スペースライフ10
無事に敵のパイロット二人を確保出来たジャンダルムの面々。操縦室に集まっていたが、十人も入るとなると多少狭い。
「それで、あなた方はヌーフの正規軍なのですか?」
「そうだ。私はロムでこっちがチールだ。所属は第十小隊」
ロムと名乗った男は四十半ばくらいで長身に坊主頭が力強い。チールの方はまだ若く、二十歳を過ぎた辺りだろうか。こちらはひょろっとした体つきをしている。
「ここの宙域には何の作戦で来たのですか?」
「それは答えられない」
「逃した二機も所属小隊は同じ方ですかね?」
「それも答えられない」
そう応じるロムからはこれ以上何をしても無駄だという意志が見えてくる。
「全然見えてこない! どうすれば良いですかね……とりあえず、空き部屋に軟禁します。良いですね?」
「かまわない」
「ロムさん!」
これまで口を閉じていたチールが口を開く。
「すいませんでした」
「しょうがない。数が多すぎた」
「とりあえず、こっちですよ」
サーマンが誘導し、チールとロムが付いていく。何故かライもサーマンの横にいる。ミライが見てると睨み返してきた。
「帰るなり捕虜の処理でゴタゴタしてしまったが、サーマンの代わりにお礼を言おう、ありがとう。宇宙艦の中ももうすぐお別れだ」
「それじゃあ本格的にノアの正規軍の人達と会うことになりますね」
「ああ、そうだな」
あまり嬉しそうではないラックワイトにミライがちょっとした冗談を挟む。
「そんなに気乗りがしなかったら、地球に永住した方が良かったかもしれませんね」
「確かに、それは案外名案だったかもしれんな……。しかし、ここまで来たら今さらもうどうすることも出来んな」
「ミライ、イセン。感謝する」
ファルーがペコリと頭を下げる。顔を上げた時に見えた目は少し悲しそうだった。
「交戦した相手が悪かったんですよ、きっと。あの人とっても強そうだし、もしかしたらまだ何か隠してたのかもしれませんし」
「そうだな。ありがとう。俺はいつもの場所に帰るよ」
いつもの場所とは格納庫のことだろうか。ミライは戦いも終わったし、自分の使ったウェンの様子でも見ようとファルーに付いていくことにした。イセンは一足先に自室へと帰ったようだ。
「わざわざついてきても何もないと思いますが……」
「戦い終わったので、ウェンをねぎらおうかと」
「面白い考え方ですね。まあ、一番ねぎらうべきなのはそこの左腕が撃ち抜かれたヌーフの機体かもしれないけど」
ミライが目線を移すと、左腕が千切れている機体がある。ご丁寧に取れた左腕は機体の足元に横たわっていて、それぞれの断面はキラキラと光っていて美しい。
「あれが好きなんですよ」
「あれですか?」
ミライはヌーフの機体に刺さっている電極のようなものを指差す。
「そうじゃなくて」
ファルーが予想外の答えに軽く笑いをこぼし、あらためて指差し直す。
「あの光ですよ」
「光っているのは断面ですよね。どうしてかは分からないですけど、確かに綺麗ですよね」
「あれはタイパーを加工して作った物質の光だよ。戦闘中に見たかったなー。目を奪われて隙が出来てしまうかもだけど」
そう言えば、ベッズもダルクもウェンも、装甲の下が輝いていたような……と、今更ながらにミライは思った。
「ミライが指差したのはきっとオペレーションホーンのことだね。あれがあると格段に操者と機体の一体感が増すんです」
「少年と言ったが、青年か……二十歳は過ぎているのかな、君たちは?」
二人が会話に夢中になっていると、後ろから男の声が掛かった。振り向くミライと後ろに飛び退いて拳銃に手を掛けるファルーだったが、張本人のロムは特に気を張る様子もなく、話し掛けてきた。
「話の前に手を上げてください。何か危険なものは持っていませんか?」
何か危険なもの! ファルー自体咄嗟に取ったの状況の上、このようなことに全く慣れていなかったため、どこかふわっとした言い回しになってしまった。とにもかくにも目の前の男は素直に呼び掛けに応じた。
「危険なものか……軟禁される前に預かられたので、ろくなものは持っておらんぞ。サーマン少尉から船内を歩く許可も貰っている。助言を預けに参ろうとしたら、楽しげな会話が聞こえてきて、混ざろうかと思ったところよ」
楽しげな会話に混ざるのではなくぶち壊しに来たのでは? とミライは思ったが、結局口には出さなかった。
「あなたの弁明を聞く気はないです。申し出はありがたいですがサーマンさんに報告するので、大人しくしていてください」
「暴れるつもりも暴れたつもりもないのだがなあ。大人しくしているから会話に混ぜては貰えぬかな」
ミライがどうやら本当に会話に混ざりたいだけなのかと思ってきたところで、ファルーが口を開く。
「ミライさん、この人全く人の話を聞こうとしません。話になりませんね!」
今度は若干プリプリしているファルー。楽しげな会話とはこういうことか? と考えるミライであった。




