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インターミッション6

 

『いつでもいいですよ、ヨル中尉』

『なんで貴方に指図されなきゃいけないのかしら?』

『自分はいくらでも待てますから』


 リーム大尉からは逃げることも禁止されていない。もちろん射撃を主とする者はどう距離を取るかが生存率に関わるのだが、このパターンで引くか押すかはファルーにとっても悩ましいところだ。


『無難に迎撃させて貰います』

『無難に迎撃、なんて選択肢はなくってよ!』


 本陣を護る精鋭部隊というだけあって、目の覚めるような速度で仕掛けてくるヨル中尉。しかし、対応は十分に可能だ。体勢を低くして頭部を狙う攻撃をかわすと、カウンターのように折れた長剣で相手のメインカメラを突く。これは決定打にはならず、頬を掠めただけで傷もついていない。


『言葉のあやです。逃げるのもどうかと思いまして』

『そうなのね。ま、案外やるみたいだし、趣向を変えますわ』


 ヨルのウェンは左手を腰裏に伸ばし、片手剣を取り出す。こちらは通常の加工品である。


『えっズルですか?』

『気に入らないなら審判でも裁判官でも呼んでみまして?』

『セーフです。構わず続けてください』


 イセンにとって先程一度だけ聞いた声が端末から響く。答えるまでもないことのような気もするが、リーム大尉が律儀に返してきたのだ。


『くぬぬ、やはり正々堂々戦うしか……』

『貴方変わってるわね。行きますわ』


 ファルーは気を取り直して再び構える。相手の手数は増えたが、物質を加工して作られた剣なら受けるも弾くも可能だ。


『一方だけしか殴り合えないなんて初めてですよ』

『両者ともそろそろ戦いに集中してください』

『そうそう、かち合い勝負だ』

『今から真剣に戦いますよ!』


 新兵器の射程は短く、あちらはあちらで苦戦しているようだ。受けるなら実体剣の方がマシなので、こっちとしても右側へ回り込んでみたり、本命を食らわないよう立ち回る。


『一撃が重い……思った以上にやりづらいわね』


 リーチの差もあって突きはこちらのが強いらしい。頭部への攻撃はヨル中尉も易々と当たってくれそうになく、代わりに手薄な胴上部へ牽制を差し込む。


『その武器が主流になったら長所にもならなそうですけどね』

『少なくとも今は腹立たしいほど役に立ってますから、安心しなさい!』


 ヨルの実体剣がかち合いの基点にもなるのが絶妙に噛み合っているのか。ファルーにはありがたいが、自分が相手の立場ならば何か手を打ってもいい頃合いだ。


『こんなの……いらないですわ!』

『ちょっ、不法投棄ですか!?』


 唐突にも用済みの認定を受けた剣がファルーのウェンに投げつけられた。咄嗟に折れた剣で払いのけるも、再び開いた視界にはこれまでより一段階長い、通常の片手剣ほどの新兵器を構えて迫る中尉が映る。


『あんたさっきから微妙に文句言ってるわね! 本気見せてあげるんだから!』

『出力を上げられるのか!』


 反射的に青い刀身を右の剣で受けたファルー。機体こそ無事だが短くなった長剣が更に短くなり、柄から先はほぼ失ってしまった。


『降参お待ちしておりますわ』

『誰が……するかよ!』


 瞬時に折れた剣を逆手に持ち替えて、首筋に左から突き立てる。


『……これを受け切ったら終わりですわね』


 相手の避ける時間こそ与えなかったが、空いた左手を差し込んで致命傷は免れたようだ。


『ヨル中尉、気を抜かないでください』

『正念場だな。攻め切れ軍曹!』


 だめ押しと言わんばかりに左手の剣も柄の先へと叩きつけると、渾身の甲斐あってか反動は相手の機体が側転のように回転する程であった。しかし、短すぎる刀身は首元へ届かない。


『決定打にこそならなかったが、これはファルーの得意型にもつれ込んだのではないか』

『確かにいつも弾き飛ばしてますよね、ファルーさん』

『いや、とはいえ勝てんぞ』


 衝撃で体勢を崩すヨル中尉に対して、ファルーはさほど意に介さず、先手をうって片手剣を両手に持ち替えて振り上げた。


『おい、おい! 模擬戦だぞファルー軍曹!』

『……あー、はい。そうです、模擬戦です!』


 ブリディガルが怒声を上げる。コックピットを直で危険に晒すような攻撃は禁止されているのだ。よく見ると相手の機体が半回転しており、万が一のことも考えとどめの一撃は制止された。


『ヨル中尉、何を呆けているのですか』

『え? ……それ!』



 少々放心していたヨル中尉であったが、彼女がメインカメラを貫いたことにより一戦目は決着となった。


『では、次はサーマン少尉とスラウ中尉の戦闘になります。ファルー軍曹も今のうちにドックまで来てください』


 二機のウェンが施設へと帰還する。ギャラリーはひとまず緊張が解け、あらためてPCPの新兵器である青い光剣について話し合う。


「実用性のあるロマン兵器だったな……」

「余計な重量にもならない上、切れ味も抜群なんてな。是非うちの隊にも採用したい所だ」

『一応TM11と言うシリーズに属するので、その名称を使ってくだされば。まあ、この武器の他にバリエーションはまだないですけど』


 リーム大尉から開発コードを伝えられる。実際に使えればファルーもサーマンも大喜びしそうだが、果たしてそれはいつになるのだろうか。


『模擬戦も、いざ始まるとなると不思議な緊張感ですね。ファルー軍曹も気を張っていたのでしょうか』

『む、サーマンか! 生きていたのか!』

『やだな、機体の調整中に殺さないでくださいよ』


 何はともあれ一戦目は問題なく終わった。スラウ中尉の実力は果たしてどの程度なのか。次の戦いをイセンは人知れず楽しみにしていた。


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