スペースライフ11
「話したいと言ったが、提案があるのだ」
「提案? 提案なら……話を聞いた方が良いんですかね……」
悩みつつチラチラとミライの方を向いてくるファルー。こういう意思決定の時はサーマンが決定するから、案外決断するということに慣れてないのかもしれない。
「まあ、聞いてみても良いかと思いますよ」
「了解です、ありがとうございます」
「聞く気になったかな?」
「そうですね……話だけでも聞いてみましょう」
「提案というのは、君のウェンの右腕と私のヌーフ正規軍量産機トロップの故障を直すのを手伝いたいと言うことなのだ」
ロムは機体操作には秀でているが、修理の方はどうなのだろうか。ミライが思いを巡らしていると、今度はファルーが先に答えた。
「修理? トロップはともかく貴方がウェンを修理するメリットはあるのですか? あと、敵であるあなたにウェンの修理が出来るのですか?」
「出来なくはない。メリットは君たちと同じだよ。機体のねぎらいさ」
かくして、ロムを操縦室に連れていった。
「え、ロムさん!? ファルー、ミライ、どういう風の吹き回しですかね?」
「出歩いて良いと言ったではないか」
「呼んでくれれば開けますよと言ったんです」
「ロムさん曰く施錠はもっと厳重にした方が良いそうです」
「なるほど。ベッズやダルクと同じで年季のはいったブルーピットには難しい話ですね……」
サーマンが遠くを見つめて呟く。
「サーマン少尉、ロムは先の戦いで欠損した二機の整備をしたいと言ってます」
「それは……正直ありがたいですね。ライとティラーと共に整備して貰えれば大丈夫でしょう」
「言い出しこそしたものの、敵ながら安易な奴だ」
「万一ヌーフから利敵行為と見なされても責任はとりませんが」
必要なやり取りを終えてロムは通路に消える。ミライも帰ろうとしたところでサーマンに呼び止められる。
「あ、ちょうどいいのでミライさんに朗報です」
「脱宇宙食ですか?」
「そうではないのですが、私、明日から現場復帰出来そうです。訓練室で私の本気と戦いたい場合は気軽に話しかけてくださいね! イセンさんにも言っておいて頂けるとありがたいです!」
なーんかゲームをクリアした後に出てくるエクストラボスみたいなことを言うなあと思うミライ。
「あ、おめでとうございます。本気のサーマンさんですか、一度一対一でお手合わせしたいです」
「一対一も戦い方を覚えて損はないですからね。そろそろタッグ以外で戦って欲しいと思っていましたよ」
密かにやる気に燃えるミライ。今日は主にチールとロムの事だが、ヌーフの廃棄施設周辺を通って色々起きた。捕虜というが、いつの間にか軟禁も解かれていて自分らと変わらぬ扱いなのでは? ひょっとすると見えないところで警戒しているのだろうか。
「そうそう、ミルミドやファルーと戦ってみてもいい経験になると思いますよ。経験は多いに越したことはないですからね」
「そうですか? じゃあ、二人にも声をかけてみようかな。今日はまだサーマンさんはダメなんですよね?」
「出来なくもないですが、全力は出せませんね。今のファルーはある程度心を開いてそうですし、ちゃんと戦ってくれるでしょう。先の戦いで思うこともありそうですしね」
先程のことを思い出すように目をつぶって軽くうなずくサーマン。
「明日が待ち遠しいですね」
今は地球だったら夕方くらいだろうか。色々な部屋を散策していると、ティラーが時計の時間を弄っていているのが見える。時刻は6時を指している。
「お、これを見てるのか? いよいよ異星に着くからな。いや、俺たちにとっては母星なんですけども。ミライは今日何するんだ? 悔いの無いよう散策か?」
「じゃあ、今日はミルミドさんに話しかけてみます」
「毎日俺らをとっかえひっかえなんて、恋愛ゲーでも攻略してるみたいだな」
「ちょっと、人聞きが悪いですよ」
ノアにもそんなものがあるのかと心の隅で思ったミライ。
「恋愛ゲーだったらサーマンさんは難易度高そうですね……」
「お褒めにいただき? ありがとうございます。そういえば、ティラーのお陰で本部と通信が取れるようになりました。計画は変わらず今から三日後くらいに我らの支部へと帰ります」
相変わらず神出鬼没のサーマン。不意打ちの驚きは会話の内容に打ち消された。ここまで来るといよいよ緊張感も増してくるというもの。
「本部の方ってどんな人なんですか?」
「やる気がなくて、性格の悪いくそ野郎ですよ。それではまた夜に」
「お、お疲れさまです」
ミライは操縦室を後にし、恐らくミルミドが居そうな食堂に行く。
「お、ようミライ。今食堂の時計も替えたところだ。イセンと一緒じゃないなんて珍しいな」
「最近はこの艦にも慣れてきましてね」
ティラーは今日はせわしなく歩き回っている。
「俺はファルーのウェンの面倒を見なきゃいけないからなそろそろ行くぞ。敵星のパイロットをライが統括してるのは正直怖すぎる」
せかせか動いているティラーは周りを見回して恐らくやることが終わったのを確認したのか、格納庫の方へ消えていった。
「あら、ミライじゃない。今日はイセンと一緒じゃないのね」
「みんな同じ事を言いますね……今日は一緒じゃないです。それよりミルミドさん、自分と模擬戦をしてくれませんか?」
「え、私? ……まあいいわ。じゃあ訓練室に行きましょう」




