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ブラインドスペース3

 

「イセンさん、サーマンさん達は無事ですかね……」

「後衛の気持ちが分かったか。前線は苛烈だが、あいつの軌道を捕らえられるやつはそうそういないだろう。あの味方二機から追われている敵を見てみろ」


 最近後衛なりに戦いを重ねて分かったことがあるので、ミライに示す。


「側方のデブリ帯に入りたい……のですかね?」


 あまり自信がなさそうに答える。大きく曲線を描く様子が、ミライからしてみると緩慢な動きに見えたのだろう。イセンは青く光る銃の引き金に手を掛けて続きを話す。


「そうだが、あれでは辿り着く前に討たれるな」


 イセンの銃が火を吹いた。目標となったトロップの右足が破壊され、後を追う二頭のウェンが得物を突き立て、終了。


「インスヴァイトの戦いでは、機体の性能如何が限界軌道を決めるのではなく、乗り手が限界軌道を決めるらしい。少なくとも操手が奴である限りは大丈夫だろう」


 敵機に一撃いれたことが目についたのか、前方から二機のトロップがやって来る。自分はどちらを撃とうかと、息を吸い周りを見るが、ミライの機体も含め隊の味方は近くに居ない。素早く息を吐き、手前の一機の右足に照準を定めた。機体にトリガーを引かせるために操縦桿のボタンを親指で押し込む。銃口が光った。


「さて、後ろは見えているかな」


 咄嗟に避けるため左に舵を切った敵機は、後ろの機体をせき止めた形になった。ぶつかりこそしないものの後ろが少々もたつく。前の機体は隊員から無線を受け取ったのか、一瞬ぎこちなく左右に振れるも待つ気はないらしい。


「こいつも動きが鈍い」


 今度は二発立て続けに撃つ。左右の光線は相手の技術で避けきるのは困難だった。相手が対応に遅れて舵切った結果、半端な動きで一方を躱すがもう一方はコックピットを貫いた。


「銃をしまう時間はありそうか」


 武器を背負い込み新たに小銃を二挺腰から引き抜くと、先程の銃の代わりに青く発光する。先程もたついていた機体を狙い撃った。


『よくもやりやがったな!』


 左腕で頭部を庇い接近してくる。損傷が見られるも、ピストル数発では大した被害も与えられない様子だった。右腕では武器を抜いて振り上げてきた。


『やるかやられるかなら、やるしかないだろう!』


 こちらも右腕で小銃を構え、敵の攻撃を受け止める。今までの敵と違った軽い衝撃が機体を通して伝わってくる。どのみち一回の交差で撃墜するつもりである。

 相手の腕に左腕を重ねて上から挟み込み、その照準は頭部へと向けられている。そのまま接射により頭部を破壊すると、胴体を蹴り飛ばす。


『双方にやらないという選択肢があったとしても、立ち向かってくる奴には容赦せんがな』


 イセンの目に先程襲ってきた二機はもう映っていなかった。ウォードのような人間を知った以上、そういうやつを止めるために戦ってみようか、と最近少し目標が生まれたイセン。


「生き残るのが先だがな。ミライ、そっちはどうだ?」

「今、敵に追われながら別の敵を追いかけています!」


 とりあえず宙域の何処かにオレンジの光に挟まれてるウェンがいる筈。再び両手持ちの銃に持ち替えてイセンが辺りを見回すと、容易に発見出来た。その上更に狙撃しようと付け狙う新型トロップも。狙撃に対する妨害として、精度はともかく何発か撃ち込む。


「あれは……アンセルだったか。ちゃんと使ってるやつもいるもんだ。人気者だな、ミライ」

「呑気言ってないでくださいー!」

「何をやったらそんな絡まれるんだ」


 さっき持っていた銃を使ってない所を見ると、射撃の後格闘戦に持ち込み、敵に目を付けられたのだろうか。


「私は手が出せんし孤立しているから戻れ」


 多数の機体が入り乱れていた場所も、気が付けば味方は僅かとなっている。引き潮と満ち潮のように、後退する友軍に駆けつけてくる援軍。波に取り残されたら干からびてしまいそうだ。


「うわ、本当だ」

「何気に危なかったな」


 こっちはこっちで敵も味方もちらほら。一機トロップと組み合っているウェンがいる。いつか見た光景だ。


「今度は助けてやる……」


 正確に敵機を撃ち抜く。味方は次の戦場へ駆けつけてしまった。


「侵攻作戦に参加するのは初めてだが、本当にキリがないな」

「なに独りごちてるのイセン伍長、そうでもないみたいよ」


 敵の軍勢が一機、また一機と撤退していく。今回はここまでらしい。それより、どこからどこまで聞かれていたのだろう。と言うか色々口に出ていたのか。イセンは冷や汗をかいたが、無論戦いにおける緊張からではない。


「こちらも帰還しますよ。後は本隊に任せますので」

「四機撃墜……こんなものですかね」


 サーマンとファルーの声が聞こえる。


「天体の手前でうろうろしてるファルーに合流しましょう」

「また待ってるだけでいいんですか? ありがたいですね」

「あなたに場所を指定しても一向に着かないじゃない」


 今まで色々あったのだろうか。とにかく合流を目指す一行。


「分かりづらい指示なんです」

「いつもあなたにだけ分かりづらい指示なのね」

「ミルミド曹長、一言多いですよ。会話を切らなかったので今は二言多いです」

「すいません。ごめんねファルー、そんな気にしてないわ」

「いえいえ、これからもランドマークになりますよ」


 あまり気にしてなさそうな当人だが、小天体前には沢山の機体が集まっている。戦闘の直後なので他の隊も崩れており、やや見分けるのに苦労する。と、直後に点滅を繰り返している異様な機体が目に入る。


「なんか気持ち悪い光り方してる友軍がいないか……」

「ファルー、もう長剣がベコベコではないですか。戦闘が長引いたらどうしてたんです」

「まあ……みんなで後退しましょ?」


 サーマンがため息をつく音が聞こえた。彼も彼で色々大変らしい。なぜファルーと分かったのかと思ったが、装備が壊れているのか。先ほど見つけた機体も長剣を腰の鞘に納められていなかった。


「もしや、これがファルーか? というかそんな光り方が出来るのか」

「そこの機体はイセンさん? へへ、初めてやってみました」


 素直に嬉しそうなファルー。他の面々も集まってくるが、そうと分かって機体を見れば中々特徴が見えてくる。


「確かに一人点滅してると分かりやすくて良いですね」


 サーマンはそもそもの機体がウェンではないから目に付きやすい。


「ふう。イセンさん、周りをよく見ててくれてありがとうございました」

「地球では先輩だったしな。地球……」

「ノスタルジックに浸ってないで帰るわよ」


 とても普通の装備をしているミライと対照的に、ミルミドは銃器を三種類も携行している。あれだけあると重そうだと思う。


「これがノスタルジックか」

「……ファルー軍曹、手前の基地で長剣を取り換えますよ」


 ミライとイセンには少し空気が緊張したように思えた。そんな二人をよそにサーマンが立て続けに喋る。


「今度の戦場はFd4です」


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