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ファーストアクト2

 召集の後、さっさと自室へ退散していくイセンだったが、ファルーの事を気にかけて一つ提案してみる。


「なんだ……ボードゲームでもするか?」

「自分を何だと……まあ、ありがとうございます」


 ファルーは自分の面倒を見られている気分になり、断ろうかとも思ったが、イセンなりに気を遣ってくれたのかと考え直す。

 ただ一つの問題は、ボードゲームなどファルーも普段遊ばなければ、イセンに至ってはそれらしい箱を宿舎で見たことがあるだけで、遊び方すら知らない点だ。


「とりあえず、取ってくるんで待っててくださいね」

「了解」


 持ち運びはファルーに任せ、イセンは自室で一息ついた。


「イセン、任務だ!」

「おわっと!」


 前触れなく閉じた扉を開かれると中々に驚く。それだけでなく、任務となるとなおさらである。正直聞き間違いかとイセンは思った。


「ブリディガル准将、三人が任務に行ったのは先程お聞きしましたが」

「ああ、それに加えて現在の三人で出撃する」


 緊急任務RTAみたいだな、とイセンは思ったが、扉の影にファルーとミルミドの姿が見えたので、真面目な思考に切り替える。その前に、ちょっとだけ自室の机に変なものが置いていなかったかが気になった。


「了解ですが……良いんですか? せっかく機体の修復が終わったのに」

「早速備えが活きたと思っておこう」


 備えられている時間が極端に短かったので、不安になったイセンだが、実際これ以上の準備は出来ない。


「で、何をすれば良いのですか?」


 執務室まで待ちきれないのかミルミドがブリディガルに尋ねる。


「今回は軌道リング上での救難作戦だ」

「船外作業中にアクシデントでも?」

「いや、リングの一部が爆発により破損した。死傷者の数は分からんが、我々の隊は二次被害を防ぐための撤去作業を担当する。何か質問は?」


 執務室の扉を開けると、ブリディガルが振り向く。


「いえ」

「では、自分の任務を最要にな」


 ブリディガルは扉を閉じ、他の隊員達は階下へと歩き出す。最後にイセンは彼女と目があったが、問題は起こすなよ、という圧を感じた。


「なあ。リングが破損って言ったが、それで宇宙に人が投げ出されても大丈夫なのか?」

「流石に厳しいですね。基本的に船外服を着ている人は少ないし。軽微な被害なら良いけど」


 多分そう都合良くは無いだろうとはイセンもファルーも察しが付く。イセンも戦争での命のやり取りには慣れてきたが、一般人が命を落とす現場には出くわしたことはない。今から少し気が重くなってきた。


「ファルーは交戦しないような任務でも良かったのか」

「え? 何ですかいきなり。イセンさんの癖に人を戦闘狂みたいに思ってます?」

「癖にって何だ」


 イセンとしては、ファルーはインスヴァイトで敵と戦いたいのかと思っていたが、反応的に違うらしい。まるで的外れといった口調だったが、かといって見当も付かないため、一先ず解答は見送る。


「だってイセンさんいつも誰かと戦ってません? 任務じゃなくても戦い始めるし……」

「確かに感情的に動くこともあるが、何も好きで戦ってる訳じゃないぞ。多分」

「もう出撃するんだから、話に集中し過ぎないでよね」


 宿舎を出る際にミルミドが注意する。イセンも気を引き締めて、足早にドックへ行く。


「機体、やっと直したんだけどな……」

「大丈夫だティラー軍曹。彼らが哨戒と救助任務でインスヴァイトを壊すなんて確率で言えば0.000……」

「ロシオン主任、ティラー軍曹。機体修理ありがとうございました」

「すいません頑張ってください」


 ミルミドに気圧されて、何もしていないのにティラーが謝る。ここ数日何かがあったのか、機体調整組のテンションがやや高い。奥に待機していたインスヴァイトにイセンが乗り込むと、ミルミドから通信が入る。


『聞こえる? 今回は救助の妨げになる宇宙ゴミの撤去作業がメインよ。その他漂流物は、あらかじめ到着している隊員が受け持ってる筈』


 その他漂流物の中には、何が含まれているのだろうか。そんなことを考えているイセンの表情が陰る。出撃に備えてふっと息を吐くと、ミルミドに応える。


『こちらイセン・シュベルク。通信聞こえます。内容は把握しました。出撃用意完了』

『同じくファルー・ポートマン、いつでも』


 三人の準備が整った。続々と宇宙空間に機体が放たれる。ふと、ファルーはインスヴァイトで腰部辺りを腕でふれて確かめる。機体には感覚が無いので、どれだけ念入りに触ろうと質感は掴めない。が、大切な物は例え気持ちだけでも触っていたいのだろうか。インスヴァイトの腰部には、数週間前の戦闘でファルーとサーマンが対峙し、そしてイセンが戦闘で使用したTM01がマウントされている。


『自分が先に戦ったのに、イセンさんに先に使われてしまいましたね』

『やっぱり気になるものなのか?』

『いえ。ふと思っただけですよ』


 イセンはミルミドの後ろを追従しつつ、何度か周りを見渡す。やはり、イセンのよく知る軌道エレベータ上層施設、アテナイ方面とは逆に向かっている様だ。


『今回はノア第二の柱、テーバイという軌道エレベータに向かうわ』


 ミルミドが今回の行き先を告げる。



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