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サテライトルート4


「急に回転しないでください。びっくりするわ」

「ああやって後方を見回してるんですね」

「俺もあんな高速では出来ないですけど、出来る人は出来ますね」

「日頃から練習しておけば良いのですよ」

「変なこと言わないで頂戴。ファルーに追突されかけるのはもう充分なんだから」


案外緩いことを言っているが、そんな簡単に出来るものとは思わない。


「ミライ、一応言っておくが変に真似しようとするなよ」

「そーんなする訳ないですよー」


変に間延びした口調で応える。いまいち本当なのか嘘なのかは分からないが、いきなり激突されるリスクは減った訳である。


「なんかちらほら浮遊物が見えますね」


イセンの目には小さい天体が少し見える程度で、なんならどの程度離れているかも定かではないが、ミライにはちらほら見えているらしい。


「ちょっと待ってくださいね。ああ、ホントだ。ミライさんは目が利きますね。スピードを落として進路を変えます」


サーマンが機体を揺らして旋回する。見よう見まねで曲がる前に機体を揺らす新米二人。曲がる際に後ろの二人に笑われたが、機体を揺らすのはサーマンが曲がる合図だったかららしい。


「とりあえず、比較的大きい小天体を巡回していきます。進路は……ここを通って、こうです」


インスヴァイトの操縦席にあるブラックボックスがモニターに進路を映す。人の感覚で言うと、とても大きい天体を三個ほど経由するようだ。大きい小天体とはなんともややこしい。


「いづれも補給基地にするには都合がいい天体ですね」

「後ろは私たち二機に任せてね」


表面をなぞるように飛び、敵軍の装置を検知したら破壊すれば良いのだという。もっともどうやって検知するのかは二人に知らされてはない。


「一個目は特に異常は無さそうですね」


最初は点のようだった天体だが、近付いてみるとビックリするほど大きい。確かに衛星と比べると小さいのだが。


「この宇宙でこんな岩っころに引き寄せられるなんて、感傷的な気分を抱くよ」

「ん? イセンさん、なんかのジョークですかね? それともインスヴァイトのパイロットへの誘い文句でも考えているんですか?」

「黙らっしゃい。なんもないなら次行ってくれ少尉殿」


敬称で呼ぶが敬ってる様子は微塵も感じられない。いつの間にか緊張も解けてきたのか、元から負けん気が強いのか、血気盛んなイセン。


「次の天体ですね。了解了解」


小天体の周りをなぞるように動くサーマン。時折先程のようなロールを混ぜ、付近を眺めている様子だ。


「二個目。こんなもんですかね」


ミライにとっては色々変わって見えるのかもしれないが、イセンにとってはほぼしばらく特に変哲のない風景。


「ふわぁ……おっと、失礼した」

「イセンさん、起きろー」

「起きてる、起きてる」


数時間ほぼ動きのない間違い探しをしている気分になって、少々まいってくる。案外ロールなどの練習も憂さ晴らしにはなるのかもしれない。


「三個目。どれどれ……各自散開!」


サーマンの警告に反応するより早く遠くで何かが光る。敵の攻撃だった。瞬く間に視界が明るく照らされるが、直撃は免れた。高速での凝った動きというのはイセンが思った以上に制御が難しく、客観的に言うとイセンとミライが激突した。


「ぐう! よく分からんが、間一髪と言ったところか」


放たれたビームはサーマンの後方、ミルミドとファルーの前方を正確に通り抜けていき、代わりにぶつかった隕石が融解する。


「イセンさん! 自分には注意してたのに!」

「いやあすまん……思った以上にーー」


サーマンの機体ダルクが黒く発光しているのが目に入った。インスヴァイトがモードCに移行したのだ。発光と言うより装甲下から周りの光を吸収していると言った方が正確かもしれない。


「次はこちらの番ね」


サーマンを除いたジャンダルム隊のインスヴァイト、ウェンは青く発光し、ミルミドは相手のビームの出所に銃を構える。こちらの交戦態勢も整ったと言うわけだ。


「相手は狙撃役が一人、それと同時に四体隕石の陰から接近してます」

「五機ってことは、戦闘ですか」

「はい」


手前の四機はこちらの進行ルート上に配置された岩陰から、最初の射撃と共に強襲を掛けてきていた。かなりの精度の予測と射撃だったが、有効な一撃を加えられなかったことに動揺したのか攻めあぐねている。


「待ち伏せされていたのか?」

「こちらの偵察とあちらの先遣がかち合ってしまったのかも」


淡々と述べつつサーマンは遠方の狙撃機に迫る。誰よりも早い思考速度とダルクのスピードで、他の面々は勿論相手の前衛が旋回することも許さず単独で駆け抜ける。


「あ、サーマンさん!」

「俺達は残った四機と相手だよ。恐らくサーマン少尉の相手よりは格下だろうけど、油断するなよ」


敵の狙撃機は初撃が外れたと見るや長身銃をしまい、さっさと隕石群に迂回していた。他四機からの援護を受けづらい一方で、迎撃するにはちょうど良い場所取りだと踏んだのだろう。

敵軍は殺る気だ。


「帰還するのが少し難しくなっただけです。自分の使命を最要にーー」


サーマンが言い切ろうとした瞬間、目の前が光る。今度はミルミドがトリガーを引いたのだ。



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