表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/91

インターミッション5

 

 回廊を右に曲がりしばらく行くと、展望台のような部屋に出た。と言っても眼下はノアを囲む衛星リングが、それ以外の一帯に闇が広がっていることはここでなくとも十分に視認可能だ。


「本日はありがとうございます。随分と大所帯でございますね」

「ご存じの通りうちの機体はボロボロでな。パイロットはまるっとこっちに来させて貰った」

「今回、隊員の方にはこの部屋から観戦等していただきたいと思います。声は届きませんけど」

「他の関係者が見えないが下層にでもいるのか? 良い席で応援できてありがたく思うよ」

「無いとは思いますが、ファールボールには注意してくださいね。当たり所によっては……」


 SOS隊の現隊長、リーム大尉とブリディガルが話している。操者達の規模は双方とも十にも満たないが、他の隊との交流というのはイセンやミライにとっては中々に魅力的だった。しかし、互いの距離感から友好的に会話というのは難しいように感じる。


「サーマン少尉とファルー軍曹はこちらへ。ブリーフィングと機体のチェックをお願いします」

「二人は任せたが、リーム大尉は参加しないんだな?」

「はい。実力が拮抗した者同士で戦って貰いたいので」


 副隊長を以てサーマンと互角とするリーム。イセンはそうそう彼に敵うものはいないのかと思っていたが、そうでもないらしい。隊長の実力も気になるところだが、まずはスラウとやらがサーマンと同等の腕かどうか。ありがたいことに結果は間もなく分かる。


「イセンさん楽しそうですね」

「こんな機会もそうそう無いからな。折角だし楽しみたいさ」

「自分も近接戦闘は見習う点も多そうです!」

「私は剣は振らないが、それなりの相手とは基本近距離でやり合う形になるしな……」


 そうはいっても各々得意な武器は微妙に異なるジャンダルムの面々。純粋な格闘戦を繰り出すものはいないが、敵には一人思い当たる者がいた。


「そういえば、もしかしたら今のままではウォードに勝てんかもしれんな」

「もしかしたらも何もまあそうでしょうね」

「なぜそんな落ち着いてられるのだ!」

「イセンさんこそ焦ったってどうしようもないじゃないですか。今まで忘れてましたし」

「そうではあるがだな」


 命を賭けて戦う相手に勝てないというのは中々に絶望的状況のような気がするが、考えるだけ無駄なのだろうか。


「なんだ。好敵手でもいるのか、イセン伍長」

「同郷の奴がインスヴァイトに乗っていまして。討ち漏らしてしまって」

「あまり固執するものではないが、努めてどうにかなることでも ないか。しかし、聞く限り中々の相手だな」

「次は新兵器とやらを使ってのしてきます」

「調子の良いやつだな……そろそろ来るんじゃないか? 最初はファルーとスラウだが、まあ中尉が勝つだろう」


 そう話しているとインスヴァイトがブースターを吹かす音が聞こえてきた。コックピットにいるのかというほどの音量で。いや、それにしても大きすぎる。


「うるさっ! 調節を間違えた!」


 准将は懐から携帯端末を取り出し、色々と操作しているように見える。


『うわっ! 准将、声がデカいですよ』

『思ったより音が大きくてな』

『自分の声がですか?』

『そうかもな。折角だからお前の二日酔い明けに聞かせてやるよ』


 ファルーの声が端末を通して聞こえてくる。これを使ってやり取りするのだろうが、イセンには爆音がおまけに付いてくる意味は分からなかった。


「今のは何です?」

「擬似造音装置だ。振動を伝導する環境が如く音が聞こえるぞ。悪戯に使うのはもちろん推奨されない……」




『全く、准将とイセンさんは何やってんのでしょうか』

『ちょっと、戦いに集中なさい? まあ、集中しても負けるときは負けるのですけど』

『お互い様です。メインカメラを破壊すれば勝利、チャージングで相手の機体を機能不全に陥れても勝利。あと十数秒で攻撃開始ですが、新兵器とやらはいつ見せてくれるんですかね』

『あまり長くは使えないのよ』


 量産型インスヴァイトのウェンに乗る双方。機体は青く発光しており、ファルーの方は既に長剣を抜いて相手の出方を伺う。仮にも近接戦闘と聞いているので、余程のことがなければ対応できる。


『では、いきますわ』

『む……それは! えっ、ヴォ……』


 言葉を失うほどの衝撃を受けたファルーは噂の新兵器に目を取られ、反応が大幅に遅れた。その兵器はウェンの如く発光した刃身を柄から放つ。


『短射程ビーム? 光の刃か』

『ビーム……だな。一振りしかないのが救いか』

『青くて綺麗ですね』


 それほど感動はない待機組は、遠くに見える新兵器をについて感想を口にする。一方ファルーは動悸も収まらなければ、操縦桿を握る拳に力を込める。


『さあ、首を差し出しましてよ』

『お、落ち着いて、初撃を受け……! 無理だな、これは無理』


 ヨルの何気なく繰り出す横凪ぎとファルーの長剣が交差するも、意に介さぬように首元へと刃が迫る。間一髪の所で身を逸らすが、得物の刀身は宙に放り出される有り様だ。


『その折れた剣でどうします?』

『幸い半分は残ってるので。何なら貴方の武器と射程はあまり変わらないように見えます。長時間使用できないとも言ってましたし持続性に難がありそうですね、それ』


 ダガー程とは言わなくとも、彼女の剣と通常の剣とを比べると、幾分か小さく見える。ファルーは腰から予備の剣を引き抜き、左手に構える。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ