決闘の後に
今俺たちは、先日食事をした部屋に集まっていた。
ここに居るのは、先日のメンバーのうち、任務で皇都にいない第三席と第四席以外のメンバーだ。
「皆、俺がユリスに勝つということがどういうことか分かっていて黙ってたんだな?」
皆返事をしない。
前もって知っていたらこうはならなかったと思っているんだろう。
たしかに知っていたら俺は全力では戦っていないだろう。
「ロイド様はユリス様ではご不満ですか?」
ジルバが心配そうに言う。ユリスも不安げにこちらを見ている。
「ユリスほどの女性に不満があるなんて思わない。俺が怒っているのは騙すような真似をして戦わせたことだ」
俺がそう言うと二人は見るからにほっとしたような顔になる。
それとあまり言いたくはないがこれはしっかり言わないとな。
「まだ言ってなかったかもしれないが、俺は少し前に婚約者に振られたばかりだ。今すぐに結婚なんて考えられないな」
「ロイド君を振る女がいるなんてすごいわね。あとこの国の決まりでは、女王の婿に認められた者が現れてから、一年後に結婚することになってるの。だからその一年でロイド君の気持ちをうごかしてみせるわ!それが出来なかったら結婚は諦める。こっちも黙ってたのは悪いことだしね」
ユリスは決意を込めた瞳でこちらをみつめながら言う。
ジルバもそれに続ける。
「まずは、黙っていたことは謝ります。ですが、ユリス様は女王になってから自分よりも強い男を捜し続けましたが一向に現れず、つらい想いをしてきました。その気持ちはくんで頂けたらと思います」
そう言って頭を下げる。
そこまでされるとこちらは何も言えなくなってしまうな。
「分かったよ。一年後にまた返事をするという事で良いんだな?」
「はい。それでお願い致します。それともし可能であればこの一年は婚約者ということにして頂けますか?多くの国民があの試合を見ていたので。」
たしかに、あれを見ていた人は多いし、期待をしている国民も多いのだろう。
先延ばしにするのは心苦しいが今はそうさせてもらおう。
「じゃあそうしようか。仕方ないな」
「ありがとうございます。それであればロイド様には通常通りに六神将の任務についてもらいたいと思います」
その時ユリスの表情が変わった。
「どうしたの?……ええ、分かった。すぐにそちらに向かうわ」
「ユリス?何かあったのか?」
「ええ、今ヴェルサスの町のグルガから通信が入ったわ」
「グルガさんから?なにがあったんだ?」
ユリスの表情を見ると、あまり良い予感はしない。
「今、ヴェルサスの町に王国軍が向かっているそうよ」
「何だって!?」
王国が魔皇国に侵攻するのはここ何十年なかったはずだ。
だが、帝国との戦争が終わり、周辺国で王国に攻め入る国は居ない。
だからこそ今、魔皇国に侵攻を試みているのかもしれない。
「出来たらあなたにも防衛に参加してもらいたいと思っているのだけどどうかしら?」
「もちろん行くよ。ただ出来れば兵士達を殺したくはないが……」
今まで居た国の人をこの手にかけるのは出来れば避けたい。
俺は今は魔皇国の人間だ。ユリスが命じるなら仕方が無いが。
「それは心配しなくて良いわ。あなたの実力なら殺さずとも追い払えるはずだし。理由は向こうが落ち着いたら話すけども、出来る限り王国兵に被害を出さずに追い返すのも大事なのよ」
それはありがたい。
理由は気になるが今は気にしている場合じゃない。
王国がどれくらいの戦力を投入しているか分からないが、早くグルガさんや、町の皆を助けに行かなければ。
もしかすると、王の盾のメンバーもいるかもしれないしな。
「分かった。すぐに出発しなければな」
ユリスが笑顔で言う。
「実は私の転移魔術は三人までならかなりの遠距離でも飛ぶことができるのよ。だから、私とロイド君、モル君の三人で行きましょう」
「オイラも一緒に行って良いッスか?戦力になれるか心配ッス」
「モル、お前は充分強くなったよ。通常の王国兵に負けることはないだろうな」
「そうッスか。オイラも家族を守るために頑張るッス」
ユリスが俺たちを見て言う。
「話はそれくらいにしてヴェルサスに向かいましょう。ジルバ、こっちのことは任せたわよ。向こうが落ち着いたら戻るわ。」
「かしこまりました。女王様」
「よし。じゃあ行くわよ!」
そして俺たちはユリスの転移でヴェルサスへ向かった。




