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アフターギグ8

 

 ウォードというパイロットが敵軍の機体を改修し、ジャンダルム隊相手に奮闘していたという話はCOCのエース級達の耳にも入っていた。


「なんかウォードとかいう新顔が、イセンっつう相手の軍人と知り合いだったらしいぜ」

「新兵の交友関係など知るか、任務に集中しろ。命を落とすぞ」


 バイルとロウンは共同で任務に当たっていた。ロウンはイセンという名前は知らない。加えて今回は衛星モノの手前まで潜る。下らない話に耳を貸す余裕はなかった。


「で、その部隊の隊長がサーマン少尉と言いまして」

「どこかで聞いた名だな?」


 構わず話し続けていたバイルに乗り掛かるロウン。それを踏まえて更に続ける。


「ウォード伍長さんはサーマン少尉のジャンダルム隊三人と大立ち回りの末に撤退だとよ」

「それは本当か?」

「結構良い勝負だったっぽいですよ? 援軍に来た癖に味方ほっといて全滅したから帰還する羽目になったらしいですが。おっと、ロウン中尉を責めてるわけじゃありませんからね? 本当に」


 言うまでもなくこの前のことだろう。サーマンが隊長機を抑えに来たことにより、部下のみでの集団戦を強いられていた。仮にバイルでも隊長同士の一騎討ちに専念するだろう。なんならロウンはあと一歩まで追い詰めていたが、自分ならキリをみて撤退する。


「お前はいらん一言を添えないと気が済まんのか?」

「まあ、負け分取り戻そうとして沼にハマるのはよくあることですよ」

「何に負けてるんだ」

「中尉の圧力かな……」


 遠い目をして……周辺警戒もしているため本当に遠い目をしつつ、操縦席のOSーーブラックボックスを操作するバイル。モニタにインスヴァイトを操作するロウン中尉が映る。


「ふざけるんじゃ……おわっバカ野郎、趣味が悪いぞ!」

「間違えた。ほんとですよ? 興味もないし」

「わざとやってるだろ、おい!」


 騒ぐロウンをよそに操作を続けていると、何かのコマンドを実行した。


「ロウン中尉、外部内部共に異常ないですぜ」


 それを聞くとロウンもブラックボックスを弄る。


「なんだ……録音機能は切ったぞ。妙な真似しようとするなら味方とて容赦せん」

「怖いですぜロウン中尉。……オフレコだが、ウォードはドックの奥、第二格納庫の中で過ごしてるらしい。部屋が無いのか知らねえが、上層部はずいぶんな扱いしやがる」

「なぜそんなことを知っているのだ? 貴様の逃げ足の早さと機体への適応力は評価しているが、他にも私の知らない強さがあるのか?」

「強さと言いますか、まあ整備士連中とは仲が良いんで。そろそろ録音を再開させますか。目標もずいぶん近くに見える」


 バイルは危機管理能力の高さを買われ、危険度の高い任務に就かされている最中だった。生き残るために必死に工夫してるのになんでこんなことになったんだ。もっと戦闘能力が高いやつに判断力があれば良かったのに。などと考えていた。


「あ、COCから秘密兵器が渡されたので、ここら辺にばら蒔いておこうかな? 敵に自軍戦力を多く見せる装置らしいが、実際に援軍寄越せってんだ。挙げ句にいまどき電波で起動するなんて、時代遅れだな」


操縦席で手帳ほどのリモコンを不安そうに握りしめる。ボタンは一つと実に簡素だ。彼の機体ーーミリオンアーツは、背負っていた物置サイズの鉄塊十個ほどをバラバラと宇宙に解き放つ。


「珍しく怒っている様子だな。まあここで交戦しても不利ではあるし、大隊を動かさないのも分かるが」

「とはいっても二機って。出撃するまで冗談かと思ってましたよ……ロウン中尉はなんでまたあの隊にこだわるんですかい? 強いだけなら敵の衛星軌道隊SOSでも連隊率いる敵エース、ステイル大佐でも良くないですかね」

「敵軍のトップとまともにやれるとも思えんし、そんなのに挑むほど命知らずではない。SOSも敵の最終防衛ラインだろ」


 モニター越しに見えるバイルが鼻を鳴らす。SOS? この前突破しましたよ。交戦してませんがね……そんなことを言いたそうに見える。実際整備士に自慢げに話していたのはロウンも見ていた。


「分かりかねるな。この戦いで好敵手を見定めること自体無駄ではないかと。数十数百の戦場がある。また会う前に自分が死ぬか相手が死んでる」

「自分が死ななければ、相手が生きてるだけでまた会えるのだ。お前と私が敵同士だったら案外何度も交えていたかもな」


 モニター越しにくすっと笑うロウン中尉は、バイルから見れば歳相応の少女のようだった。こういう顔も出来るのか……不測の事態にも動じないが信条の彼でも久し振りに少なからず驚いた。


「ロウン中尉もジョークを言うんですね……へ、面白いですね」

「面白いならもっと笑えよ!」


 はからずも苦笑いのようになってしまい、ロウン中尉に怒られる。彼女はモニタを切り銃を構える。バイルに向けた物ではない。そもそも彼女の機体も銃身も発光していない。


「敵は五機。こちらに気付いた様子はない」


 彼らの任務の本懐は、敵が小天体に築いたばかりの戦略拠点の戦力規模を観察することだ。仮に大隊や連隊が動員されているのなら。インスヴァイトが百機を越えて拠点に駐在していれば、そのまま進軍する可能性が高い。迎え撃つ必要があるのだ。


「驚かせんでくださいよ」


 ほんとに怒髪衝天に達したのか、こっちがモードCを入れるところだった。偵察任務で仲間割れして失敗するなんて笑えない。


「勝手に驚いただけだろう」

「にしてもスゴいですね。言われてもどこにいるか分かりませんよ」

「私の長銃には狙撃のオプションが付いているからな。ならば確認は容易という訳だ」


 なるほど、なるほど。……敵に気付いたから銃を取り出していなかったか? いや、銃を構えるフリをして威圧したら敵が映ったとかそういうことだろう。今日のロウン中尉は中々ジョークが多いな。もちろん口には出さないが。


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