インターミッション3
ジャンダルムの機体が軒並み損壊しているため、修復の間に模擬戦を行うことになったサーマンとファルー。定刻通りに広間に集まった面々が話していると、最後に赤いコートを羽織った准将が降りてきた。
「よし、各員宇宙服を着用して外へ出るぞ。上着はどうしようか。嵩張るけど着たままでいこうか。うーむうーむ」
宇宙服を着ていこうと言いつつ割ともたつくブリディガル。心なしか視線はイセンとミライに向けられているが、どうにも気付かない二人にサーマンが説明する。
「多分新しいコート買ったから二人に反応を貰いたいんじゃないですか?」
「言うなよサーマン……それに多分とはなんだ」
「見た目の違いがよく分からんので多分です」
「いつもと変わらず似合ってますよブリディガル准将!」
ミライがあまりフォローにならないフォローをしたところで、各自黙々と宇宙服を着る。意外なことに一番手際が良いのはファルーで、他の隊員も続々と着替えを終えて外へ出る。
「ところで、俺らはどうやって拠点へいけば良いんだ? 数キロはありそうだが」
「……月面探索車とかじゃないですか?」
「あれって人も乗れるんだっけか。そもそも考えてみれば月でもないが」
ミライとイセンはインスヴァイトでしか移動したことがないので相談をしているところ、サーマンがドックの方を指差して答える。
「あっちに低重力下用の車両がありますよ。まあ7人も運べないので、二組に別れますけど」
「自分がサーマンさんとミライが乗る車両を運転します」
「なんか心配ですが、よろしくお願いします」
「はは、まさかそんな。二人とも行きますよ」
一抹の不安を感じつつもファルーに促されて歩いていく。近くで見ると一人一人の座席が広い四輪の乗り物である。オフロード用のオープンカーといった見た目で、深い青色に塗装されている。灰色の大地を走ると中々に目立つ気がしなくもない。
「ところであっちは誰が操縦するんだ?」
「ラック中尉でしょうね。そもそもブリディガル准将って運転出来るのかな……」
「何気に失礼なことを言うんだな」
「あー、まあ直に分かりますよ」
あちらの車両は深紅の車体に黄色い稲妻が走っている。イセンは若干乗るのが恥ずかしくなってきた。
「この外観は誰の趣味なんだ?」
「割と格好いいですよね! ティラーさんですか?」
「ああ、車両はどちらもティラーがこだわっていましたね」
他の隊の車両事情は知らないが、自分の隊だけゴテゴテに派手になるより目立たない方が数倍マシだ。つまり、この時、イセンはゲームやフィクションのように装飾を塗りたくったティラーにやりやがったなと思っていた。
「参考までに聞いておくが、この色は一般的なのかな?」
「いえ全く。駐留所に他のが停まっていたならば、鶏の檻に孔雀ぶちこんだように目立ちますね」
「想像は出来んが言わんとしてることは分かった……」
次の話題を探す間もなくイセンは身体に軽い振動を感じ、少し身構えるファルーがエンジンを入れたのだ。運転席は左にあり、ファルーの後ろにはイセン、その横にミライが座っている。
「なんか落ち着きませんね……自分の母国だと右ハンドルが主流なんですよ」
「いつかは統一される予定だったのかもしれんな……今となっては知る由もないが」
「え? イセンさんは我々の星に永住されるんですか?」
「帰星出来るのか? その際私の家賃やDVDの延滞はどうなっているのだ?」
「し、知らないですよ。なんで連れてかれる前にDVD借りたんですか」
当然のように片道切符を掴まされている気持ちだったイセン。やけに生々しい所を気にしつつ慌てているが、対照的にミライは落ち着いている。
「ミライは知っていたのか? やけに冷静だな」
「知りませんでしたが、よくよくヨルクに降りたときを思い出したら、やっぱりノアも右側通行だなって思いまして」
「お前は車線とハンドルにしか目がいかんのか」
「よくよくヨルクって……」
話をしながら目的の建造物に大分近づいてきた。人工の谷のような隙間を縫って走行しているので、外観を見渡すことは難しい。先行していたラックワイトらは、もう衛星リング上の施設アテナイの中に入ったようだ。
「まあウォード? って人も地球から来ましたしね。機体を複数持ち帰るとかでなければ、大掛かりな装置もいらなそうだと思ったわけです」
「ミライ……割と考えていたのだな」
「自分をなんだと思ってたんですか」
機体を持ち帰るというと、イセンはジャンダルムと初めて遭遇したときを思い出す。地球を抜ける際は随分大掛かりな艦を使っていたものだ。
「そろそろ着きますよ。サーマン少尉達に幅寄せしてやりましょう」
同じ車両に乗ってる一体感からか、こんなことでも盛り上がる三人。ジャンダルムの中では新参のファルーも、この中では古参に入るため少し高揚しているのかもしれない。実際上司以外とこの車両に乗るのは彼にとっては初めてだった。
「降りて良いのか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「なんというか立体駐車場みたいなところですね……まばらに他の隊も使ってるようですけど」
「休日の早い時間とかこんな感じの混み具合だよな」
「イセンさん、ちょっとわからないです……」
少しぶりに自分の足で地面に立つ一行。駐車場には電灯はあるが、面積に対して数が足りてないのか薄暗い。地球人二人が外観に気をとられていると、ファルーは奥へ歩き出す。
「こっちですよ。前に渡されたライセンスは持ってます?」




