リアラとミラ国境の町で
私とミラは魔皇国と王国の国境の町に向かって出発した。
王国内は治安もそれなりに良く、馬車に乗り数日かけて何の問題もなく到着することが出来た。
ジュリアスとキールは軍を率いての移動になるので時間がかかるようだ。
まずはミラと二人で宿泊できる場所を探した。
馬車の御者に聞いたところ、酒場が併設されている町で一番の宿屋があることを教えてもらったのでそこに宿泊することにした。
宿の受付にいたおばさんは感じの良い人で、私たちにも気さくに話しかけてくれた。
話をしているうちに、おばさんが質問をしてきた。
「ここのところの噂なんだけど、魔皇国に王国が侵攻するって言うのはほんとうかい?」
今王国軍が向かっているのは隠している情報じゃないのでこの町の住民も知っているのだろう。
「本当です。ただ、今の段階ではこの町に被害が及ぶ可能性は少ないと思います。今までの歴史で魔皇国から侵攻してきた事はありません」
おばさんはため息を隠さずに言った。
「それがこれからも続くかどうかは分からないだろ?」
「たしかにその通りですね。ただこの町に被害がないことを私も祈っています」
そのあといくらか話をして、部屋に案内された。
二つのベッドがあり、広めの部屋だ。
荷物を片付けているとミラが話しかけてきた。
「この町の住民は戦火がが及ばないか心配なのですね」
「それは当たり前だよね。これまで無かった事だと言っても、これから無いとは限らないし」
「では今回の侵攻はあまり成功しない方が良さそうですね。成功すると向こうも戦力を費やしてでも取り返しに来るでしょうし」
「そうかもしれないね。私たちは出来ればあまり関与せずに魔皇国に向かいたいところだけども……」
「そうですね。一番の目的はロイド様に会うことですし」
「どうするにせよ、まずは情報を集めないとね」
まずは町の人に聞き込みをするとしよう。
◇
数日かけて二人で聞き込みをしたが、魔皇国やロイドの有力な情報は得られなかった。
とりあえず分かった事はこの町と魔皇国側の町の間には広い平野があり、そこには魔物が出現するためこの町の住民は西側には行かないという事。
あまり町が襲われることはないが、襲撃に備えて少人数の王国軍が配備されていることだ。
このままここに居ても意味がないので、次は魔皇国へどう入国するかをミラと考えていた。
向こうに行ったときに、問答無用で攻撃されるとは限らないので試す価値はある。
ミラと私の組み合わせならそう簡単には負けないだろうということもある。
そんなことを考えていると、宿屋のおばさんの声と共に部屋の扉を叩く音がした。
「あんた達にお客さんだよ。酒場の方に来てもらってもいいかい?」
誰だろうと思いながら同じ建物内の酒場に向かうとジュリアスが居た。
「リアラ、ミラ、呼び立てて悪かったね」
笑顔を私たちに向けてジュリアスが言う。
「私たちも情報収集はもう終わりにしようと思ってたから別に良いわよ」
「そうか、単刀直入に言うけど、今回の侵攻を二人にも手伝って欲しいと思ってるんだ」
やっぱりか。予想は出来るが理由は聞かなければいけない。
「それはどうしてかな?」
ジュリアスは真剣な表情のまま答える。
「今回の侵攻は正直なところ展開が読めない。無理はしすぎるなとは言われているんだが、前衛を務められるミラと、防御と回復に優れたリアラがいてくれれば、王国兵の被害が減らせるからだよ」
ほとんど想像通りだ。
指揮官として当たり前の考えだろう。
私がどう返事をしようかと思っているとミラが言った。
「私としては協力したくはありません。ロイド様が向こう側の戦力で出てきたときに戦いたくないですから。それに敵対したら向こうに入国するのがさらに困難になるからです」
私が悩んだのもその理由からだ。
「それはそうだね。僕個人としてもそう思うよ。ならば二人には後方にいてもらってリアラは回復だけ、ミラはリアラだけを守ってもらうというのはどうだい?」
少し考えてからミラが答える。
「その条件ならば私は良いでしょう。リアラさんはそれでも良いのですか?」
ミラがこちらを見る。
共に戦ってきた王国の人たちが死んでいくのは良い気持ちはしない。
ロイドを優先したいところだけど、ここにいるのに何もしないのは違うと思う。
「分かったよ、ジュリアス。その条件ならサポートさせてもらうよ」
「二人ともありがとう。それじゃあ準備が出来たら侵攻を開始する。二日後の朝西門のところに来て欲しい」
ジュリアスはほっとしたように言った。
「分かった。私たちも準備しておくよ」
侵攻に関わることになってしまったが、これで魔皇国の様子を少しでも知れると良いけれど。
早く会いたいよ。ロイド――。




