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スペースライフ6

「うーん、片腕だと武器の操作は難しいですねえ。でも、回避優先し過ぎるといつまでたっても当たりませんね」


翌日、朝食後にサーマンはイセン、ミライと訓練室で模擬戦闘を行っていた。といってもサーマンは左手を負傷している中、そこらを漂う無機物相手に時折射撃をしつつ、二人の攻撃を回避していた。


「やっぱり動く的を狙った方が面白いですね」


後ろを追いかける二人を見て、不穏な一言を呟くサーマン。


「誰が的だ! 行くぞミライ、左から回り込んでくれ!」

「了解です、今度こそ当てちゃいますよ!」

「誰がも何も、今の私がまさしく的なのですけどね~、ふあぁ、まだ朝早いので眠くなります」


あくびをしつつ右手とまだあまり動かせない左手で操作するサーマン。


「居眠り運転は看過できん!」

「お、おっとお。目覚ましありがとうございますイセンさん」


イセンの放ったビームがサーマンの脇を通り、近くにあった隕石を抉る。削れた小石が僅かにサーマンの仮想機体に振りかかり、パラパラと音をたてて飛び散る。


「よそ見もダメですよ! こっちは横から撃ってるわけですけど」

「っと! ……良いですねえ、自分の動かしたいように動かせてるって感じです」


今度は横腹を狙ったミライの一撃が掠める。いましがた穴の空いた隕石を蹴り飛ばし、進路を変えてなければ当たったかもしれない。

サーマンはデブリ帯を高速で駆け抜けていく。そのスピードは昨日のミライとイセンなら振り切られていたであろう。しかし、サーマンの飛行を参考にしてただ縫って飛ぶのではなく、機体の勢いを殺さずにデブリ上を駆けて行くことで、何とか食い付いていた。


「ミライ、そのままデブリ帯を外れて並走してキープ出来るか」

「ただの宇宙空間なんてどんとこいです!」

「よし、機会を見つけて射撃を合わせるぞ」


口でいうのは簡単だが、高速で移動するサーマンに着いていくのに悪戦苦闘するイセンとその廃棄物が密集するエリアを撃ち抜かなくてはならないミライの双方が息を合わせることは難しかった。それこそ、最初の一撃が一番惜しかったと言っても過言ではない程に、サーマンには二人の射撃を紙一重で避けられてしまう。


「お前、わざと嫌らしいところを飛んでいないか」

「折角だしベストを尽くそうかと思いまして。仮にも私の代わりを務めて貰うわけですしね」


こうして、三日目の昼は一見なんの成果も得られないものとなった。


「はい、宇宙食ごちそうさまでした」

「イセンさん」

「なんだサーマン。何かインスヴァイトのコツでも教えてくれるのか」

「いえ、教えませんけど」

「正直戦ってみて聞きたいことが増えたんだが」


イセンがサーマンの席の横に立つのをミライは眺めつつ、早くまた訓練したいなーと思っていた。


「諸々の疑問は夜までに決着がつかなければお答えしましょう」

「ほぼ答えてもらうことは確定してないか?」

「いえいえ。あー、コツでは無いんですが、イセンさんは精密な射撃をデブリ帯を駆けることと両立できていないように感じました」

「ダメ出しされる立場と分かってはいたが、割と心に来るな……」

「そしてミライさん」

「あ、はい」

「ミライさんは逆に、最初のデブリ帯の潜行はだいぶ優れてましたが、あくまでイセンさんと比べると、射撃はあまり正確ではないように思います」

「な、なるほど」


サーマンは二人にそう言うと、返す言葉を聞くわけでもなく訓練室へと向かっていった。


「イセンさん、これってデブリ帯から追う役と横から援護する役を入れ換えろって意味ではないでしょうか」

「ふむ、今度は試しに入れ換えてみるか!」


話を合わせたイセンとサーマンは、それぞれの思いを胸に訓練室へと向かう。



「来ましたか、私はやること変わらずここを飛んでいますよー」

「その若干余裕ぶった態度をひっくり返してやる」


すでにコックピットで機体を動かすサーマンに早速機械を起動するイセンとミライ。


「ミライ、追跡は任せたぞ!」

「イセンさんも、援護お願いしますね!」


午前と引き続きL字を取ってサーマンを追い詰めていく作戦の二人。先程サーマンから言われたことを参考にして、担当を逆にして迫っていく。見込み通り、サーマンのことをミライは付かず離れずで着いていく。


「これはこれは……背中に注意を向けなければ撃たれてしまいそうです……ね!」


デブリの間を縫って進みつつ、時折付近のデブリを蹴り、ミライの妨害をするサーマン。


「余裕がなくなってきたな! 失礼する!」


デブリ帯を抜けて並走しているイセンがライフルを乱れ撃つ。その様にサーマンは内心胸を撫で下ろす。やはり、後ろをデブリで遮断したのは正解だった。このタッグに後ろと側面からの射撃を許せば、もしかしたら蜂の巣になっていたかもしれない。


「まだまだ訓練は続きますよ! もっと高みを!その先を!」


柄にもなく熱くなるサーマン。今度の訓練はまさに紙一重の攻防だった。


「よし、ミライ! 俺が合わせる!」


再び乱れ撃つイセン。


「何を、朝から続く戦いの中で集中が切れてるとでも思っているのですか! 今度も彼の進路を塞いだ上で、後方からの射撃すら来ていないじゃないですか!」


言葉での揺さぶりは許さないとばかりにサーマンはイセンに自分の優位性を説く。


「これはサーマンさんの油断でも慢心でもないです。自分らの作戦勝ちです! 何が言いたいかというと、サーマンさん! こっちを見ろ! 」


幾度となくチャンスをギリギリ取り逃してきたイセンとミライであったが、今回はモノにした。

サーマンが操縦していたウェンは、ミライの一刀のもとに首を落とされた。


「馬鹿な……突然前方に……いや、分かりましたよ貴方達の作戦が……」


二人はしっかりと協力してサーマンを討っていた。

イセンは、サーマンの視界にあるデブリだけは残し、妨害に使用したデブリや邪魔なデブリは撃ち抜いていた。

そして、サーマンの機体にスピードをあげて近付いたミライは、最後に目の前に立ちふさがるデブリをライフルで破壊、トップスピードでサーマンのもとに駆け抜けてライフルを捨て、手持ちの剣で後方から斬りかかったのだ。


「やはり。あなた方には期待しといて正解でした。明日より、イセン、ミライ両名が周辺宙域での哨戒任務につくことを許可します! 私は二日酔い止め飲んどきましょう……」

「微妙にしまらないではないか!」



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