表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/91

インターミッション4

 

「おお、景色めっちゃ綺麗じゃないですか!」

「自分らにとってはもうお馴染みの光景なんですけどね」


 長い廊下を渡りながら外を眺める一行。左手にはガラス越しに軌道エレベータが見える。


「ここは見たところ、エレベーターの外周を囲む回廊と言ったところか?」

「はい。目的地はもう少し行ったところを右……で良いはずです」

「まるで宇宙観光でもしてる気分ね」


 先ほどから賑やかに話すファルー達にミルミドが一言入れる。たまにPCPの隊員とすれ違う程度のまばらな人通りでも、少し周囲の視線が気になっていた。


「私これから模擬戦なんですけど」

「戦闘中に観光気分でなければ良いさ。基礎過程をぶっ飛ばして実戦でそれどころじゃなかったかな?」


 ノア正規軍ことPCPでの宇宙戦の訓練中、景観に目をとられる新兵が多くいたのを思い出す准将。


「ところで初めて宇宙にシャトルで上がった時は一般の人も多く見受けられたが、ここら辺にはいないのか?」

「一般の方の出入りは大分制限されてますからね。あと、研究施設もここの近くには無いですので」


 イセンが話を続けていると、前方に何人かで固まって移動しているPCPの隊員達が見える。後ろ姿しか分からないが、ただの隊服より装飾が凝っているようだ。


「む? 上官か? 挨拶した方がいいのだろうか」

「いえ、よく見てください。将官であるブリ准将の服とはまた違いますよね……赤マントは別として」

「もしかして、SOS隊の人ですか?」


 ミライの声に集団の一人が静止し振り向く。長身の男性で、イセンと同じ金髪だが、彼の方は統率の取れた髪をしている。前髪は上げており、首元は刈り上げていたのが確認できた。ミライと目があったが、どうやら自分らに声は掛けられていないと気付いたようで、表情を崩して笑いかけてきた。


「あら、ジャンダルムの皆さん……ライは居ないようで」

「ティラー共々留守番だ。と言ってもSOSの方々がこんなちっぼけな部隊の顔ぶれを覚えているかは知らないが」


 ここに居ないにも関わらず真っ先に名前を出されるライ。以前イセンがアテナイに着いたときも他部隊員らがヒソヒソと話をしていたが、過去に彼は一体何をしたのだろうか。


「少なくとも私は全員知ってます……と言いたいところだったが、二人見ない顔がある。成程、SOS隊を見てピンと来ないのも頷けるか。新米育成を始めたんだってな、サーマン」

「言うほどのことはしてませんよ。放任主義ですから」

「どうせ二人のために新品の機体をせしめたり一人で気負って逆に心配かけたりしてるんだろ」

「褒めるのがお上手」


 旧知の仲なのか、いつもと変わらぬ口調だがサーマンの声色は穏やかだった。


「何をなさってるのですか? 隊長を待たせてますわよ?」

「ああ、すまない。今日の対戦相手と話し込んでいた」

「事前に話し合うのは大事ね。対戦なんてどうせあっという間に勝ってしまいますもの」

「ヨル君……」

「あ、他意はないのよ? 私たちって強いし」


 後から来た女性は明らかに高慢な態度で接してきたが、サーマンは特には気にしていない様子。代わりにイセンはムッと来たようだ。


「……サーマン、絶対に勝て」

「へ? 一試作兵器でわざわざ人を呼ぶなんて何かありますーー」

「いや、いける。型落ちのロボットでの逆転劇なんてお前の好きなところではないのか」


 時々インスヴァイトについてロマンで語るサーマン。兵器のロマンと展開のロマンはまた違うのかもしれないが、イセンなりの鼓舞だった。実際に勝てるかどうかは別として。


「イセンさん……」

「なんだ?」

「本当に個人的な話なんですが、メカじゃなくてロボットと言われるとモヤっとするんですよね」

「ああ」

「自分はロボット容認派です」

「んー」


 いつの間にかファルーも口を突っ込んできた。イセンはイセンでなんだか面倒になったので、つい生返事が漏れる。


「ちょっと、私たちのこと忘れてますの? 考えてみたら待つ義理なんて無いのだけど」

「私は別に構わないのだけどね。本当に君はなんでいるんだい」

「そこの金髪が生意気なこと言うんですもの。あなた方とは住んでるところすら違いますの。今朝だってご近所でマカロンーー」

「ん? 古文書でアバロン?」

「耳腐ってますことよ」

「自慢が長くてつい。自信満々だが、今日はあなたも戦うのか?」


 イセンはサーマンと先程の男に目をやった。あちらはあちらで……と言うか、あちらは楽しそうに会話を楽しんでいる。


「ヨル中尉とお呼びなさい。私と、そこのスラウ中尉が相手するわよ。まあ、あなたは戦わないでしょうが」

「イセンだ。階級は……確か上等兵だったか」

「確かって」

「自分らは伍長って言われましたよ?」

「……イセン・シュベルク伍長だ。よろしく」


 ミライからの言葉を受け、改めて名乗るサーマン。多少階級を間違いはしたが、それにしてもヨル中尉から冷ややかな目で見られるのは心外である。


「偉そうな伍長ですこと」

「下士官として中尉殿の模擬戦を見学しますよ」

「良い心掛けね、参考にしなさい……スラウ中尉、そろそろ行くわよ。今日の主役は隊長じゃないんだから」


 最後まで高飛車な態度で振る舞うヨルに対し、いつか一泡吹かせたいと思ったイセンだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ