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アフターギグ3

 

 後ろの扉がノックされノータイムで開かれる。サーマンが帰って来たのだ。どうやら本当に好きに入ってきて構わないようだ。


「ただいま戻りました。ところで、本部へ帰っている間に、敵軍の情報は何か入りました?」

「相手方はトロップの強化に励んでいる、と言った事とかな」


 そう言うと胸ポケットから写真を取り出す准将。そんなところに機密情報をいれるな、と怒られそうな場所だ。


「はい、サーマンの写真」

「ラックワイトのじゃ無いんですね」

「いつも通りじゃつまらないだろ」


 ゴホゴホと二回咳払いをして誤魔化すイセン。やりとりから察するにこれは毎回やっているのだろうか。横をみるとミライは二人の様子を楽しそうに眺めている。これで多少はやった甲斐もあったというもの。


「ま、本当の写真はこれだ」


 机に置いていた荷物を開き、再び一枚の写真を取り出す。そこにはロウンの乗っていた機体と似た改良型とも言えるトロップが写っていた。写真の中の機体は彼女が使ってたような銃剣銃を背負っている。銃の照準とモニタを共有するオプションを備えているのだろうか。しかし、スカートのようにも見えたマッシヴな脚部はなく、下半身は据え置きのようだった。


「これは狙撃向きの機体ですね。よく似た型の機体について報告するところだったんですが」

「ちょうど良いから少し聞かせてもらおうか」

「搭乗者はロウン中尉と呼ばれてましたね。エース級の候補生による教育隊を率いていた」


 サーマンの様子を観察しつつ、よく情報を把握していると感心するイセン。彼と目が合うとウインクをしてきたが、それは別に求めていないので視線を前に移す。いつから持っていたのかペンでさらさらとメモを取るブリディガル。


「彼女は銃剣銃とは別に狙撃銃を持っていましたが、照準器を覗けない構造でしたので、前々から言われていた照準モニタの装置が完成したと見て良いでしょう。また、共通の規格なら狙撃のオプションは使い回せる可能性が高いです」

「うん? お前らロウンの狙撃銃で不意討たれたのか? よく無事だったな」


 准将が手を止めて少し驚いたように話をする。ロウンの狙撃の腕はそこまで有名なのだろうか。


「そこの金髪が今の髪型みたいに急に跳ね回りまして」

「? まあ何とかなったんだな。その部分は後で聞こう」


 余計なことを言うなとばかりにサーマンに視線を合わせるイセン。またまた目があったのでウインクをしてくるサーマン。そうではない。


「彼女は近、中距離はメインカメラの映像を元に射撃を行い、格闘間合いでは銃剣による刺突で潜り込んできました」

「お手本のようだな。よく貴様の機体で生きて帰って来たよ」


 ダルクを知る者にとって中距離で全く手が出ないことは周知の事実である。もっとも実戦配備された当時とは違い、もう乗る者自体居なくなってしまったが。


「ありがとうございます。で、ここからは次戦以降の対策なのですが、彼女以外の場合」

「ま、大半の兵士のことだな」

「中距離は取り回しの悪い銃で照準器を覗かず撃つという点。近距離は銃剣による癖のある格闘戦への切り替えが必要な点。まー半端な銃で撃ち合うか、これを捨てていつもの両腰に備えた鉈に持ち替えるか」

「基本スペックの向上以外は従来と変わらない対応で乗り切れそうだな」


 話を聞く限りデメリットが目立つ。サーマンの機体を追い詰めた割に、そんな強くないのではとさえ思ってしまう。


「ただ、照準器を覗けなくしてまで狙撃のオプションを付けてますので、中距離以遠を狙い撃てる操者にとって今まで以上の成果を挙げる好機となりそうですね」


 前々から照準とモニタを同期させる試みはあったらしいが、それだけ切望されていたのだろうか。ロウンの腕は卓越していたが、一般の兵の腕というのははどんなものなのか。


「結局、彼女はどう討つのかな?」

「そりゃもう、得意な間合いで勝負に持ち込みますよ。イセン伍長のように鉈やダガーの代わりに小銃を使う方は、相手が取り回しの悪い中距離で立ち回れるので、並の相手には有利かと」


 直接イセン本人が褒められた訳ではないが、あまり悪い気はしない。しかし先の戦いではミルミドを守る為でもあったが、近距離で立ち回る羽目になった。今度は距離感を掴むぞ! とひそかに目標を立てる。


「私は接近戦を制したいところです」

「ふむ……今後も中距離で戦うことはないのか」


 言外に銃を用いた機体へ乗り換えるつもりはないのか、とサーマンに問うブリディガル。


「まあ騎兵ですし」

「それじゃあ今後の任務でも存分に振るってくれよ、腕をな。次は遊撃に当たってもらう」

「また任務なのか!?」


 次から次へと任務の話がやって来て困惑するイセン。今のうちに温かいものでも食べておこうかなどと考えていた。


「詳細は追って話すが遊撃だし交戦の可能性は低いぞ」

「なんか、前にも聞いた台詞ですね……」


 ミライは若干諦めの境地へと至る。そもそも遊撃の意味がしっかり分かっていないのだが、まあ全員集まったら詳細な話が聞けるのだろう。


「まー二時間後には召集するので、そのつもりで。あ、そうそうこれを見てくれ」


 新たに懐から何かを取り出すブリディガル准将。サーマン、イセン、ミライの視線が一箇所に集まる。


「オチの為に取っておいたラックワイトの写真だ」


 こちらにピースを送ってくれてはいるが、確かに笑顔の作り方が下手な中尉が写っている。イセンは頭を抱えている。


「それでは召集まで好きにさせてもらう。失礼する」


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