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英雄ロイドの災難  作者: 古淵 有


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33/50

自分の気持ち

 先ほどのリアラの告白で、場の空気がだいぶ弛緩した。


 周りの皆はにこやかな視線を向ける者と怒りを向ける者と様々だった。


 俺が状況を飲み込めずに立ち尽くしているとリアラが言った。


「ロイド、さっきの話はいきなりだったから返事は急がなくていいからね。それと私たちもここに居させてもらえそうだからこれからよろしく」


「ああ。リアラがそんな風に思っていたなんて知らなかったから驚いたよ」


 ユリスが笑いながら言う。


「ロイドくんは鈍感みたいだものね。リアラ。私はこの国の女王ユリスよ。国の長としても、ロイド君を取り合うライバルとしてもよろしくね」


「女王様だったんですね!?すみません。ってロイド!どういうことよ!」


 今度はリアラが状況を理解出来ずに俺を問い詰める。

 俺からはなんとも言いがたいんだが。


「ロイドくんは私との戦いに勝利したから、今私の婚約者ということになっているの。でも本当にどうするかは一年後に決めてもらうんだけどね」


 するとリアラは分かったような分からないような表情になった。


「今結婚していう訳じゃないんだね。ロイドはほんとに昔からモテるから困るよ……」


 そんな記憶はないんだけどな。


「まあとりあえずロイドくんのことは良いから、ひとまずリアラとミラにはこの町の防衛隊と協力して国防に携わってもらうわ。落ち着いたらそのあとの事は考えましょう。グルガとロイドくんが色々教えてあげてね」


 俺とグルガさんが頷く。


「じゃあひとまずここは解散しましょう。見張りの役の者は王国軍の動きをしっかり見張っててね」


 リアラが少し考えた後話し始める。


「ユリスさん、さっきまで、王国軍の指揮官と話をしていたのですがとりあえず王都に戻ることにすると言っていました」


「そう、なら安心かもしれないけど、備えはしっかりしておかなければね。あとはロイドくんたちにもなぜ魔皇国から王国や他の国に攻め込まないのかを説明しなきゃね」


 たしかに、これほどの戦力がありながらなぜ他国に攻めないのか、先ほどの戦いでも殺さずに追い返したのかなど気になることはたくさんある。


「今すぐ聞きたそうな顔してるけど、ジルバにも報告しなきゃいけないし、やることがたくさんあるから落ち着いてからね。じゃあまたあとで」


 急いでも仕方ないか。

 ここで一度皆それぞれの持ち場に戻ることになった。


 ◇


 まだ日が落ちるという時間でもなく、リアラとミラはグルガさんの案内を受けて、グルガさんの家の来客用の建物に住まわせてもらうことになった。

 モルも自宅に一度戻ったので、やることもない俺は川に釣りをすることにした。


 久しぶりにこの川で釣りをしているが、やはり釣りは良いな。

 色んなことがあり過ぎてごちゃごちゃしていた頭を一度リセットすることが出来る。


 ユリスとの婚約やリアラのことだ。

 二人とも俺に時間をくれるということだったが、あまり時間をかけすぎるのも男らしくない気がする。


 リアラは師匠の孫で俺に取っては家族同然の存在だったから、これまでひとりの女性としては見ていなかった。

 ただ、客観的に見ても綺麗で気立ても良く、優しくてしかも強い。

 家族という前提がなければ惚れていたかもしれない。


 ユリスにしても戦闘力で俺に匹敵する女性には初めて会ったし、とても美人だ。

 いままでそんなに女性との関係がなかったので、まさかこんな状況になるとは思わなかったな。


 ただ、二人に対してこれから真摯に向き合っていかなければな。

 時間も必要だ。


 そう思うと自分に出来ることはちゃんと考えて答えを出すことだけだと思うと気持ちも軽くなってきた。

 それに、王国軍の侵攻にも対応したり、魔物も退治しなければならない。

 俺が今できることをしないとな。


 そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。


「ここにいたんだね。ロイド」


「リアラか。良くここに居るのが分かったな」


「グルガさんが教えてくれたから。それにロイドとちゃんと話をしたかったし……」


 たしかにさっきは俺も警戒しながら話を聞いていたし、ユリスが話に入ってしっかり話せてなかったからな。


「そうか。それにしてもリアラからあんな言葉を聞くとは思わなかったよ」


 リアラは恥ずかしそうに顔を手で隠した。


「もう、さっきは勢いがあったから良かったけど、落ち着いたら恥ずかしくなってきちゃったよ。だけど、私のずっと言えなかった気持ちを伝えられたから……。こうやって無事に再会できて本当に良かったよ」


「心配かけて済まなかったな。それと、リアラの気持ちは本当に嬉しいよ。ただ、返事はもう少し待って欲しい」


「さっきも言ったけど、生きているうちに伝えなきゃと思っただけで返事は急がないで良いよ」


「分かった。真剣に考えるから悪いが待っていて欲しい」


「うん、それにしてもロイドはどこにいても女の子にもてるんだから……」


「そんな記憶がないんだが……」


「ロイドが前ばかり見てただけだよ。少しでも横を見てれば、ロイドのことを見てた子がいっぱいいたんだからね」


「学生の頃は、修行や勉強でよそ見する暇がなかったからな。師匠の修行は厳しかったし」


 ただ、今の俺があるのは師匠のおかげだから、とても感謝してるけどな。


「ユリスさんも言ってたけど、ロイドは鈍感だからねー。あとでミラとも二人で話してあげてよ。ミラはロイドが生きてただけで嬉しそうだけど、会って話したいこともあるはずだから……」


「そうか。ミラにも心配をさせてしまったみたいだな。後で謝っておくよ」


 せっかく再会したんだ。後でミラとも話をしよう。


「あと、もう少しで晩ご飯みたいだから一緒に戻ろう。ロイドがここでどんな風に過ごしてたか皆に聞かなきゃね」


「たいしたことはしてないけどな」


「ロイドはいつもそう言うよね」


 とりあえず道具を片付けてグルガさんの家に戻るとしよう。


 だが、こっちに来たときはこんなふうにリアラと話が出来る日が来るとは思わなかった。

 こうやって、色んな問題が解決していけば良いな。






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