スペースライフ5
「ミルミド曹長、ファルー軍曹、怪我なく帰ってきてくれて良かったです。ミライさん達を実地に出すのも少し急いだ方が良いかもしれませんね……」
「逆に何をすれば宇宙で動かせるようになるんですか?」
「訓練時間が足りてないので、まずはそこですかね。そうですね……トレーニング室の機械は同期して多人数での戦闘が可能なので、そこで私に一撃入れられれば良しとしましょう。二人が良ければ明日は一日籠りますよ」
地球で太陽がもし見えていたのならもう沈む頃なのだが、外は一日中暗く、時間の感覚が無くなりそうだ。ミライとイセンはその頃トレーニング室へと移動していた。
「機械の同期は外から操作しなくても出来ると言われてたな……」
「確かに二人で使っててくれて構わないとサーマンさんに言われましたが、ガツガツ使いますね」
「あっちからしたら俺らを早く戦線に出したいだろう。となれば今は訓練室で操作に慣れた方がよいだろう」
そう言うと、ささっと機械の中に入っていくイセン。ふーっと息を吐いてミライも隣の機械の扉を開く。
「何します? 二人でデブリ帯観光でもしますか?」
「案外それも練習になるかもしれんな! ちょっとやってみるか」
「マジですか。承知しました」
ミライの訓練用ポッドとイセンのものを同期し、周辺宙域をデブリ帯にセットする。訓練だけ手慣れてきてもなあとミライは思ったが、ここを突破しないと次に進めないので、今はバーチャルデブリデートを楽しむことにした。
「……イセンさん、ぶつかったからアラート鳴ってますよ」
デブリの隙間は大体機体二機分から三機分くらいはある。針に糸を通す繊細さが必要なわけでもないが、それなりに慎重な操作を心掛けないと投棄された廃棄物にぶつかってしまう。
「振動をオンにしているとかなり揺れるな……」
「確かにキツいですけど、酔わないでくださいね」
「なんのこれしき……!」
提案してから大体三十分間、二人がぶつかった回数はそれぞれ一回ずつだった。自分って割りと上手いのではとひそかに感じた二人だったが、今度の提案ではそれが間違いだったと痛感することになる。
「じゃあ、今度は模擬戦でもしてみませんか?」
「ぐいぐい攻めるなミライ」
「元はと言えば、練習しようって言ったのイセンさんですからね」
「それはそうだが……」
宙域をデブリ帯から宇宙:広域にセットするミライ。
諦めてイセンはライフルの射程限界まで機体を離す。
「これで良いか?」
「ありがとうございます! それでは三、ニ、一!」
カウントダウンののち、イセンは左へ、ミライは右から回り込むように機体を飛ばす。
「ぶつかるじゃないか、危ないぞミライ」
「ぶつかる前に決めたい! 当たってください!」
ライフルで射撃をするミライ。だが、特に回避する必要もないような場所にビームは飛んでいった。
「む、案外難しいのか? 私からも行くぞ! ミライ!」
イセンも何発か射撃を行うが、これもミライのウェンに掠りもせずに虚空へと消えていった。
「ミライ……」
「はい」
「あの遠くの隕石に止まって撃ってみてくれ」
「やってみます」
百メートルほど先にある、機体程の大きさの隕石にバスンと一発撃った後、当たってないのを確認してもう二回撃つミライ。
「あ、当たりましたよ……」
「今度は俺があの岩に撃つ。行くぞ……」
そういって指差したのは、同じく離れたところにある機体程の隕石だった。イセンが撃つと、ビギナーズラックか素質があるのか、初弾から岩の端の方を削っていった。
「こう言うのは動かない的からだと思うんだが……」
「そうでしたね、興奮して過程を飛ばしてましたね、これは……」
そうして、二人は晩御飯が出来るまでちまちまと的にできそうな漂流物を探しては撃破していった。
「今日のご飯担当は私、ラックワイトだ。不味いとは言わせないぞ……と言いたい所だったが、これからしばらくは宇宙食だ。まあ、ラクでイイネ!」
周りからひしひしと伝わる若干の不満を誤魔化すラックワイト。ライやファルーに至ってはもはや食堂にいない。
「楽ではあるけど味気無いですねえ」
サーマンがすこし寂しそうにこぼす。
「そう言えばお二方はどんな調子ですか?」
「ライフルが当たらなくて絶望してます……」
「ミルミドの腕には遅ればせながら感心していたところだ。同じ機体で同じ事をやれと言われても、十回やって成功するかどうかだろう。朝の段階だったらまず無理だったな」
「自分もです! 今サーマンさんと戦ってもすぐにやられて再スタートが目に見えているような……」
おそらくミルミド以上にサーマンは操作に長けているのだろう。それを考えるとミライの胸に焦りが募る。
「私は反撃しませんよ?」
「そんな、ついにサーマンをインスヴァイトで殴るチャンスだというのか!」
お前まだ忘れてなかったのかと横目でイセンを見るミライ。それを聞いて笑うミルミド。サーマンの表情は少し意地悪げだ。
「剣ならまだしも近接は届かないと思いますがね。まあ、左腕がまだ負傷してるんで、お手柔らかに頼みますね」
あらためてこんなに巻いて訓練を行っている意味を思い出すミライとイセン。二人は、食事が終わると自室へ戻り、明日の戦いのために眠りに就くのだった。




