ロイドの栄転
俺がユリスと出会ってから数日後の昼頃、グルガさんの執務室に呼び出された。
「ロイド君いつも呼び出してすまないね」
「いや大丈夫だ。それで今回は何の用だ?」
少しためらった後グルガさんが話し始めた。
「実はね、君を六神将の空位に迎え入れたいという話が皇都から来てるんだ。それで君には皇都に行ってもらう。これがその命令書だ」
そう言って俺に書類を見せる。
こないだ六神将が一席空位だとは聞いたが……。
まさか俺に話がくるとは思わなかったな。
「ずいぶんいきなりだな。俺はまだこちらにきてから日が浅い。なのにどうしてこんな話になるんだ?」
「僕の仕事としてこの町の情報を全て王城に報告するんだけど、女王様が君に興味を示してね。」
「会ったこともないのにか」
「それだけ君がこの町で行った貢献がでかいということさ。君も察してると思うが、僕が上の命令に逆らうことはないよ」
俺も騎士団時代に良くあったが、自分がどう思っていようと上の命令には従わなければいけない。それはこの国においても同じなのだろう。
「俺はよその国からこの国にいきなり来て、グルガさんには食事から住む場所まで世話になった。それに町のみんなにも良くしてもらっている。だからこそグルガさんには迷惑はかけられないな」
行きたいわけではないが、俺が断るとグルガさんに迷惑がかかる。
「ロイド君……。すまないね。ほんとは僕もロイド君にはこの町に居て欲しいと思っているよ。あと書類にもあるようにロイド君からの条件があれば可能な限り飲むことになっているから、なにかあれば言ってみてくれ」
条件か。強いて言えば誰かと一緒に行きたいというくらいだな。
「可能ならモルと一緒に行きたいとは思うんだが」
「それくらいなら大丈夫だよ。まあ本人に聞いてからかな?」
たしかに、この後モルに聞いてみよう。任期がどれくらいになるかも分からないしな。
「そうだな。任期や詳しい話は皇都で聞けば良いのか?」
「ああ、向こうで聞けると思うけど、主な仕事は魔皇国内の治安の安定だよ。ここに近い任地になってくれればなぁ。」
「俺も出来たらここに居たいと思ってるよ」
「ありがとう。それじゃあ準備をしてもらって一週間以内には向かってもらうよ」
準備するほどのものはないけどな。
まずはモルに頼んでみよう。
◇
モルとの訓練をする前に俺についてきて欲しいということを伝えた。
するとモルは笑顔で答えた。
「もちろんついて行くッス」
「おいおい、それは嬉しいが家族に相談しなくて良いのか?」
「二人には後から行っても大丈夫ッス。メルの足を治してくれたときから、こんな日が来るんじゃないかと思ってたッス。それよりも、ロイドがオイラを頼ってくれたことが嬉しいっす」
モルには何かあれば頼っても良いと言われてたからな。まさか即答でオーケーだとは思わなかったが。
「俺はモルにはいつも助けられてるよ。それと、ちゃんとモルにも給料が出るみたいだからそこは安心してくれ」
「それは助かるッス。じゃあオイラはいつでも出発出来るように二人に説明しておくッス」
「ありがとう。じゃあまた明日いつ出発するか伝えるよ」
俺も少しだけだが準備をしておこう。
◇
その日の晩、みんなで夕食を取っているときにグルガさんから、俺の六神将入りが伝えられた。
「マジかよロイド!? すげーな! 俺も六神将になれるように訓練を続けるぜ。ロイドに教えてもらってからかなり成長してるからな」
マーキスが素直に喜んでくれる。
「ああ、先に向こうで待ってるよ」
ミリアはちょっと複雑な表情だ。
「ロイドさんなら、この話が来てもおかしくないけど皇都に行っちゃうのは寂しいなぁ」
嬉しいことを言ってくれる。
「大丈夫だよ。仕事が一段落したらここに帰ってきたいと思っているからな」
「私、待ってますからね」
ヒルダも何か言いたそうにこちらを見ている。
「ヒルダは何か言ってくれないのか?」
「いや、めでたいことなんだけど、ロイドの訓練が出来なくなるのが残念でね」
「基礎はもう伝えたから、ヒルダはこれからも強くなるぞ」
「そういうことじゃないんだけどな……」
「ロイドさんは鈍感ですから」
ミリアが失礼なことを言ってくる。
「いずれにせよ頑張って仕事をしてくるよ。帰ってきたらまたよろしく頼むな」
三者三様の表情を浮かべながら頷いてくれた。
さて、数日後には出発しようか。早くここに戻ってこれると良いな。




