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スペースライフ13

「眠れん……」


ミライがロムと艦内を歩き回っていた頃、イセンは仮眠を取ろうとしていたが、眠れずにいた。


「兄は俺の事をどう思っているのだろうか」


イセンには同じくインスヴァイトに搭乗していた兄がいた。今や二度と会うことは出来ないであろうことを考えると、もう少し会話を交わしておくべきだったかと思わないでもない。


「まあ、今さら遅いか……」


眠れなくとも目を瞑りベッドで横になるイセン。



ようやく眠りについたかという頃、そこそこの震動がブルーピットを走る。


「地震! は有り得ないよな。まあ、寝てれば収まるか」


眠りかけたが現実に戻されたものの、また眠ろうと寝返りをうつイセン。


「パイロット各員、現在敵と交戦している。出撃準備をお願いします」

「ん? 敵襲だったか! ふむ……」


一人の時はテンションが低いイセン。とりあえず格納庫に向かっていると、ウェンの近くで他のパイロット達と出くわした。


「ミライ、状況に気づいたか。ウェンに乗るぞ!」

「イセンさん、無茶はダメですからね。私も行ければ良かったのですが……」

「まあ、お前の代わりに俺とミライがいるのだろう」


出撃した先では味方と敵が入り乱れていた。一見優勢であるようだったが、そんな中一人の味方機が愚痴をこぼす。


「上のよこした救援!? ダ、ダメだ。ジャンダルムの懲罰部隊なんかじゃ……あいつはきっと倒せない……」

「初めから俺らは戦う予定だったらしいな。不本意な上に不愉快だ。敵にも味方にも歓迎されないとは」


早速士気が下がっていくイセン。とりあえず敵と味方の多い場所に一歩離れた位置から射撃を送る。


「ジャンダルムの新兵? 良い腕……いや、偶然か」


周辺に気を付けつつ着実に敵機を撃ち抜いていくが、いちいち味方の小言が耳につく。わざわざ聞こえるように言っているのがタチが悪い。


「俺らと同じ機体に乗れるのか。まあ、下手に古い機体で足を引っ張られても困るが。ん、何だあの機体! ぐおっ」


最小限の動きで味方の射撃をかわし、胴を右手のダガーで一突きにした機体は、三本杭が上から見て三角形の頂点に配置したようにに並んでいる。それはやや灰色がかった太い四肢を持ち、その機動を補助するように背部に他より大きめのブースターを付けている。

ノア正規軍のウェンを片付け、次の獲物の品定めと言わんばかりにアイカメラを光らせてイセンを見ている。


「サーマンさん、イセンがバイル・リールと交戦しています! 相手の機体はミリオンアーツ……くっ!」


敵の射撃がファルーの右肩に当たる。動きはするものの若干鈍い。サーマンに状況を伝えるが、自分の身を守るのに手一杯と言った感じだ。


「なんか雰囲気が違うじゃないか……敵の新型か何かか?」

「半分正解ってとこだ。特別なのはこの機体もだが、俺も舐めて貰っちゃ困る」

「随分濃ゆいのが出てきたな。だが、そちらの数的不利は変わらんぞ」

「この劣勢、俺とレージがいれば押しきれなくもない」


余裕そうにするバイル。挨拶とばかりにイセンの銃口が光り、一発。


「当たりませんっと」


当然のようにその巨体を翻す。接近してきたその機体は、右腕と左腕でサーマンの機体を挟み込む。


「ぐっ……」

「俺の機体ね、膝にもビームの発射機構が付いてるんですよ」


今度はミリオンアーツの膝に当たる部分が光り、発射間もなくと言った所。


「死んでたまるものか!」


ホールドされてる状態から、足で膝を蹴って照準をずらす。ずれたビームはウェンの両肩に着弾する。


「あばよ、右腕はくれてやる」


着弾した際に右腕が外れ、一瞬の緩みを利用して咄嗟に抜ける。


「そんな避け方するかい。まだこの機体での実戦経験が浅いか」


今度は攻勢に転じようとするイセンだったが、若干故障した左の腕で銃を構えると、既に相手は太い右足で横蹴りを繰り出していた。


「ぐっ……」


体勢が不安定な中、緩和しきれない重圧に動くことが出来ない。


「もう一度、脚部ビーム砲。今度は当てますよっと」


二門のビームは無理やり体を捻ったイセンのウェンの、両足に着弾する。


「どうせ空間戦においての足なんて、後の修理が面倒なだけだろ……」


メカニックを泣かせるようなイセンの一言。


「うちの親父のような足癖の悪さだわ」




着実にイセンの機体が削られていく中、ブルーピットから新たな機体が発進しようとしていた。


「サーマン、出ます」

「おい、サーマン少尉! まだ十分に戦えないだろう!」


サーマンは格納庫に残っていた赤い小手を持つ機体、ダルクで戦域に出る。


「今のイセンさんだって満足には戦えませんよ。だから私が出るのです、ラックワイト中尉」

「無茶苦茶だ……」


小手からは黒い刃の形状をしたビームが伸びている。

開発初期の機体は指が複雑な動きを出来ないので、武器と機体の一体化の構造になっている事が多い。ダルクも例に漏れず、その内の一機だ。


「これで悪足掻きはおしまいかね」

「待ってくださいよバイルさん。この私と遊びませんか?」


この腕が負傷した状態で、と心のなかで付け加えるサーマン。特徴的な機体の持ち主……バイルとは過去に交戦した経験があり、数的有利の今の内ならば上手く持ち掛ければ撤退するかもしれない。もちろん勝負を仕掛けてきたら無理矢理に突破するしかない。


「あんたは赤い小手の……任務は終わりか?」

「ああ、終わりましたとも。とはいえ、今の任務は以前討ち漏らした敵を討つことではないので、この基地の攻略を諦めてくれればこちらも無理に深追いはしませんよ」


会話に気を取られている隙になんとかその場を脱するイセン。バイルは歯牙にもかけぬと言った感じでサーマンから目を離さない。


「……残念ですが、勝てない勝負はしない主義なので。今度も退かせて貰うよ。各員に通達! これより撤退する!」


九死に一生を得たイセン。バイルから逃げる中で敵機と組み合っている味方を発見する。この距離なら敵機を狙い撃つことも不可能ではないだろう。


「余計なことをしてくれるなよ、懲罰部隊。お前は他の仲間の面倒でも見たらどうだ?」


味方機の一言で、遠方へと別れたミライの方をちらりと見やる。


「人をあまり見くびるなよ。少し大人しくしていろ……」


先程の緊張から解き放たれたイセンだが、ミライと向かい合っている機体は、ミライではなく明らかにこちらへと照準を定めているように見えた。


「おい、右を見ろ! 敵もろとも撃たれるぞ、お前ら離れろ!」

「え、あ、あいつはレージ・ルエル……くそっお前が代わりにい!」


一足先に距離を離すイセンに手を伸ばす味方も、右腕の欠片を残して敵もろとも爆散した。



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