ブラックボックス5
サーマン達が乗ってきたと思われる、巨大な船の中。とりあえずインスヴァイトから降りようとするミライとイセンだが、降り方が分からない。
「足元のレバーを引いてみてください。多分はしごが出ると思います」
様子を見ていたサーマンから声が掛かり、無事に縄ばしごを使って降りることができた二人。とりあえず食堂のような場所へ行くと、先程帰ってきた三人を合わせてインスヴァイトの回収に来た異星人は六人。
「皆さん、こんにちは! ほら、イセンさんも」
「ああ、これからよろしく。イセンと呼んでくれ。横のは継葉ミライだ」
ライと呼ばれた男以外は皆軽く挨拶を返してくる。幸いなことに、それでもそこまで雰囲気は悪くない。
「ライ軍曹、挨拶は大事です。これから長いですし、その寡黙を少しはほぐしても良いのですよ?」
「だって地球の人は……よろしく」
何かサーマンに言いたげであったが、そちらは飲み込んで挨拶を返すライ。
「私の腕を撃った男のことが気に入らないんですか? 確かに彼は気に食わないですが、これとそれとは話が別です。政治や戦争のように伝搬していく悪意も善意も、必要でないなら話し合いたくはありませんしね。それに、ラックワイト中尉とは殴りあった仲ですし。厚い友情がーー」
「そうだな。あの時はよくぞ騙してくれたな。」
「ちょっと考えれば分かることですよ」
「ちょうど自分の中の常識が揺らいでいたんでな」
イセンとサーマンが言い合っている間に、例によってミライとラックワイトも雑談を始める。
「イセンさんは、少尉のお気に入りですね」
「そうなんですか? ラックワイトさんとは大分扱いが違うような」
「そ、そう言うことは言わなくていいのです。巻き込んでしまって申し訳ないです」
「いえいえ、ある意味地球の人の落とし前という事で。この船が無事に着けば良いんですよね。それにしても、サーマンさんと間違って戦いを仕掛けてすいません」
「……ああ、そうだな。まあ戦いのことは誤解を解かなかった私の落ち度もある。そこまで気にしないでくれ」
ふと、ミライは言い争っているサーマンや、他の宇宙艦? の隊員達を見る。サーマンは暑い時期にも関わらず、長めの被り物を着ていたため、最初見た時は身体的な特徴はあまり掴めなかった。改めて六人の体格、顔立ちを確認するが、地球の人々と違う点は見当たらず、タチの悪いおふざけでも仕掛けられているのではと思える程だった。
「ところで、こんな図体で本当に宇宙に行けるのですか?」
「うむ。君らの知るロケットと同じく燃料部を切り離して重力の及ばない所まで飛ぶことは可能だ。たとえ生まれた星で無くともね」
えらく自信があるラックワイト。その会話に気づいたサーマンが口を挟む。
「着陸は手こずりましたけど、離陸は中尉に任せてください。艦の操縦だけは得意なので」
「一言多いですよ少尉。ミライさんとイセンさんにお願いするのは宇宙に出てから二週間ほど後になりますね」
「二週間くらいは一体何するんですか?」
「特にすることはないですが、強いて言えば無重力に慣れてください。あとは、宇宙でのインスヴァイトの操縦ですかね。蹴る地面が無いので燃料を用いたブースターでの移動になります」
「割と覚えることが多そうだな」
「ま、慣れですよ慣れ」
「あはは、慣れるように頑張りまーす」
「とりあえず夜に発射するんで、それまでは自由にお願いします」
「ド派手な突入になりそうだな」
「こんな田舎じゃアレですが、中央の方はファクテムが死んで大騒ぎなんですよ」
話していると、イセンは携帯を取り出してどこかに連絡を取っている。
「そう言えば、支部と連絡が取れないんだがそこも何かしたのか?」
「特に何かはしてませんが、インスヴァイトが盗まれててんやわんやなんじゃないでしょうかね」
「そうか……」
少し悲しそうな様子のイセン。ここでミライも普段着がないことを思い出し、少し悲しくなる。
「そんな不安がらなくても大丈夫ですよ」
「不安というか、実は着替えがなくて」
「適当なのでよければ更衣室に使ってないのがありますよ」
そう答えると、着いてきてくださいと歩き出すサーマン。それを見て着いていくミライと、イセンは少し悩んだ様子だったが、そのまま残ることにしたようだ。
「行ってこいミライ、俺は多分ずっとここにいると思うぞ」
そして二人が見えなくなり、辺りをみるといつの間にかラックワイトやライの姿も消えていた。イセンが室内を見回していると、食堂に残っていた宇宙艦員二人に話し掛けられた。
「よう、さっきはサーマンさんばっか話してて全然会話に入れなかったけどよ、改めて俺はティラーって言うんだ。よろしく。ライと階級は同じで軍曹だ」
「私はライやティラーの上官、曹長のミルミドよ。もう一人の軍曹はいないけど、大体私が中間職ってとこかしら」
次から次へとイセンに絡んでゆく艦員たち。今日の日は長いことをイセンはひしひしと実感し始めていた。




