結集する絆
「う……くっ……!」
大魔神の圧倒的な薙ぎ払いに吹き飛ばされ、ロイドとリアラは氷の叩きつけられた石畳の上で体態を立て直した。口端から一筋の血が伝う。
「大丈夫か、リアラ!?」
「はい……! ロイド様こそ、お怪我は……!」
立ち上がろうとする二人に対し、大魔神は嘲笑うかのように無数の眼球から黒い光線を乱射する。絶え間ない攻撃に、ミラが展開していた魔法障壁もついに限界を迎え、ガラスのように砕け散った。
「きゃああっ!?」
「ミラ!」
衝撃波に弾き飛ばされたミラが地面を滑る。間髪入れず、大魔神の太い巨腕が、動けないミラを押し潰そうと天高く掲げられた。
「させないわ!」
リアラが身を挺して飛び込もうとするが、間合いが遠い。ロイドも脚に魔力を集中させるが、距離がありすぎる。
(届いてくれ……っ!)
ロイドが必死に手を伸ばした、その時だった。
「お前に惨めな思いをさせるのは、俺たちだけで十分なんだよぉぉっ!」
突風と共に現れた巨大な影が、ミラの頭上で振り下ろされた大魔神の巨腕を真っ向から受け止めた。
ガァァァン――ッ!!
「シーザー!?」
そこに立っていたのは、大剣を両手で支え、歯を食いしばって巨腕を押し返すシーザーの姿だった。さらに周囲の氷壁を突き破り、「王の盾」の元仲間たちや、後続として駆けつけた魔皇国の精鋭部隊が雪崩れ込んでくる。
「ロイド、遅くなって悪かったな! 雑魚どもは片付けたぜ!」
「シーザー……みんな!」
「ふん、元『王の盾』のリーダーが、こんな怪物の前で不細工なツラしてんじゃないわよ!」
弓闘士の射た光の矢が大魔神の眼球を射抜き、魔法使いたちの集中砲火が巨獣の動きを完璧に止める。
「ロイド殿! 遅くなりました!」
さらに谷の上空から、魔王軍の飛空艇と六神将たちの姿が現れた。魔王ジルバート自らが放った極大の闇魔法が大魔神の背を撃ち抜き、その巨体を大きく揺らさせる。
「魔王様まで……!」
「ロイドよ、一人で背負う必要などないと言ったはずだ!」
上空から降り注ぐ魔王の声が谷全体に響き渡る。
「人間も魔族も、いまやお前の示した道の下に一丸となっている! 世界の運命をお前一人の肩に載せさせはせん!」
「……ああ!」
ロイドの胸の奥から、熱いものが溢れ出してくる。
かつて婚約破棄され、国を追われ、世界から見捨てられたと思っていた自分。だが今、自分を救い、信じてくれた魔皇国の人々、そして過ちに気づいて駆けつけてくれた王国の仲間たちが、国境も種族も超えて共に戦っている。
「ミラ、リアラ! いけるか!?」
ロイドが手を差し伸べると、ミラとリアラはしっかりと二人の手を握り返し、立ち上がった。
「ええ! 何度だって立ち上がってみせるわ!」
「ロイド様、あなたの下で戦えることを誇りに思います!」
仲間たちの歓声と熱気が、極寒の『絶望の谷』を包み込んでいく。
『オオオオオン……不浄ナ羽虫ドモガ!!』
傷を再生させながら咆哮する大魔神。だが、ロイドの目にもはや恐れのの色はなかった。
「再生するなら、それを上回る光で一瞬で消滅させるまでだ!」
ロイドを中心に、集まった仲間たちのすべての魔力と意志が結集していく。次回、ついに最終決戦の火蓋が切って落とされる。




