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アースアンバサダー3


「あ、トロンさんじゃないですか。ジャンダルム所属のファルーです」

「ああ、サーマンから連絡は受け取っているよ。三人全員居るようだね。碧眼の彼がイセンさんでよろしいか?」


どうやら簡単に二人の特徴は伝えてあったらしい。名前を出されたイセンがすかさず自己紹介をする。


「いかにも。ついこの前はライズ支部選抜隊員と名乗っていましたが、今はなんと申しましょうか。地球生まれのイセン・シュベルクです。恐らくジャンダルム隊所属」


イセンが話を終えると、ミライがふふん、と得意気に一歩前へ踏み出す。


「自分が継葉ミライです! よろしくお願いします!」

「ミライさんだね。こちらこそよろしく」


ミライとトロンが軽い握手を交わしたところで、大柄なトロンの付き人が口を開いた。


「私はオプシムと申します。屋敷はここから南方に行ったところにありますので、案内しましょう」


一行が屋敷へ向かう間、目に入る風景にも徐々に変化が現れる。軌道エレベーター周りは様々な屋台で賑わっており、観光客と思われる人々が歩いていたが、オプシムに着いていく内に大きな邸宅がちらほら見え始め、道行く者達は強い日差しに耐える為の服装を身に付けている。恐らく現地の者なのだろう。


「ここがトロン氏の屋敷です。うん、どこか見覚えがあります」

「異星にもモスクのような建物があるのだな」


トロンの屋敷の手前にもなると豪邸が軒を連ねており、このような場所に足を踏み入れた事のないイセンはどことなく気後れするが、ミライは好奇心から若干落ち着きがない。


「庭にヤシ科の植物がある……ひょっとしてココナッツですか!」

「食べ物が好きなのかい? 観賞用なので残念ながら実は成らないですよ」


テニスコートを何個か作れそうな広さの庭を抜けて二階建ての本殿に到着すると、オプシムが重厚な扉を開く。


「改めてようこそいらっしゃいました、我が主トロンの屋敷へ。滞在期間中は敷地内でしたらご自由にくつろいでください」


オプシムの話を聞いて、イセンは内心やれやれと思った。ミライは図太いというか、少々厚かましいところがあるので、額面通りに言葉を受け取って行ける場所に行き、登れる場所には登りそうだ。案の定隣を見ると目を輝かせている。


「感謝します! 自分らはジャンダルムのメンバーと言ったら微妙なところですが。それにしても、このお屋敷更地にすればボウリングが20レーンくらい出来そうですね」

「そういうのは、後で私に耳打ちするようにしろ」


ミライの世話を焼くのが板についてきたイセンがたしなめる。オプシムは苦笑いを浮かべ、トロンはボウリングか……とぶつぶつ呟いている。ファルーは特に気にはしてない様子。


「ああ、三人の部屋は右手の階段を上がった先にあるのでそちらの方へ。私とオプシムは一階に部屋があるので何かあったら呼んでください」


トロン、オプシムと大広間で別れる。オプシムは先程勝手にいなくなった事についてトロンに小言を挟んでいるが、本人は全く意に介していないので、オプシムの小言は止まらない。


「分かりましたー。イセンさん、どっか見て回りませんか?」

「とりあえず荷物を置いてからな。あとシャワーも浴びさせて貰おうか。暑いし変なスリルは味わうしで汗を掻いたからな」


三人横に並んで階段を上がるが、通路の幅にはまだ余裕がある。屋敷の広さに対して使用人のような人影も見えず、若干寂しい雰囲気だ。


「この広さなら二段ベッドとかでもそのまま運べそうですね」

「ドアを通らなければどのみち解体する必要はありそうだがな。もっとも、今は二人で暮らしているみたいだが」

「昔はもっと賑わってたらしいですが、サーマンさんがまだPCPの正規軍人の頃になりますから……数年前になりますね。下手したら十年くらい前かも」


会話しつつも部屋の前まで来たが立ち止まる。部屋のキーなどは貰っていないので、なんとなく三人一部屋かと思っていたが、一人一人に部屋があてがわれているらしい。


「うーん……とりあえずシャワー浴びたらイセンさんの部屋によりますね?」

「先輩の部屋を集会所に使う気か」

「ああ、ミライさんもイセンさんも共に一等兵で同期。というか昨日からジャンダルム配属ということになっていますよ」


イセンは色々な要因から若干不満げだが、部屋に集まることには承諾してくれたので、一旦別れるジャンダルム一行。


「よくよく考えてみると、全く大変な目に遭ったな……」


部屋に入ると、隅に荷物をまとめるイセン。ミライの初任務の際に着替えは持っていたが、まさかここまで大事な三着になるとは。こうなることを知っていたらもっと考えて選んでいたのに。


「ま、今日は気持ちよく寝かせてもらうか」


改めて部屋全体を見ると中々に広く、三人で泊まるとしても何ら不便が無いように見える。浴室には浴槽もあったが、とりあえずシャワーを済ませる。我ながら鏡に映る自分の表情は曇っていた。

黙々と着替えていると部屋をノックされた気がしたので、ドアを開ける。


「どうも。あ、髪が寝てますね。珍しい」

「食うのも早ければ風呂も早いな」


最初に来るのはファルー。部屋を見回すと、窓際に置いてある椅子に掛けた。外は赤く染まり始めている。

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