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スペースライフ1


「気になるな、この果物……」

「気になるからってどれだけ食べる気ですか」


サーマンがモグモグとサンドイッチを食べるイセンに突っ込みを入れる。その皿にはもう食べ物はなく、会話を楽しんでいるようだ。


「なんというか、砂糖を詰め込みまくったグレープフルーツってかんじの味ですね」


ミライがミルミドに話し掛ける。あれだけいたジャンダルムの面々は今やサーマンとミルミドだけしか残っていない。


「そういえば、今日は一体何をすれば良いんですか?」

「今日もインスヴァイトに乗ってくれるとありがたいですね。と言うか、元々私の仕事は敵機の監視や哨戒でしたので」

「もしや、新兵中の新兵の我々に警護でもやらせるつもりか!?」


碧眼を見開くイセン。サーマンは持っていた皿を手で弄る。


「いやあ、恐らくこの宙域は平和だと思いますよ? 恐らく貴方が思っている以上にここら辺は何もないですし」

「銀河系規模で文句つけられるなんて、何か傷付きますね」

「え? あ、すまないミライ。思ったより動揺してないことに俺はビックリしたぞ……」

「とりあえず、宇宙戦用の形態に慣れて貰わないとですね」


口元を拭いてミルミドが話し始める。イセンの緊迫した面持ちを見て、少なからず緊張してしまう。


「ついでに言ってはどうですか? 少尉。私は悪くないタイミングだと思うのですが」

「恐らく悪い知らせだよな……もう言ってくれ。心臓によくない」

「なるほど? では言いますよ。周辺警戒は私が負傷したからお願いしているのですが、数年間の地球へのインスヴァイト貸出には交換条件がありましてね」

「ありまして?」

「有能な地球人のインスヴァイト操者を連れてきて、戦争に従事させることを条件だったのですよ」

「それも腐れファクテムのせいか……」

「そうですよ」

「まあまあ、サンドイッチ食べましょうよ」


導火線が点火しそうなイセンを宥めるミライ。もはやサンドイッチに噛みついているのはミライだけだが、当人は特に気にしていないらしい。


「大体おのれらは新兵二人が参加してどうにかなると思ってるのか?」

「私は思ってないですが、上層部の考えは少々独特なようで」

「まあ、もう地球に帰らないのは確定なのか?」

「そうですね」

「あ、じゃあ自分は宇宙戦用の操作を習いたいのですが」


ミルミドは順応性がやたら高いミライとどこかに行き、食堂にはとうとうイセンとサーマンだけになる。


「サーマン」

「はい?」

「酒を飲ませろ」

「え!? まだ朝ですよ?」

「まだ平和なんだろ? 何ならお前も飲むか?」


いきなりの申し出に動揺するサーマン。ここまで動揺してるところを見るのは初めてだなとイセンは思った。



「トレーニング室?」

「はい、そうです。ここにはコックピットを模した装置があるので、中に入ってみてください」


ミルミドに案内された部屋には、縦横四メートル程度で四角形の角が削れている機械が並んでいる。どれも出入り口と思われるドアは緑の光を灯していた。


「じゃあ入りますけど、その後はどうすれば良いんですか?」

「モードCを起動し、レバーを横に倒してください。そうすると宇宙戦用の操作になるので、しばらく動かしてみてください」


だいぶマニュアル操縦なんだなと思いつつ、わかりました、と早速中に入っていくミライ。中はこじんまりとしたコックピットだけで、案外狭かった。とりあえずミライがドアを閉め、操縦席に座ると、ドアに赤色の光が灯る。


「操縦しちゃいますよー。キーの感情は勇気で」


そう呟くと、レバーを横に倒す。


「早速やってるねー。モニター室から見ているけど、宇宙戦用の移動手段はブースターが主になるから、思い通りに動かせるくらいになって欲しいですかね」


ミルミドのいるモニター室では内部の様子と、シミュレートしているミライの機体が見える。


「その機体はウェンという。私やライ達が乗っているわ。更になんと……ちょっと、腰の銃を抜いてちょうだい」

「了解です」


とは言っても撃つ的がない。どうしようかと悩んでいると、再び連絡が来た。


「的がなくて悩んでいるようなら視界右端、岩の群れに突っ込んでみると良い。ぶつけるぐらいの気持ちで行っても壊れないしやってみよう」


そう言われてシミュレート上のメインモニターをよく見ると、奥の方にスペースデブリか滞留岩か、彼方に見える。ミライは試運転ついでに機体を駆って寄ってから撃ってみることにした。

撃つとカオンというような、なんとなく形容しがたい音と共に、閃光が走る。標的となった岩は真っ黒な口を開けて、奥の星が観察できる。あ、スゴいなと思いつつ、今度は自分に向けて撃ってみる。


「げふっ!」

「ええ、ちょっと、何をしてるんですか?」


操縦している機体は無いのでコックピットを焼き貫かれる事は無いが、激しい振動がミライを襲う。またも勢いよく口を閉じてしまい、上と下の歯が欠けるかと思ったミライだった。


「その調子で動かしていてください。あ、その調子でっていうのは自分に向けて撃てという意味ではありませんよ?」


かくして、一足先にミライの機体練習が始まったのだった。






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