ブラックボックス7
「よく分かんないですねー、インスヴァイト」
イセンとティラー達の会話と大体同じような話をサーマンから聞いていたミライ。服を白いシャツと黒いズボンに着替えてサーマン、ラックワイトと共に甲板に出る。甲板は広い割には何もなく、普段から特に使う用事もないのだろう。
「久し振りの甲板ですね。ただ、外観が森と山だけで本当に何もないわ……」
「そう言えば、二人には空き部屋を用意しておいたので、インスヴァイトの中から荷物を出しとくと良いですよ」
「ありがとうございます! じゃあ早速イセンさんも連れて行きますね」
「はい、いってらっしゃい」
インスヴァイトを置いてある所にはジャンダルムの物だと思われる人型の機械があった。ミライは荷物を持ってくるついでに見学くらいはしていいかと思ったので、イセンを呼びに食堂へ戻る。
「ここで強火で焼くのだ!」
「へー、イセンさん料理するんだ」
「思ったよりノアの料理と似てるわね。」
「ノアとはなんなのだ?」
「私たちの故郷の星よ」
ミライが食堂に行くと、呑気に料理してるイセンと仲間達がいた。
「『ここで強火で焼くのだ!』じゃないですよイセンさん。いつ頃完成するんですか?」
「ん? ミライか。もうそろそろ完成するから少しだけティラー達と話しててくれ」
子供をあしらうように扱われたミライ。どうするればいいんだと思っていたら、あちらから話しかけてきた。
「おう、俺がティラーであっちがミルミド曹長だ。改めてよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
「ミライ君でしたっけ。サーマン少尉はいないの?」
ミルミドは軽く辺りを見回し、少し声の調子を下げて言った。
「甲板で話してましたよ?」
「なら良かったわ。気を張らないですむわね」
この後少し会話に詰まるミライ達。ほぼ他人同士なので当然と言えば当然である。
「出来たぞ!」
「待ってました!」
「イセンさんって料理上手いのね」
出来たのは麻婆豆腐のようだ。ミルミドに褒められて、イセンは少し自信ありげにうなずく。
「後は作っておくから、イセンに話があるんだろ?」
「ありがとうございますティラーさん」
改めて、料理を終えたイセンにミライが話し掛ける。
「イセンさん、インスヴァイトの中の荷物を取りに行きましょう。空き部屋を使って良いとサーマンさん達から言われましたよ」
「それはありがたいな。行くか」
二人は始めに来た道を戻っていく。真っ直ぐな通路のつき当たりがインスヴァイトを収納している部屋になる。
「着きましたね。自分はほとんど荷物が無いので楽なのですが、イセンさんは?」
「多少かさばるが持っていくだけだからな……ミライ、ここのインスヴァイトに興味があるのか?」
「ああ、そうですね。ここの機体には非人型の形態が無いんですかね……」
「そうかもしれんな。奴らの所ではデフォが人型らしいしな」
イセンと会話しながら他のインスヴァイトを観察するミライ。二人の機体の側にはライの乗っていた、正確にはライの操縦していたサーマンの機体がある。真っ赤な小手を両腕に着けているが、他はラックワイトの乗っていた機体と同じく黒を基調にアクセントの青色が所々に取り入れられている。ラックワイトの乗っていた機体も横に並んでいる。
「見るだけならもっと近付いても良いんじゃないか? サーマンが来ても外観を見たかったとでも言えば良いだろう」
「そうですよ、なんなら動かしてみます?」
「ひっ」
背後からの声かけに背筋を震わせるミライ。イセンの方は小声で話の通り神出鬼没だな……と呟いていた。
「一番乗りやすそうなのはそうですねえ……私か中尉の機体でしょうね。あなた方の機体ほど古くはないですが、この二つもなかなか年寄りで、腕部の操作が簡単なんですよ」
若干サーマンの表情を探りつつ聞いていたイセンとは対照的に、即決断といった感じで話の途中でラックワイトの機体の方に歩いていくミライ。
「ずいぶん素直に行くなミライ。それでは私は赤い小手の方に乗らせてもらおう」
「自分はバンダナトンファーで!」
「……聞いてるこちらが恥ずかしくなるので、正式名称を教えていただきたい」
イセンは静かに顔を伏せてサーマンに尋ねるが、ミライは不思議そうに二人を見ている。
「赤い小手がダルクでトンファーがベッズですね。門を開けておくので、動力を点けたら外へ出てください」
二つのインスヴァイト、ダルクとベッズはミライ達のインスヴァイトと同様に縄ばしごが操縦席から降りている。
「良いですね。お二人の乗っていたインスヴァイトは出力がレバー奥、手前、更に横に倒すといった順に上がっていくのですが、人型形態しかない機体はレバーを前後にする操作はいらないんで、戦闘時には使う感情を指向性にして横に倒してくださいってところですかね。その前に外に出ますけど。潰さないでくださいねー」
二人とも事前に大体の説明はされたため、とりあえず少しは慣れた足取りで、外へと歩き出していく。




