サテライトルート2
宇宙空間を航行するジャンダルム一行を乗せたレッドクロック。ラックワイト、ティラー、ライが操縦に取り掛かる。ファルーはおそらくウェンの格納庫へ行ったのだろう。
「ここですることも無いので場所を変えますか」
「了解だ。あと、移動しながらでも聞きたいのだが、我々はどこへ行くのだ? さっきのアテナイ? という施設は守らなくてよいのか?」
「あれは完全な不意打ちを食らった形になりましたね。ホントに。相手もそれなりの準備と資源を使った作戦の筈ですので、軌道エレベーターの上層には攻めてこないと思いますよ」
話し方から察するに、軌道エレベーター上に攻めいるのは容易ではないのだろう。
「……相手も惑星を拠点としているので、お互いの惑星が接近するタイミングに激しい戦闘になりますね。それ以外では基本大規模戦闘は起こりづらいですが」
「今は手薄の自陣近くに潜り込まれた訳か」
廊下を歩きながらふと窓の外を見ると、遠くに編隊を組んだインスヴァイトが目に入る。ウェンと同じく赤銅色の機体で頭には四本杭が刺さっているのだが、微妙な違和感を覚える。
「すいません、話が逸れるのですがあの部隊は何ですか?」
どうしても気になるミライが口を挟んだ。改めて見て分かったことだが、ノアには木星のような輪が人工的に作られており、アテナイ含む軌道エレベーター高層と繋がっている。軌道リングという物だろうか。先程のインスヴァイトは軌道リングに沿って巡回しているように見える。
「彼らは衛星軌道隊、SOSですね」
「衛星機動隊?」
「サテライト、オービット、ソルジャーズなのでSOSです。彼らは優秀な隊員を選りすぐって作られた、軌道リング上の動く最終防衛ラインのようなものです」
ここまで話したあと、更にこの前は支援が間に合わなかったんですけどね……と、遠い目で呟くサーマン。
「ちなみに支給されてる機体もウェンより新しい次世代型です。遠目にしか見えませんが、背部のパックがより強力な物になってますね。いやあ羨ましいです」
SOSについて話しているサーマンはとても真っ直ぐで、同じ軍人として、もしかすると同じく引き抜かれて作った部隊として、彼らを尊敬しているのが伝わってくる。
「そうそう、衛星は数少ない宇宙の拠点となりますので」
「我々もそこに向かうということだな。地球にとっての月と同様に、ノアも何か回っているのか」
少し故郷を懐かしむイセン。ミライはまたも窓を見渡し、目的の物を見つける。
「ひょっとしてあれじゃないですか?」
「ん? おお、あれは確かに天然物っぽいな」
ミライが見つけたそれは、遥か彼方にあってもしっかり肉眼で確認できた。ただ、建設されているであろう軍の施設などがあるかと言われると、さっぱり分からない。
「お二人の母星より宇宙開発が進んでるとはいえ、銀河規模で見ると人工物なんてちゃっちいもいいとこですから。有効活用しますよ」
「ちなみになんて名前なんだ?」
「モノです。今も多くの隊が駐屯してますね」
サーマンは窓の端を手でなぞり、廊下から一室へ入る。どうやら食堂に来たらしい。同行していたミルミドが冷蔵庫や保存食を確認し、ホッと一息つく。
「しっかり食糧はあるわね」
「そりゃあるでしょう。一週間ほど前に確認はしましたし」
「かつての教訓に忠実にね。衣食住の確認は念には念をおくべし」
消耗品などの準備はイセンもミライも全く気にしてなかったが、過去に何かあったのだろうか。
「それには同意ですね。もう一週間水だけは懲り懲りですので。ま、今回食糧忘れても翌日にはモノで補給を受けれますけどね」
「恐ろしいな……今は朝か? 昼か? 軽食でも作ろうか」
「それはありがたいですね! イセンさんがいると時々食事が彩られます。」
「私たち、基本週一のパスタ以外は宇宙食ってことが多いですものね」
割と食事は士気にかかわる。そんな話を聞いたような聞いてないような。思ったより不摂生なジャンダルム隊、たまには料理でも作ろうと思うイセンであった。
「あ、出来れば持ち運びが容易なものでお願いします」
「なるほど、承知した」
しばらくして料理が出来上がるとみんなで操縦室に持ち運ぶ。いつ聞き付けたのか、気がつくとファルーも揃っている。
「いやあ、艦が賑やかですね。これは楽しい。ラックワイト中尉、首尾はどうですか?」
「はい、問題なさそうです。予定通り明日早朝には着くかと」
「ではここから私が代わりますよ。少し休んでいてください」
ラックワイトが一礼し、座を譲る。サーマンも一つ頷くと席につき、モニタを眺める。一回大きく全体を確認した後、深く座り直し背もたれに身体を預けた。
「ライ軍曹、ティラー軍曹、二人も下がってくれて大丈夫ですよ」
「下がれという命令でないならば、ここに残らせてもらいます」
「それならば好きにしていてください、ライ軍曹」
ライは個人的な忠誠心から操縦室に残ったが、サーマンと入れ替わりでラックワイト、ティラーが一息つく。
「ミライさんイセンさん、さしあたっては艦内で休んでてください。有事になったらお呼びしますが、おそらく何も起きないでしょう」
こうして、操縦役は適度に交代をしつつ、予定通りアテナイを出た24時間後には衛星モノへと到着した。




