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インターミッション7


『今日は久々に話せて良かったよ。だが、そろそろ体も動かさなくてはな』

『たまには連絡ぐらいよこしてくれても良かったんですよ? カッコいい装備のこととか。サーマン・クラスプ、ウェンで出ます』


 サーマンらの話が一段落すると、ようやくイセン達の眼にも二機のインスヴァイトが見えてきた。ファルーやヨルと違い、飛び出してきた機体は既に最高速近い速さで疾走している。二本の剣を装備している機体がやや遅れているがサーマンだろうか。


『戦闘開始まで残り十秒だ。減速しようか?』

『並走したいんですか? 分かりましたので勝手に遅くしないでくださいね』

『相変わらず負けず嫌いだな』


 後続の機体が徐々に距離を詰めていく。十分速いように見えたが、まだ余力を残していたらしい。


『施設から離れすぎないようにしてくれよ。我々は天体観測するために来たのではないからな』


 ブリディガルの言葉もなんのその、二人とも速度を緩めそうにない。今回は目を凝らして見学することになりそうだ。


『それでは剣を抜いてくれ。こちらも発輝する。さあ、我が心で励起せよ! ……今日のために考えた台詞だ』

『甘くみて三十点ですかね』


 ステッキを出す手品師のように、右手を振って刀身を出現させるスラウ中尉に対し、サーマンが腰部から二本の剣を引き抜く。


『さっきの方より立派な刀身してますね。TM11でしたっけ、普通に剣じゃないですか』

『実戦に玩具は出せないからね』


 サーマンに接近して左薙ぎが繰り出される。そんなスラウの手元を狙い、こちらも右の剣で突く。


『よくやるよ。模擬戦の相手になってくれて良かった』

『斬るよりはこっちのが得意なんで』


 持ち手を弾かれ咄嗟に後退したスラウ中尉に追いすがり、今度は左手でカメラアイを狙った一撃。嫌な音を立ててヒビが入るが、相手はこれ以上の追撃を嫌うように目の前を払う。如何せん受けることも出来ないので一旦手を止めるが、全然やる気のようだ。


『こっちも得意武器で行くよ』


 腰に左手を回して掴んだのは拳銃だった。そのまま頭部に何発か撃ち込まれるが、左の武器で庇いつつ、勝負を決めに接近していく。一発の威力は低いが、いつまでも食らっていられるほどではない。


『残念ですが、その武器の出番はもう終わりですね』

『それなら素直に切り捨ててこの試合を終わらせよう』


 視界が満足に取れない中での二度目となる頭部への一撃。サーマンは機体に伝わる衝撃から、何かを捉えたことを察知した。銃撃も止んでいる。改めてモニタで周囲を確認しようとするが、何も映らない。


『決着がつきましたかね……』

『そのようだな。仕方ない』


 いつもの戦闘らしからぬ攻めた立ち回りだったが、自分なりにやることはやっただろうかと思う一戦だった。模擬戦用に備え付けられた腰部サブカメラを起動する。画質は悪い。


『あの感触は武器が切断されたものですか』


 損傷した頭部を確認すると、武器ごと下から切り上げられたようだ。上っ面が削がれており、のっぺらとしている。


『人の頭を貫いといてすっとぼけるとは、昔から嫌味な奴だ』

『え?』

『うん?』


 そんなバカなと相手の機体を確認すると、折れた切っ先が頭部に突き刺さっているのが見えた。それならばとサーマンは一つ疑問を投げる。


『どっちが先にトドメを刺したんでしょうね』

『そっちも食らっていたのか。悔しいが、突き刺さってから切り落とせても、切り落としてから突き刺さることはないと思うね』

『どういうことですかね?』

『お前の切っ先が早く届いたってことだよ』

『え、もう一回良いですか?』


 スラウ中尉は割と丁寧に解説していたつもりで話していたが、ふとサーマンに問い詰める。


『お前、分かっていて言わせたいだけだろ』

『さあ。どーせ私は昔から嫌味な人なんで』

『ま、模擬線だし勝ち負けとかないから別にどうでもいいか』


 戦いが終わりぐだぐだと言い争う二人だが、緊張の糸がほどけたのは観てる面々も一緒である。


『えー、両者いづれかのメインカメラが損傷を受けたので戦闘終了です。私も一時間後に合流しますので、それまではご自由に』

『聞いたかサーマン、帰りは飛ばすなよ』


 リーム大尉が取りまとめた所で、今日の戦いは全て終わりとなった。何気なくイセンが辺りを見回すと、部屋に来るファルーの姿が見えた。


「ちょうど終わっちゃいました? その場で観戦してたら良かったかな」

「ファルーさんお疲れさまです、戦ってみてどうでした?」


 ミライがファルーの元へと寄っていく。新兵器が気になったというのもありそうだが、イセンからみると地味に仲が良い印象がある。年が近い方が話も合うのだろうか。


「実戦で相手が持っていたら勝てる気がしないですね。旗機が持っているならもちろん、集団戦が見えるだけで撤退したいですね。なにせ受けられないので」

「自分も近接戦闘のが得意なんで、自軍の発明で良かったです。生身もメカも遠距離戦が主流なんですかね……」

「近距離がプレッシャーになるから遠距離戦を仕掛けるのと近距離戦を仕掛けるメリットがない、そもそも近付けないから遠距離戦になるのは別ですけどね。機動力も段違いですしね」


 ま、相手も機動力は高いですけど、とボソッと付け加えるファルーだが、そこには触れずに進むミライである。


「そうですよね! 自分もガツガツ攻めたいなあ……TM11って何の略なんでしょうかね」

「MはMeleeの意味ですわね。最初に作った武器種で派生型もないので11。これで覚えてくださいね」


 ファルーに遅れてやって来たのはヨル中尉だった。心なしか口調が柔らかいような気もする。


「Tにはどんな意味があるんですか?」

「それは……機密事項よ」

「えー、知らないだけじゃないですか」

「うるさいわね、田舎者は模擬戦終わったら早く帰りなさいよ」

「最低でも一時間はここにいますからね。残念でしたね」


 イセンは話し掛けようとしたが、二人が火花を散らし始めたので、そっと開いた口を閉じた。



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