だし、とっとと組合に行こうか」
ん?組合?
組合というと、ギルド的な感じだろうか?
そこに行ったら片目が赤の俺ってば敵視されちゃうんじゃ…
「な、なぁ、俺が組合に行っても大丈夫なのか?生きて帰れる?俺って今ただの人間ぐらいの強さしかないよ?」
「…オウカ、さっきから思ってたんだけどさ、君は組合でのいざこざよりまず服装を気にした方がいいと思うよ」
…そういえば、俺の服装はボロ切れ数枚とかいう貧相にも程がある服装なんだもんな
でも金はないし買うのはまた今度でいいかな!
「今度買おうとかそういうのはよしといたほうがいいと思うよ。君は見てくれは完全に美少女なんだから、一人で彷徨こうものならすぐチンピラに絡まれちゃうよ?だからせめて今すぐまともな服を買いに行こう。ね?」
服を買ったところで容姿は変わらないのだからさほど意味はないように感じるが、確かに服をしっかり着ないと何だかいろんなところがスースーして気持ちが悪いからな。ここはお言葉に甘えて、服を買ってもらうとするか
そうして俺はクレアと一緒に服屋へ行ったのだが…
「俺、前世でも女性の服を決める事とか無かったから今の俺に何が似合うかとかわかんないんだよね…どうすれば良いかな?」
「うーん…?それを僕に聞かれても…」
お互い女性のコーデをしたことのない者同士だったからか、全く服が決まらない
何とか自分の背の丈にも合う可愛い…?かっこいい服を見つけようと奮闘しているところに救世主の店員さんが声をかけてくれた!これはもう勝ちだろう
「お客様の場合だと、この辺りが似合うと思いますよ!」
そう言って着せられた服がこれは酷かった
セーラー服…?ゴスロリ…?何で水着まで着せたがるんだよこの店員は
「あ、あの…俺はあまりこういう可愛い服装は好きじゃないので、もう少しかっこいいものにしてくれるの助かるんだが…?」
そう言ってみたりもしたが、「顔つきがとっても可愛らしいので絶対似合いますから!」の一点張りで全く聞いてもらえない。
どういう事だよ。全く勝ちじゃなかったよ酷い
もはや半ば呆れたようにその店員を見ていると、服を持ってきた店員さんがなにやら顔を青ざめさせてこちらに歩いてきた
「あの…もしかしなくても、この店員に服を選ばれた感じですか…?」
「そうですね。服をどうしようか迷ってたら寄ってきて…」
そこまで聞いた店員さんAが俺に変な服を着せてくる店員さんBの肩を掴んで関係者以外立ち入り禁止の所に入っていく
「…とりあえずは助かったよ。なーんで俺があんな可愛らしい服を着なきゃなんないんだよ!?っはぁ…恥ずかしくて死ぬかと思った」
「いや、似合ってたと思うけどね」
何を言っているんだコイツは…?俺は男だぞ?見てくれが女の子でも、中身が男だと知ってるお前までそんなんだったらもうどうにもならないぞ…
そんな事を考えていると関係者系のドアの向こうからゴンッと鈍い音が響き…項垂れた店員Bを引きずって店員Aが出てきた
「申し訳ございませんッ!コイツがお客様の服を無断で選び着用していたようでして…」
「あっいやいや!服を選ぶセンスがなかった俺たちも悪かったですし、この見た目なら仕方がないですよ…」
そういうと少しだけ不思議そうな顔をしながらまあ一度謝ってくる
「いえ、お客様に何も非はありません。今後コイツにはキツく言っておきますので…それではごゆっくりどうぞ…」
…この店員さんも苦労してるんだな…
俺は一応店員Aさんに「すみませんでしたー!」とだけ言ってそこら辺の服を選びもせず手に持ってレジに並び、買った後着替えてすぐに店を出た
「…オウカのファッションセンスって…なんか、独特?だね」
…そんな事は言わないでくれ。俺はあんな欲望の塊みたいな人がいる場所に居たくなかったんだよ…
だから…だからさぁ…!
「この服は不可抗力だったんだってー!!」
今俺は真ん中に白文字で「けぇき」と書かれた黒Tシャツに青の短パンと言う、何ともへんてこな服装をしていた。
正直俺としてはシュールな服装で好きなのだが、それをわざわざ打ち明ける必要もないので置いておく
「…嫌なら別のお店でまた服を買ってあげようか?」
「いや、これ以上クレアに負担はかけられないからね…この服でやってくよ」
この世界も夏に差し掛かっているのだろう。半袖短パンでも少し蒸し暑い。蝉がジワジワと鳴き、見たこともないような動物が道端を通る。この時点で俺は既にこの世界に慣れてきた事を実感していた。
だってそうだろう。道端に辺な動物がいて動じなくなっちゃったんだぞ?
「あぁー…こっちの世界も蒸し暑いな…」
また海に浮かびたいな。きっとあそこは涼しいんだろうなぁ…
「そう文句を言っている時間も惜しいしさ、行こうか。ギルドへ」
こうして、俺とクレアの異世界旅行が始まったのであった
人間と魔物の見分け方を変更しました
最弱職だって勇者になりたい!を今日更新します
多分絶対




