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アースアンバサダー5


「来ましたね……今日の夕飯!」

「早速いただきますー」


各々が食事を始める中、ミライの視線はファルーへと注がれる。ブルーピット内の食事ではほぼ最速といって差し支えないが、座席の関係上今回はゆっくり? 見ることが出来そうだ。真紅のテーブルクロスに真っ白い皿と金の縁取り、そして青々しい野菜に彩られた焼き魚が片付けられるのを待ちわびる。

無論ミライの頼んだ料理も届いているため、片手でラムチョップを握りしめている。


「いやー遠路はるばる来た甲斐があったな。ヨルクの料理も中々美味しいな」

「自分はまだ知らない肉料理と出会えて良かったですね」

「地元から引くほど遠いしホントに未知の料理とも出会えるかもな」


しみじみしながらイセンが酒を飲む。


「む。マリアージュは世界共通なのだな」

「なーに言ってるんですか。もう一回別の動物のチョップ? でも頼んでみようかな」


ミライとイセンはそれぞれ自分がみたいメニューのページを眺めている。主に前者は肉、後者は酒である。


「というか、ミライも酒は飲むんだな」

「人が飲むなら飲みますよ。あ! 話をしている間にファルーさんのメインが空に」


二人が楽しそうに話しているのを尻目に純粋に料理を楽しむファルー。


「食べてる間はホントに喋らんな」

「話しかけられたら喋りますよ。あー、自分もお金は足りてますし、まだ何か食べますかね」




「私は料理がうまいと会話が止まらないのだが、もう少し集中した方が料理人は喜ぶのだろうか」

「良いんじゃないですか? 美味しく食べてるのが伝われば」


やがて一行は食事を終え、まだ金銭感覚が掴めない地球人を従えたファルーが会計を済ませる。あまり物事に動じない彼が明細を見て一瞬目を見開いた。


「ありがとうございました、またのお越しを」

「こちらこそ、楽しかったです。素材の組み合わせも参考になりました」


店をあとにして上機嫌に歩くミライとイセンの肩を掴むファルー。


「値段が……」

「そんな高かったのか? 見た感じ色々な客層から支持されてそうな雰囲気が――」

「イセンさん飲み過ぎ! 三日目はそんな飲まないでくださいね? ホントに! アルコールに関しては全然体に気を使いませんね!」


夜も更け人通りまばらの町に、ファルーの声がよく響く。普段の落ち着いた雰囲気はどこかへ行ってしまったようだ。


「やっばり飲み過ぎですって、イセンさん」

「ミライは食べ過ぎ! ほぼ肉だし! そんなに詰め込んで気持ち悪くならないんですか?」

「あー、分かった分かった。酒は飲んでも飲まれるなと言うからな」

「自分も少しは控えますかね……ちなみにまだ入ります!」

「聞いてないけど!」


トロン邸までは距離があったので、歩いていくうちに最初は荒れていたファルーの声も、次第に穏やかなものへと戻っていった。


「私はオプシムさんに一声掛けてから自室に向かいますが、お二人も特に何もなければ自室にいるということで」

「そうなるな。まあ、とっとと風呂入って寝るとするがな」


よく寝るんだよー、と言い残すファルーと別れる。特に何かあるわけでもなく、ミライは真っ先にシャワーを浴びた。

浴室でシャンプーを髪につけながら、今日のこと、これまでのことについて思いを巡らす。ここ一ヶ月程度は浮き沈みの激しい日々を送っていた。訓練を経て操者になり、中々初任務が来ないと思えば、初任務中に拉致はされるわ生きるか死ぬかの戦いに巻き込まれるわで。


「ひょっとして、ようやく一息つけてる……のか?」


浮き沈みというか、今日までしばらく沈み続けていることに気付いたミライ。この三日間で何か目標を立てても良いのかもしれない。

浴室から出ると、恐るべきことに壁の向こうからイビキが漏れている。


「イセンさんの方だけど……声でっか」


ブルーピットでは二段のベッドをイセンと共に使っていたミライだが、イセン・シュベルクは寝るのが特に早い訳でもなく、先に寝ていた時も比較的スヤスヤと眠りについていた記憶がある。……初日を除いて。


「お酒飲み過ぎるとイビキが出るのかな」


とはいえ、いかに周りがうるさかろうと、そこらへんの作りは雑にできているミライ。特に意に介さず、就寝。




その後三日間は本当の旅行のように過ごした一行。最近の桁外れな非日常から解放され、常識的な範囲での非日常を楽しんでいた。最後までただ観光したり、楽しんでいたりして過ごしたわけではなく、必要な日常品の購入なども行っていた。翌日からはジャンダルム実働隊として、再び宇宙へ上がるためである。

軌道エレベーターを使うのも二回目なので、手慣れたものだったが上昇の際は最初とはまた違う感覚を覚える。


「さ、とりあえず軌道エレベーターの上層施設アテナイを目指していっちゃいましょう。あら、イセンさん顔色がよろしくないご様子」

「黙っていろサーマン。精神を集中して上昇に備えているのだ」

「もう揺れませんから大丈夫ですよ。ブルーピットで大気圏突破した際は、思った以上に衝撃が凄まじくて焦りましたが」


いまいちサーマンのことは信じきれないイセンだったが、初動の振動が収まり暫くすると、それ以上身構える必要はないと分かり、落ち着いて眠りにつく。



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