アースアンバサダー1
ブルーピットから降りて拠点の様子を見てみるが、ヌーフが撤退した後は所々欠損しており、修復に時間がかかりそうだ。拠点は惑星に根付いてる訳ではなく、巨大な人工衛星の類で、母星であるノアに軌道エレベーターが繋がっている。その為敵が抑えに来たのではないか、とはサーマンの考察である。
「どうせだし、ノアに降りてみますか」
「本来イセンさんとミライさんを連れてきたら休暇を貰うはずだったんですよ? 今回働かされましたけど」
「俺が居ない間に妙なことをするなよ、地球人」
「ん? ライは着いてこないのか」
「俺らはここの修復作業だ。ミル、ファルーと行ってこい。ロムとチールの処理もこちらでしておく」
拠点を歩いているとたまに人とすれ違うが、ミライとイセンにとっては新しい気付きがあった。ライが同行している間は全く陰口が聞こえない。
「じゃあ、ここで一回ラックワイト、ライ、ティラーとは別れますか」
「サーマン少尉! 時間があれば参りますので待っていてください」
「またノアを発つ際にはよろしくね」
「お、お別れか。また今度な」
三人と別れてしばらくすると、円柱型の不思議な乗り物がある。これで星と行き交いするのだろうか。
「よし、着きましたね。我々正規の軍人は特に制限なく乗れることが出来ます。まあ、この拠点の場合は民間人なんて来ませんけどね……」
「自分達は正規の軍人なんですかね……?」
「一応手続きはブルーピットの中で済ませてきたので大丈夫です。ちなみに今回はミライさんとイセンさんの運んできてくれた、ハイブリッドのインスヴァイトも持ってきます」
問答しながら席に着くジャンダルムのパイロットの面々。先の襲撃では軌道エレベーターに損傷は無いようだったが、ノアの陣営が必死に防衛したのか、元々攻撃にさらされなかったのか。
「ちなみに、ノアだと懲罰部隊だろうと何だろうと歓迎されてますよ」
「軍の中のが陰湿なのか」
「まあ、そうっちゃそうですね……」
「そういえばなんで戦争なんかしてるんだ?」
「突然ですね」
機内アナウンスが出発を告げる。乗った感じは新幹線や飛行機と大差がない。
「先の戦いで敵を撃墜することもあってな。きっかけくらいは知っとこうとな」
「最初は資源競争からですね。今や復讐の為に戦う人もだいぶ増えてしまいましたが」
「自分は仮眠とります仮眠ー」
自分はもう会話しないよっということを示すミライ。中々に気を休める機会もなかったので、どっと疲れが湧いてきたのだ。
「そういえば下は多分朝方になるので、皆さん寝てた方がいいかと思います」
サーマンの言葉を聞き、他の人らも眠りにつく。ただ、ノアに到着するまでの時間はミライの予想を大きく超え、地球であったら一回は日が暮れているか、それ以上は経過した。
今度は到着を告げるアナウンスが機内に響いた。
「ミライ、どうやらもう間もなくと言ったようだぞ」
「むー、もう食べられませんねー」
寝言のように呟くサーマンをイセンがじっとり睨む。
「サーマン、貴様が起きているのは知っているぞ」
「着いたんです? 久々に重力を感じますね……!」
機体が着陸し、前方の搭乗者はぼちぼち降り始めている。ミライ達もそれにならって荷物をまとめ、外へと出る。身体検査の後、晴れてノアの市街を歩くことが出来た。
「ここはノアの都市ヨルクです。久々に来ましたが、観光業も盛んな場所ですよ。何が有名かは特に知らんですけど」
「徴兵されたと思ったら戦ったり休んだりで忙しいな」
「母星にいる間は基本的に休息と考えてもいいですよ。敵も殆ど攻めてこれないですし、住んでる人も富裕層が多いですね」
代わりに人工衛星の方は……と言いかけて話すのをやめるサーマン。
「んじゃ、折角だし休ませてもらうか。ライやラックワイトには少し悪いがな」
ヨルクは日差しが強く、海岸にヤシのようなものが植えられている。軌道エレベーターの施設を抜けると出店通りが出来ており、通りの先には摩天楼が連なっている。というより、軌道エレベーター自体が観光名所のように扱われているのだと感じる。
「観光しましょうと言ってなんですが、私はミルミドとミライさん達の乗ってきたハイブリッド型の引き渡しをするので、ファルーと遊んでやってください」
「ちょ、遊んでやれとはどういうことだサーマン」
「そういうことです。勝手に解釈してくれて構いませんよ」
「と、言うわけで私も失礼するわね」
休憩所のようなところで会話していたが、サーマンとミルミドは裏に消えていく。
「ファルーさん、ここら辺の事って知ってます?」
「俺はあまり詳しくないな。生まれはノアじゃないんだ」
「それじゃ、今から何か探してみますか」
とりあえず施設を後にするミライ達三人。と、ここでイセンがあることに気付いた。
「ところで、お金というか通貨って円か……? 違うよな……」
「違いますよ。エルと言う通貨を使いますが、俺もあまり手持ちが無いんですよね」
ファルーとイセンの顔が青ざめていくが、ミライはサーマンと軌道エレベーター内で言われたことを思い出す。
「自分はサーマンさんからイセンさんに多少渡しときましたよ、って言われましたよ」
「そうなのか?」
ミライに言われて服のポケットを探すイセン。ごそごそと探っていると、財布のようなものが入っていることに気付いた。
「サーマン、いつの間にこんなことを……」
「いくらぐらい入ってますかね?」
「よく分からん塔の刷られた札が数……十数枚とかか? 所で、何日くらい滞在するのだ?」
「三日くらいを見積もってくれれば良いと伝えられてます。にしても手持ち金がスゴいですね……」
出店の食べ物の相場を見て、とりあえず普通の感覚を掴もうと思うイセンだった。
「よしっ、早速何か食べ物買いましょうイセンさん!」
「待ちきれなさそうだなミライ。じゃあ、出店から見ていくかー」




