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サテライトルート1


シャトルはアテナイという施設の中に到着した。名称こそシャトルであるものの、作り諸々を含めるとデパート等のエレベータに酷似している。


「ミライさん、起きてください。着きましたよ」

「イセンさーん? ちょっと待っててください……」

「私はサーマンですよ。上官のサーマン・クラスプです」


サーマンが寝ぼけたミライを起こしつつイセンの方を見やると、しっしっと手を払われる。


「お疲れさまですサーマン少尉! 隊員一同お待ちしておりました!」

「久し振りです。私たちの新しい艦を紹介しましょう。といってもブルーピットの前に使ってたボロ艦なんですけどね」

「よ! ウェンの整備も抜かりないぜ」


第一声、ライの挨拶に他の隊員が追従する。ミライがしっかり起きてなかったので遅めに降りたのだが、そうでなければ注目の的になっていただろう。相変わらずのライ、ラックワイト、ティラーと勢揃いであるが、おそらくライが引っ張ってきたのであろう。


「あの部隊ずいぶん力が入ってるじゃないか。降りてきたのは分隊長か? 一同と言っても数が少ないようだが」

「おい、あいつに絡むな! 懲罰部隊の狂犬ライだぞ」


同乗していたPCP隊員の話を聞くところライ、ジャンダルム隊はそこそこの知名度といったところか。ついでに聞き慣れない通り名がライに付いていたが、ミライもイセンもあえて触れるものではなかった。


「さて、今回の趣旨を伝えますと、我々は人工ではない衛星に移動することになります」

「いつ頃出発するんですか?」

「そこの角を曲がったらですね」


サーマンが歩いている通路の先を指差す。


「サーマン、いやサーマン少尉、本当かどうか際どい事を言うな」


軍属の異星人から正規の軍人となった為、一応敬称をつけてやり取りをするイセン。


「ま、ちょっと盛りましたね。あと十分は移動しますから」

「どのみち思ったより早かったのですが!」


他の面々はサーマンの発言に特に何とも思っていない様子。いつものことなのだろうか。


「ここより先は軍関係者のみ出入り可能となってますね」


少しの間手すりを伝って移動していくと、重厚そうな扉が見える。言われてみれば、ここに来るまでに段々と軍服の人が目立ってきたように感じる。


「ほんとはこの施設もしっかり歩いて説明していきたかったのですが……」


サーマンは柔和な笑みを浮かべ、カードリーダのようなものを使い基盤を操作する。


「はい、これで開きました。解錠にはPCPの身分証が必要なので、ミライさんとイセンさんには今渡しておきましょう」


扉の先は巨大な格納庫のようになっている。戦艦のような船が並ぶ中、奥には破損したウェンもいくつか並んでいる。見慣れない光景に気を取られていると、二人はサーマンから顔写真の入ったカードを投げ渡された。


「……自分、写真を撮られた覚えはないんですけど!」

「正面から、それなりの近さで撮ったと見受けられるが……?」

「ふふ……早いところ、レッドクロックに乗りますよ」


多くは語らないサーマン。格納庫には一隻赤い塗装のされた艦があるが、近くの他の艦と比べて形状がシャープではない。というより……


「なんか不必要に巨大とか、当時の技術の限界を感じるとかいった感想が出てきそうな見た目をしているな。個人的にだが」

「だ、大体あってますが、きちんと宇宙は運行できますよ! 中も意外と広いですし」

「サーマン少尉、現役の宇宙艦でそのフォローは酷しいんじゃないかしら……」


ミルミドが言いづらそうに口を開く。


「この艦だってやれば出来る筈です! かつての戦場では幾つものレッドクロックが軍のインスヴァイトを運び、果ては勝利まで導いたとかなんとか……」

「そうそう! この色々な物を詰め込んだことでしか表現できない造形美ですよ! ちなみにクロックという名前は、搭乗した司令官があまりの遅さに時計を繰り返し見たことに由来してるとかなんとか……」


ファルーもサーマンに同調して勢いづいている。この二人はインスヴァイトに限らず大型の機械が好きなのだろうか。


「少尉……それにファルー軍曹。話が進みませんので、先に行きましょう」


今度はラックワイトが諌める。若干二人が保護者に見えてきたミライも話を合わせてささっと中に入る。


「レッドクロックっていうんですねー! ここが入り口かな? 中は思ったより快適そうですねー!」


艦内をまっすぐ歩くと、様々な計器類とディスプレイが並ぶ部屋へ出た。


「やはりミライさんはお目が高い……! ちなみにここがレッドクロックの操縦室ですね! 席とか座りますか?」

「はあ、サーマン少尉。ちょっとオンボロ艦を褒められたぐらいで調子に乗らない」

「相変わらず言うときは言うなあミル曹長。俺は中々強く出れねえな。なんならライに絡まれそうだし」


八人揃って賑やかなメンバーの中でも、操縦室についてからは真剣そうなラックワイト。動力を点けてからモニタとにらめっこしている。


「お、計器類のチェックですか。冗談は置いといて、ライ、ティラーも補助操縦について貰ってよろしいですね? ラックワイト中尉、発進!」

「す、数分待ってください! 発進できるときは伝えますので!」


ラックワイトは比較的真面目に返す。数分で出艦するというが、またいつ戦いになるかも分からない。ミライが今更何を思おうと宇宙に出るのは変わらないのだが、その数分はずいぶん時間が早く感じた。


「……各自衝動に備えて何かに掴まっていてください」


ラックワイトの声の裏で、機械音声のようなものが微かに聞こえる。どうやら外部で発艦を知らせるアナウンスが流れているようだ。一拍置いて、艦が動く。正確には、下の床ごと動かされているようだ。ブルーピットよりやや小振りのレッドクロックではあるが、旅客機くらいならばすっぽり包めそうな大きさである。どのように押し上げられているのだろうか。

天井部が開き、上層の空間に作られた発艦場のような所で固定される。


「……サーマン中尉、準備出来ました!」

「今日も今日とて上手くいくように。では、レッドクロック発進!」


合図と共に前方へ加速するレッドクロック。正面に見えるシャッターが開き、宇宙空間が広がる。カタパルトから機体が離れ、静止軌道から外れる刹那、どことなくトンネルを抜ける瞬間を思い出す。


「もう大気圏突破だのマスドライバーだのは懲り懲りだ……」

「そんなに弱気になるなんてイセンさんらしくないですよ! 今の身も心も放り出される感覚……中々に癖になりますよ」

「その感覚が嫌なのだ!」



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