ロイドとミラ
ミラ視点です。
グルガさんに今日から泊まる部屋に案内され、一息ついた後、リアラさんはロイド様と話しに行った。
さっきの話だけでは中途半端だったし、話したいことはたくさんあるだろう。
私も顔を見れただけでかなり安心してしまった。
これから魔皇国に住むことになるが、私は元々王国の出身じゃないし、ロイド様の近くに居られるならどこの国だってかまわない。
ようやく張り詰めていた緊張感から解放されて、急に眠気が襲ってきた。
少しでも眠っておこう。
◇
「ミラ、起こしちゃったかな?」
「いえ、先ほどから起きてましたよ。やはり疲れがたまっていたようです」
「そりゃそうだよね。居場所が分かっても、実際に会うまでは不安ばかりだったし……」
リアラさんも正直疲れた顔をしていた。
ただロイド様に会えてようやくいつものリアラさんらしい、明るい表情が戻ってきたように感じる。
「ところでミラ、一緒にロイドと話をしなくて良かったの?」
「リアラさんがまず二人で話したかったでしょうから」
「そんなに気を遣わなくていいんだよ。これからは一緒に居られるし、時間はあるんだから」
「私はロイド様が無事で、そばに居ることが出来る。それだけで充分幸せですから」
リアラさんは少し困ったような表情をする。
「でも本当はロイドのこと好きなんでしょ?」
隠していたつもりはないが、面と向かって言われるとドキッとしてしまう。
「それはそうですが……」
「なら言った方がいいよ。じゃないとあの鈍感さんは一生気付いてくれないからね」
リアラさんのスッキリしたような表情を見て、それも良いかと思ってしまう。私にも欲望くらいある。
「それもそうですね。先ほどのリアラさんを見て伝えたいことを伝えるのも悪くないなと思いました。
今ロイド様はフリーですからね」
そういってミラはふっと笑う。
「婚約者のいるフリーって意味が分からないけどね」
「ロイド様は女性からモテますから仕方ないことです。聞いたところこの国は一夫多妻もオーケーなようです。みんなでお嫁さんになるのも案外良いかもしれませんね」
言葉にしてみると、取り合うよりも皆で分かち合う方が良いような気がしてくる。
「グルガさんもロイド様を婿にしたいと言ってましたし、娘さん達もロイド様に気があるみたいですしね」
「えっ良く気付いたねミラ」
「リアラさんの告白の時の反応をみてればすぐ分かりますよ」
「相変わらずの観察力だね。私はそんな余裕なかったよ。追い返されるかもしれないと思ってたから」
「それはそうでしょうね」
少し考えた後今決めたことをリアラさんに向かって言う。
「私もロイド様に気持ちを伝えてみようと思います」
リアラさんも満面の笑みで答える。
「そうだね。まずは頑張ってあいつにこっちを向かせないとね」
「そうですね」
決心してみると、ロイド様の反応が楽しみになっている自分がいて、なんだか不思議と気分が良くなってきた。
◇
その日の夜、グルガさんの家族とロイド様と一緒に食事をした。
グルガさんの家族は良い人たちばかりで、こんな家族が私にもいたら良かったなんてことを思ってしまった。
ロイド様がここに来てどんな風に過ごしたか、兄妹三人で説明してくれた。
あまりにも楽しそうに話すものだから、なんだか自分のことの様に嬉しくなってしまった。
食事も終わり、皆がそれぞれの部屋に戻った後、少し時間をおいて、ロイド様の部屋を訪ねた。
「ロイド様、今少しよろしいですか?」
「大丈夫だよ」
許可をもらったので部屋に入る。
ロイド様は読書をしていた。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「ロイド様と話がしたくて」
「そうか、じゃあそっちに座ってくれ」
そう言われて、近くにあった椅子に腰掛ける。
「俺からもミラに言いたいことがあったんだ。先に言わせてもらうが、心配をかけてすまなかったな。リアラからも聞いたよ」
「いえいえ、ご無事で何よりです。こうして会えたのですから構いませんよ」
「そうか、俺もミラはどうしてるか心配してたよ。王国では大体いつも一緒に居たからな」
「私がロイド様について行っていただけですけどね」
王国に居たときは、私の希望でロイド様の秘書の様なこともしていた。
「まあいいさ。それでミラの話って?」
「はい。ロイド様は私と会ったときの事を覚えてますか?」
忘れるはずがないだろうが、そこから話し始める。
「流石にわすれないな。ミラに殺されそうになったからな」
ロイド様は笑いながら言う。
あのときの私の実力じゃ、とてもじゃないけど殺せなかったとわかっているはずなのに。
「ええ。教国からの命令でロイド様の暗殺をしようと思いましたが、あっさり返り討ちにあい、自害使用とした刃も止められ、どうしようかと思いました」
「そうだったな。孤児などを暗殺者に育てて、使い捨てる教国のやり方が好きじゃなかったからな」
ロイド様も孤児だったらしく、孤児が悪い道に行くことにいつも心を痛めていた。
「そのとき、私に一緒に生きて、楽しいこともこれからあるはずだからと言って下さいましたね。そのときはそんなはずがないと思っていましたが、ロイド様は、私に新しい世界をくれました」
「なんだ、急に昔の話をして」
「いえ、ロイド様に感謝の気持ちを伝えたかったのです。あのとき私を助けて下さってありがとうございます」
「俺がやりたくて、やったことだ。気にしなくて良いさ」
「そのあとも、私が一人でも生活出来るように、王国軍に居場所まで作ってくれました。王の盾の皆とてもいい人で、人間らしさを取り戻せました」
「みんな、他人のことを思いやれる奴らだからな」
「そうやってロイド様の優しさに触れていくうちに、私にある思いが芽生えました。この人と一緒に生きていきたいと、そばに居たいと……」
ロイド様は私の話を真剣に聞いてくれている。
いままであまり見たことない表情だ。
「ロイド様、私はロイド様の一番じゃなくても良い、そばにいるだけでも構いませんから、ロイド様のお嫁さんにして下さいませんか?」
ロイド様は予想していなかったようで、驚きの表情に変わる。
「ミラがそう思ってくれていたこと、すごく嬉しいよ。ただ、今の俺は結婚がどうだとか、よく考えられないんだ。イリスと結婚するものだと思っていたからな」
「はい、私もすぐに返事が欲しかったわけではありません。リアラさんの告白を見て、私の気持ちを伝えたくなっただけですから」
「何か俺、女性を待たせてばかりの悪い男みたいじゃないか?」
ロイド様が珍しく自虐的に言う。
こちらにきてまだそんなに時間が経っているわけでもないから、簡単に切り替えられないのも分かるんだけどな。
「ロイド様はモテますからね。イリア様がいつも露払い大変そうでしたよ」
「そうだったのか……。全く知らなかったよ」
「ロイド様はもう少し周りを見ることをおすすめします。いつも前だけを見ているのは素敵なところでもありますが」
「気をつけるよ」
「私が言いたかったことは言えました。これからは私のことも見て下さいね」
「いつも見ているつもりだったんだけどな」
「それもロイド様らしいですけどね。それでは私もそろそろ寝ますので部屋に戻ります。聞いて下さってありがとうございました」
「ああ。おやすみ」
そして私は部屋に戻る。
ロイド様が初めて私を一人の女として見てくれたような気がしてとても嬉しかった。
これから時間はあるんだから、皆に負けないようにアピールしていかなくちゃ。




