ブラインドスペース2
多少のハプニングはあったものの、目標となる小天体に到着してインスヴァイトから降機したPCPの面々。あまりに長時間の運行は心身に影響が出かねないので、動力を切って休息を取る必要がある。実際に休息と呼べるほど落ち着けるものでもないが。
「こんな宇宙の真ん中みたいな場所で機外へ出るのは憚られるな」
「起動してないとインスヴァイトでも宇宙服のような役割を果たしてくれないしね。少尉も来たしそろそろ時間かしら」
命綱を渡って仮本部からサーマンが帰ってくるのが見える。先程の報告も済ませていた。
「もうすぐ出発の筈ですから、各自搭乗してください」
イセンが機体に乗り込んで周りを見回すと、早速出発する友軍の姿も確認できる。パッと見何か分かる訳でもないが、時たまフラついて飛び立つウェンも見える。
「皆さんは大丈夫かと思いますが、焦らずしっかりと発進するように」
「引率の先生みたいですね」
「近からず遠からずですね。話してると我々の番が来ました。行きますよ」
思ってみると、小天体とはいえ自力で地表から飛ぶのは初めてかもしれない。今は懐かしきブルーピットでもカタパルトなどという素敵な物があったし。
「気合いを込めて行かせてもらう!」
初めてということを意識すると若干体が強張るイセン。地表を踏み出してサーマンについていく。問題なくいったが、そもそもここまで意識を傾けるものではない気もする。
「はい、行きますか。本隊に追随して警戒を怠らずに」
サーマンが先頭となり前に出発した部隊についていく。本隊は基地の設営を担当する他にも防衛の要であるため、入れかわり立ちかわりで任務に就く従隊が上手くフォローする必要がある。
「我々はいつまでこの任務に参加するのだっけか」
「従隊が次々送られて来るはずなので、行動不能になる前に後退を徹底してください。本隊の判断によっては全軍でこの拠点に撤退し、防衛します」
「この数で雪崩れ込むなら問題無かったんじゃないですか?」
「敵に斥候としてこちらの軍勢を見られてますからね……」
先程の件もあり隊列はややピリピリしているとは思うが、どうも機体の内部は見れないので分からない。
「遠方に目標がありますね。こちら側からは確認できませんが、早急に連絡が入っていれば付近で待機されていてもおかしくはないですね」
「こういう大規模な戦闘でも近接で行けるものなのか?」
「それしかないので行きますよ。まあ最初は様子見で、隊列がグチャグチャっとなってきてからが本番ですね」
目標の小天体が少し近づいてきた。先頭の方はもう間もなくと言った具合だ。
「お、もう到着した隊もあるようです。とりあえずは居ないようですね」
「初の進攻任務は成功するかな?」
「設営中に襲われたらたまったもんじゃないので、もうちょい先まで進みますよ。ここら辺はデブリとか宇宙岩も多いのでね」
そのまま進んでいるといつの間にか目標が視界にすっぽり入るようなサイズに見えてきた。
「お、やはり始まったようですね。こちらと同数かやや数が多いらしいので、やり甲斐あります」
「サーマン、戦いは好きか?」
ふとウォードの言葉を思い出し、不安になるイセン。
「戦争は嫌いですが、インスヴァイトに乗るのは好きですよ。個人の意思でどうこう出来るものでもないですし」
俺らと違って戦いの当事者であるサーマン。割り切っているのだろうか。そもそも何と言ってようと、ウォードと他の隊員が同じ考えの元戦っているとは思えない。
「それもそうだな」
前の部隊が交戦したと言われても、小天体が邪魔でよく分からない。もう少し駆け上って、ようやく全貌を見渡せる位置についたイセン。
「始まったばかりとはいえ、もう入り乱れてますね」
客観的に見る戦場は、幾つもの青とオレンジの光が交差していて綺麗だった。よく目を凝らしてみると、既に打ち捨てられた機体も何個か存在している。光は消えて漂うだけのデブリとなった物たちだ。そんな戦場に対してサーマンは距離を詰めやすいな、などと考えていた。
「どうするんだ?」
「戦えるまで接近するしかないですよ」
「陣形とかは気にしないでいいのか?」
「一切考慮しないで良いです。代わりに無線には気を配っていてください」
数機ほど入れ違いで後退していく味方が見える。滅茶苦茶目立っているが、他の友軍に誤射されるよりはマシだろう。外傷が付いているのもあれば、一見新品のようなものもある。損傷したのか消耗品の補充か、それとも自分が消耗したのか理由は分からないが、周りの味方も特に気にはしていない。
「早速向かいます」
サーマンは加速して機体を発光させる。やはり誤射対策なのだろうか、少々Cモードを入れるのが早い。しかし、格闘戦には時間がかかる距離でも、射撃戦ならこの位置からも参加出来るだろう。
「では、一足先に撃たせてもらうぞ」
「今回は自分も一緒で撃ちます!」
今回はイセンだけでなくミライも長剣の代わりに長銃を背負っている。ダガーを用いた接近戦を行うなら、とサーマンの提案を受けたためだった。青い光とオレンジの光が入り乱れる中、敵軍を選り分けて、取り除いていく。




