スペースライフ3
結局、イセンがトレーニング室に行く頃には誰も居なかったので、サーマンとミライとは食堂で合流することとなった。その頃にはイセンの蒼白だった顔も、血色を取り戻していた。
「みんないるか?」
「お、イセンさん戻ってきたか。もう食べるところだったから、早く席に座ってくれよな」
今日の昼食はカレーのような物を各自でよそって盛る形式らしい。ミライはすっかりジャンダルム支給品のシャツが馴染んでいる。
「これから食べるにしても、ライの姿が見えないが」
「彼は操縦室で計器類の点検してますよ」
サーマンが自分のコップに水を継ぎ足しながら、イセンの疑問に答える。
「まあ、そんなわけで食べますよ」
「ああ、いただきます」
昼食を各自で食べ始める。基本的にはみんな誰かと話しているので食べるペースは早くない。そんな中、ファルーだけがガツガツと食べ進んでいるのが見える。イセンにしてみればそこそこ熱かったのだが、我慢しているのか気にしてないのか、どんどん皿が軽くなっていく。
「? 何か質問ですか。黙々と食べてて話し掛けづらかったですかね」
イセンの視線に気付いたファルーが声を掛ける。目をぱっちり開いており、よくよく観察するとミライと同じくらいには若そうだった。
「食べるのが早いと思っただけさ。その作った時間でいつもウェンの中にいるのか?」
「作った時間では大体計器を見てる人に食事を運んでますが……いつもはウェンの中にいたり、トレーニングをしたりしてますね」
話が合いそうだなとイセンが喋ろうと息を吸った瞬間、ファルーはまたガツガツとご飯の消化に戻った為、ご飯時の会話は打ちきりとなった。
「イセンさん、食事中のファルーと会話すると不吉なことが起こるので、そっとしておいた方が良いですよ。ジャンダルムの七不思議ですからね」
ご飯より飲み物が進んでいるサーマンがこそっと話し掛ける。
「本当か?」
「嘘ですけども」
「変な嘘つくんじゃない」
サーマンと話していると、いつの間にかファルーが食器を片付けに行っている。口の中を火傷とかしてないのだろうか。
「イセンさん、体調は大丈夫ですか?」
「ま、回復してきたぞ。ミライは食後にトレーニングでもするのか?」
「確かに一週間ってことを考えるとなるべく籠った方が良いのかもしれません。でも、この船のことも知りたいので、ちょっと歩いてみようかと思います」
「承知した。そういえばサーマン、私たちが哨戒忍務で乗る機体はウェンなのか? それとも乗ってきたヘリと人型のハイブリッドのやつか?」
「あー、格納庫の奥に新しいウェンが二機あるので、そちらでお願いします。ハイブリッドはベッズとダルクより昔に作られた機体なので、相手がヌーフの量産機だとしても、太刀打ちは出来ませんね」
サーマンは水を飲むのをやめて、カレーをつつきはじめていている。食堂には酔っ払い二人と介助者? のミライが残されている。
「ヌーフ?」
「戦争相手の星ですね」
「星! 星間戦争をしていたのか!」
「はい」
「自分からも良いですか? なんでノアの人達はそんな骨董品みたいな機体を回収しに来たのですか?」
ミライが横からサーマンに疑問を投げ掛ける。
「実は、インスヴァイトはある一人の技術者がメインとなって作られていたのが発端なのですが、その研究成果の一部が焼失してしまいましてね。見るなら資料じゃなくて現物をと、回収しに来たわけです」
「焼失してさえいなければな……複雑な気持ちだ」
ミライも食器を片付けに行ったので、イセンも片付けに向かう。食堂にはサーマンと、もう火傷の心配もなさそうなカレーが残る。
「ミライ、どこに行くか当てはあるのか?」
「とりあえず格納庫にあるというウェンを見に行こうかと思います」
今のところ二人が知っている場所は食堂とトレーニング室と格納庫、操縦室位だが、他にどのような部屋があるのだろうか。
「とりあえず格納庫には着きましたが、このハイブリッドなインスヴァイトとはお別れですね……」
「そんなに哀愁に満ちることないんじゃないか? たかが最初の任務のインスヴァイトだ」
「もう、なんでそんなにそっけないんですか! どうせだし手荷物とかも持っていきましょう。どれが使ってない機体か分からないので、ファルーさんがいたら話し掛けてみますか」
「そういえば最初の任務に失敗したのか、なんか少し縁起悪いな」
ミライは無言でイセンの肩を叩く。
「良いですか、私は先にファルーさん探してますからね」
その後はとりあえずウェンをしらみ潰しに探すことにした。ウェンは全部で五機あったが、ファルーがいたのはミライが最初に見に行った方だった。
「使ってないウェン? ああ、イセンさんが今みてるのはミルミドのウェンだから、その他のを適当に使えば良いよ」
「了解です。ありがとうございます」
ミライはイセンとそのことについて話すと、様子見と言わんばかりに二人はそれぞれの機体に乗り込んだ。
「イセンさん……って、今は電源入ってないんでした……」
コックピットはトレーニングの時と瓜二つだった。外からは腰に銃、脚部にダガーが装備してあるのが見えたが、実戦になると使う機会があるのかもしれない。
『付近に熱反応あり、パイロットは出撃準備を!』
唐突に、電子機器を通したライの声が響く。ミライはいきなりの展開にどうしたら良いか分からなくなったが、ファルーがウェンに乗っていたのを思い出し、電源を入れた。




