スペースライフ12
「私も模擬戦の経験自体は多い方ではないけど、ミライ君はほぼ無いもんね。もちろん勝つ気でいくのでよろしく!」
もう何回目になるのだろうか。ミライが仮想機体の動力をつけ、ミルミドと戦闘する。
「先の戦いで見せてもらいましたよ! ミルミドさんは射撃の腕が良さそうでしたね!」
そう言いつつミライはミルミドとの距離を詰めていく。
「ミライ君みたいに高速で接近して戦闘を仕掛ける人っていなくはないけど、回避しながら詰めてくのって大変じゃない?」
ひとしきり喋り、まあエース級の人には近接が好きな人のが多いんだけどね。と付け加えるミルミド。ミライが前に出るのに対して、後ろにブーストを吹かしながら、器用に射撃を行っている。
「盾があるので壊れないうちなら多少の無茶は……!」
ミライは銃をしまい、左手に盾を構えて前進していく。微かに漂うダストが機体が通った後に道を作る。
「甘いよ。ここからが大変なのさ」
ミルミドの撃ったビームが盾の端を掠める。バチバチと掠めた場所が焼き焦げている。あまり耐久力は高くないらしい。
「筋が良いね。本当に。だけど、戦時中は大器晩成なんて許されないんだ」
「戦争さえなければこうして戦うこともなかったです。まあ、戦いの練習ではありますけ、ど!」
ミライは頼りない盾を前方に投げ捨てた。ミルミドの射撃が当たった盾は、赤い花火のようだ。
「一秒に一発ってところですかね……ますます詰めますよ!」
これまでウェンを操作してきた中で、ウェンのライフルはそこまで連射が効かないことを知っているミライ。右手に剣を抜き、両手持ちで先程投げた火花散らす盾を切り裂いて、前に進む。
「良かった……盾が切り裂ける強度で本当に……」
格好つけて盾に切りつけたは良いが、壊れなかったら格好つかないので、一安心するミライ。
「息をつくのは勝敗が決まった後ですよ!」
と、突然被弾していないにも関わらず視界が揺れる。ミルミドの方も何かに動揺したのか明後日の方向に射撃を送る。
「今のは……?」
「少し嫌な予感がする、途中だけど一旦中止して外に出ましょう」
ミルミドに促されて訓練室に出ると、ラックワイトの声が響いていた。
「パイロット諸君に告ぐ、至急機体に乗って発進せよ!」
どうやら先程の揺れはブルーピットの防護壁に敵のライフルが直撃したらしい。途中で合流したファルーに説明を受ける。
「全く、どういうことだ、数日前はノアの基地があった場所だって言うのに、ヌーフとノアの交戦地になってやがる。上層部はどうしてたんだよ!」
想定外の出来事にファルーがこぼす。だが、上層部もこの事は折り込み済みと言うことがすぐに分かる。
「ミライ、状況に気付いたか。ウェンに乗るぞ!」
格納庫で出くわしたイセンも出撃する。ファルーは稼動してなかった一機で出撃するらしい。
「敵は……あそこか!」
遠くにウェンとトロップが複数機で組みあったり既に放棄されてる様子が見える。一見するとトロップの数が少ないようだが、放棄された機体はウェンが多数。相手は少数精鋭なのだろうか。こちらに気付いた味方の通信が耳に入る。
「上のよこした救援!? ダ、ダメだ。ジャンダルムの懲罰部隊なんかじゃ……あいつはきっと倒せない……」
「初めから俺らは戦う予定だったらしいな。不本意な上に不愉快だ。敵にも味方にも歓迎されないとは」
イセンはミライに言葉を残して散開していく。敵も味方も数が多い。下手に二人で動かない方が良いと踏んだのだろうか。
「だったら敵に歓迎される努力をしなよお!」
さっきのイセンの言葉に返すように、敵のパイロットの通信が届く。声に反応して辺りを見回すと、両手剣を手にして叩き付けるような一撃を繰り出す機体が見える。
「いきなり何してくれるんですか! 言う相手が違くないですか!」
半月を描くように敵の背後を取ろうとするミライ。よくよく敵機を見るが、頭の杭がモヒカンのように縦一列に突き刺さっていた。ミライは杭の数で敵か味方か判断できるとサーマンに教わっていたが、一見何本あるのか分からない。ここまで来て味方である訳ないのだが。
「あれ? さっきの発信者じゃないの? まあいいや、終わった後の撃墜スコアはどれもウェンだしい」
後ろを取ったミライが剣に手を掛ける前に後ろ蹴りでウェンを蹴っ飛ばす。
「あれ、中々重いね君。僕みたくエース級なのかな?」
完全に受ける体勢が出来てなかったミライに、機体を蹴飛ばした謎のパイロットが迫る。
「何なんですかエース級エース級って! こちとら新兵ですよ!」
「エース級ってのは僕が毎日焼き肉食べ放題になる不思議な称号だよ」
再び馬鹿正直に正面から剣を叩き付けてくる敵機。今度はミライも両手にダガーを構えて防ぐ。
「剣が重い……!」
「雑兵なら叩き飛ばしてカノンで消し炭にしてるんだけど、中々崩れないねえ」
そう言うと剣をしまい、見せびらかすように背部から大口径の砲台のような物を取り出す。
「隙が大きいかわりに多少ずれても致命傷になるんだ、それ!」
ふとエース級の敵機は、狙いを遠くの味方機に定めてそのカノンを撃った。
「人が死んだ……」
二機のウェンが一機のトロップを相手取っていたところに着弾し、直前で反応した味方一機を残して敵も味方もまとめて機体が煙を吹き、爆散した。それを確認してカノンをしまうが、悠長にその動作を見逃すミライではなかった。
「見てくれたかい? っていきなり斬りかからないでくれよ! くそっ腕が!」
「いきなり人を殺しておいてよく言いますね!」
接近し左右のダガーを振り下ろす。胴体を斬られる前に無理やり右手で払いのけたが、当然その腕は寸断される。
「ん? 味方から連絡が。ハイハイ? え、撤退!? よしよし帰ろう」
激昂して何かしらの攻撃をしてくると思ったが、一転してミライのウェンの空いた胴体を蹴り飛ばし、追いかける間もなく去っていく敵軍エース級。あらゆる意味でこんなものなのかと、呆気に取られているとイセンから連絡があった。
「サーマンのやつ、流石と言うべきかエース級? と言うのは凄いのだな!」
「そうですか? 相手のエース級はただただヤバそうな奴でしたけど」
「そうか……ミライの見合ってたのがエース級か。レージとかいう名前らしいぞ」
「なんで知ってるんですか?」
「パイロットの断末魔だ」
かくしてジャンダルムの面々には、一時の平和が訪れる。




