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DGエンジェルズ あなたは、天国を目指せますか? ー地獄から脱獄した咎人と戦う魔法少女の生を追い求めるための戦いー  作者: 瀬名川匠
七章 もう戦わない! クライム&パニッシュ! って今度はこっち!?

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第二十九話 希望の名は

「それで?」

「ん?」

「昨日ははぐらかしていたけど、親が死地に近いところにいたってどう言うことよ?」


 閑散とした部屋、家具一つも置かれていない四角い小箱のような場所でホコリが≪着替え≫ながらにライクへ昨日の話をする。

 自分たちが正義の味方なる邪道を歩くことを決意したその日の出来事だ。

 あの戦いのすぐ後ライクは自分の≪セーフティーハウス≫と呼んでいる一軒家に彼女達を誘い込んだ。家と言ってもただただ広い土地に建てただけの物だなんてライクは言うけれども、その実態は立派な一軒家に地下にはダンススタジオにおいてあるような巨大な鏡がある。

 ライクが言うには、万が一マンションを追い出された時のことを考えて殻堕を手に入れた直後に家を買って、さらにアイドルをする事になり、家の地下を改築したのだとか。

 余談が過ぎたが、彼女は調にとある頼み事を事をすると、お風呂から上がって来た鳴や牟六とも打ち合わせをして、解散の運びとなってしまった。

 故に、聞きそびれた。ライクの、その武器商人もビックリな違法なソレらにインパクトを持っていかれて、ライクの父親が死地に近いところで働いていたと言うのは、どういうことなのかと。普通の人間だったら前者の方が疑問に思うところだと思うのだが、ホコリも大概な性格をしているからツッコミを入れなかった。

 ライクはそんなホコリを残念に思いつつ手と手を組み、必要のない背伸びをする。


「そのまんまの意味。お父さんは私が小学生の頃に死んだ。それまでに私はたくさんの武器の扱い方、種類、そしてソレの危険性を教えてもらった」


 つまり、彼女はこの法治国家であり、絶対的な安全性とともに危険性を孕んだ日本においてはあまりにも過剰ともいえる武器の使い方を父親から教わっていたと言う事か。いや、違う。この場合は父親がライクに≪教えてしまった≫というべきなのだろう。ホコリは、どこか呆れた様子を見せた。


「ろくなお父さんじゃ無いわね」


 他人の親を貶す発言何てあまりしたくなかった。だが、今までライクと付き合いのあったホコリにとって初めて聞くライクの父親の話を聞いて率直な感想がそれであったし、事実、そんな親碌な物ではないだろう。それは、ライクもそう思っていた様子である。


「私もそう思う。けど……」

「けど?」

「そんな遺伝子を強く受け継いじゃったのが私なんだよね」


 まるで、残念そうに、しかしそこにはどこか嬉しさも交えたような表情で自分の殻堕の手を見ながら、呟いた。


「……そのようね」


 ホコリは、その姿を見てもうこれ以上彼女の父親について追及することを止めた。これ以上、彼女の弱み何て見たくなかった。完璧超人で自由人な福宿来求のイメージを崩したくなかったから。

 もしかしたら父親の影響を受けた結果自由人になってしまったのかもしれないし、いいところもあれば悪いところもある、と言った感想が出てくるのだろう。

 彼女のルーツにも迫る物、それは彼女自身のプライバシーにかかわることであり、他人の人生に口出すというホコリにとっても為にならない物のためこれ以上聞くことはしまい。

 故に、ホコリは話を逸らす。


「そういえば、結局なんであの刀や銃でトガニンを攻撃できたのか、教えてもらってないわね」


 先日の事件で、刀や拳銃の弾丸と言ったこの世界の銃火器が、何故トガニンに効果があったのか。警察の銃弾や、勿論非殺傷武器であるスタンガンでトガニンにダメージを与えることができないのは既に確認済み。

 であるのに対してどうしてライクにはそれができたのか。ライクは背伸びを止め、数刻考える。


「あぁ、それね。ほら、超能力者のミナトの攻撃が通用したでしょ?」

「ソレが何よ?」

「生きていた時は確かに超能力を使えたかもしれない。でも、死んでからも超能力が使えている。ソレが、私の中で不思議に感じたんだよねぇ」


 言われてみれば、不思議、なのだろうか。超能力者がどのようにしてその力を発揮しているのかはよく分からないからハッキリとはしないし、そもそもミナトという存在に出会うまで超能力者という存在に疑問も持っていたし、その力が本当にあるのかは懐疑的だった。

 でも、彼女と出会ってようやくその存在を認知し、受け入れたところでの今回の事件。

 生きている間も、死した後も使える超能力という未知なる存在、しかしライクには一応の仮説があるようで、その説明を詳しくされた。あまりにも長く、そして果てしなく難しいものであるためきっと、ホコリ以外が聞いてもチンプンカンプンな話題であったであろう。


「―――って事、どう分かった?」

「えぇ。で結論は?」


 まぁ要するにだ。元々ミナトの脳には疾患が存在していた。その疾患が、ミナトの身体に物体浮遊や移送のための力を与えていたのではないか。そんな仮説である。

 その仮説を元にした場合。その力は死んでから失われたはずだ。脳が無くなったから当然の話。超能力も、生前の名残みたいなものなのだ。その名残も、この前の事件、つまり地獄門事変の事であるが、その時に彼女の魂に残っていた最後の超能力者としての力が主犯である催眠術師によって吸い上げられたのではないか、それが彼女の仮説その2であった。

 いや、そう考えなければあの主犯である人間がミナトを攫って利用する原因にはならない。その結論から逆算していった結果がライクの最後の仮説につながっている。


「それじゃ、昨日ミナトが使ってたのは?」

「霊力を用いた、幽霊なら誰でも使える技。所謂ポルターガイスト現象」


 ライクは脱いだ服を、触れることもなく綺麗に畳んで床に置く。

 改めて書くことでもないが、ライクもホコリも現在≪殻堕≫の中にいる。その状態で彼女の言うところのポルターガイスト現象を使われると、確かにどこか超能力味を感じてしまう。幽霊の状態でもないのにポルターガイスト現象を自由に扱える当たり、どの程度彼女がその力の使い方をマスターしているのか、という指標にもなるのかもしれない。


「勿論普通の幽霊じゃあそこまでできない。私だってまだこれくらいしかできない。でも……」


 これくらい、ねぇ。ホコリは、まるで服屋に並んでいる衣服のように綺麗に整理整頓されたソレらを見てついツッコミを入れそうになったが我慢した。このくらいで反応していたのでは疲れるからだ。

 とにかく、ライクが言わんとしていることが分かった。


「生前から似ていたことをしてたあの子なら可能、ってこと。そして、霊体の攻撃は……」

「私たちがそうであるように、トガニンにとって有効打になる……つまり」

「超能力者兼天使で幽霊のあの子が武器に力を入れた攻撃は、トガニンに有効……」

「ぶっ飛んだ仮説だけどね。で試しに今回まず刀の方はミナトに力添えをもらって、銃は私の霊力を使った。そしたらああなったわけ」

「なるほどね」


 ホコリは髪をかき分け、なんとなく納得できるような、しかしできないような話を受け入れるしかなかった。そもそも全体的に仮説を用いた論証であるため反論材料があまりにも多すぎるのが欠点であるが、その仮説として考えるのが一番楽なのかもしれない。

 そもそもトガニンとは、地獄に堕ちた悪しき魂が現世に再訪したもの。同じ幽霊の、霊体のもつ力たる霊力に何らかの効果があったとしてもおかしくはない。普通の人間の攻撃、普通の武器でも通らない攻撃なら、そんな霊力を伴えば通る可能性がある。そう考えた故の判断か。ホコリはもうこの話を終わりにしようと思った。より一層、大事な話がある故に。


「それじゃ本題いきましょうか」

「だね」


 その言葉で、二人ともがそれまでの朗らかな表情を消し、氷山の一角のような冷たい目線で互いの事を見つめ合う。


「あの化け物、なんだと思う?」

「……」


 化け物。ソレすなわちトガニンを倒した直後に出て来た、あのトガニン以上の力を持つ怪物の事である。

 ホコリはライクの答えを待つも、彼女はどこか虚ろな目を見せて一点を見つめているだけだった。ならばと、ホコリは代わりに言う。


「人間じゃ無い、つい身体が動く程……トガニンなんて目じゃ無いくらいに強かった……」


 トガニン相手にも≪合気道という効果があるか不確か≫な攻撃を使ったホコリが、である。

 因みに何故、合気道を不確かと表現するのかに関してだが、これはホコリが現在入っている≪殻堕≫が人間の身体と構造が違う事に理由がある。

 ようは、五感を再現することができない、という事。視覚と聴覚は、幽霊である時にも使う事ができるのでそれが殻堕の中に入っても使用することができるから問題はないが、それ以外の三つ、味覚、嗅覚、そして触覚は使用できない。

 知っての通り、合気道は相手の力を利用して攻め手にダメージを与える物である。

 そのためには、繊細な動きと、そして敵の攻撃に合わせた動きが必要となる。しかし、その敵の攻撃に合わせた動き、という物が触覚が封じられている場合いささか問題になる。

 昨日の戦いではそれまでの経験とそして勘を頼りにしてトガニンを地に伏せる事を可能とした。物は試しというのはライクと同じ部分があるが、それに当人は気がついているのだろうか。

 詰まるところ言えば、合気道の動きを見せた時点で、まだ彼女が本気ではなかったことがうかがえるのである。そんなホコリが合気道では無い本気で敵を殺すための構えを、そしてライクが自分の所有している武器の中でも強力なソレを出した。その時点で現れた敵がどのような強さを持っていたのかがヒシヒシと感じられたのだ。本能が、身体を動かした。

 戦わなければ、≪生者の三人≫の命が危ないと、そう感じたから。


「勝てると思う? 私たち? あの化け物に」


 あの化け物相手に、果たして今の自分達で勝つことができるのか。

 答えなんてわかりきってるくせに、そう言わんとしている顔を見せたホコリ。冷たい口調が鋭く刺さる。


「……無理ね。死んでる私たちには、成長も進化もない。だから……」

「だからじゃなくて、だけど、ね」

「え?」


 人間は死してしまえばその時点で終わり。鍛えても、練習をしても、何の力も増えることのない。それが幽霊の宿命だ。それは、ライクも分かっているはず。

 なのに、どうしてそこで≪だけど≫という言葉が出てくるのか。ホコリには分からなかった。その答えを以前既に自分も話していると言うのにも関わらず。


「さて、行こうほこりん。≪ララ≫ちゃんが、みんなが待ってる」

「……えぇ、そうだったわねライク」


 彼女の名前を強調した。それで、ホコリは察したという。二人は互いに頷くと、とても煌びやかな衣装を身に纏って隣の部屋に通ずるドアを開いたのであった。

 果たして、その先にあったのは―――。


「さっ、歌唱動画撮ろっか!」

「「「はい!」」でしゅ!」

「えぇ」


 ライクとホコリと同じ服に身を包んだ、四人のエンジェルズの仲間、そして。


「準備はできてるわ」

『いつでもいいわよ』


 サポートメンバーたる天使たち。そひて作曲を担当してくれた調、があった。いよいよ、始まるのだ。その顔つきに、それぞれに緊張を思わせるものがあった。その緊張すらも、思い出にできると信じて。

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