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序・新人操者の初任務11



次の日、朝食を終えて部屋に戻る途中の操縦士二人。流石に下着で食卓につくのはまずいと思ったのか、ミライだけ隊員服を着ている。普段着のイセンは、毎朝のことなのか、金髪の散らかり具合が激しい。


「ミライよ。私は午前中部屋で事務作業をしているから、一つ任務を授ける」

「はい」

「インスヴァイトの監視をしていて欲しいのだ」

「今日は来ないんじゃないですかね」


イセンは無言でふるふると頭を振った。


「隕石が1パーセントの確率でも落ちてくるとしたら大問題だろう。それと同じだ。あいつは隕石だ」

「あいつって」

「まあ彼女を別のところに引き付けられれば監視の必要は無いがな。そんじゃ、見回りよろしく!」


こめかみの辺りでピッと指を上げたイセンに流されて部屋を後にする。婦人に今日は早いのねと言われつつ、外に出る。ミライが乗っていた機体はすぐ近くにあるので、イセンの機体のある場所へと歩いていく。自分の機体に乗っていこうかとも考えたが、プロペラの音がイセンの耳に入ったら泡を吹いて倒れそうなので徒歩で行くことにした。


「もういっそのことイセンさんの機体も持ってきちゃおうかな。八時過ぎなんて誰も……」


一人で独白のようなことをしているのに気づき、途中で口をつむぐミライ。

朝は人通りも少なく、ただでさえ隊員服のミライは人目が気になったので、せこせこと歩いていく。

歩きながら今日の予定を考えていたミライだが、何か思いついたように周辺の建物を見回し、進路を変えた。


「らっしゃい。閉店寸前ターレルの本屋だ。こんなところに来るなんて物好きさんだな」

「九時前に店を開くのも物好きさんだと思いますけど。まあ、午前中暇なもので」

「電子書籍とかは見ない人なのかな? あれのせいでうちは店をたたむのだけどね」

「電子書籍だと文字を読む権利を買ってる気がして、あまり使わないんですよね。個人的にですけど」


ミライは問答しながらそれとなく店内を見回し、話を切るための本を物色する。とりあえずガワだけで決めたのは、レジ前に平積みしてあるファンタジー小説だった。


「権利も何も文字を読む為の物だし、気にはならないかなあ。まあ、数少ないお客さんに言うのもなんだけどね」

「それじゃあこの本ください」

「おおっと、分かったよ。毎度あり~」


入ったときも感じたが、なんとなくRPGの商人みたいな話し方をするじゃないかと思って店を出る。ところで、なんとなく手にザラザラとした感覚があるのに気付く。


「海外の本は紙の質が違うのか……」

「紙の質? あなたがいつも買う本はもっときれいなのー?」

「うぃっ!? と、そうなりますね、あはは……」


つい口に出してしまったが、今度は返答を貰ったミライ。一瞬ターレルに聞かれたかと思い動揺したが、声の主は昨日会った女の子だった。


「えーと、名前なんだっけ……」

「ソウだよ、しっかりしてよおじさんー」

「え、おじ……」


幼女の遠慮ない物言いに再び動揺を隠せない。ただ、昨日と同じような場所で出会ってしまい、どことなく嫌な予感がするミライだった。


「えーところで、レティさんはどこかな~?」

「今日パンを買ってくれるって言われたから、ここで待ってるの」


昨日のお詫びかなと思いつつ、昨日と同じなのはここまでだったと、ミライは少し安堵した。


「そうなのね。でもなぜにパン?」

「ここの近くにあるパン屋さんすごく美味しいの~」

「なるほど。それならレティさんと一緒に選んだ方が良くない?」

「いつ頃買いにいくか聞いてない~。あと、一人で買い物に行けないよ」


まあ昨日の今日で他のことを優先しないだろうと思ったので、ある提案をしてみる。


「それじゃあパン屋さんに連れてってあげるってのはどうかな?」

「本当? おじさんが良いなら良いよ~」

「おじさんじゃなくて、ミライお兄さんね! 俺はまだおじさんの要素はないよ!」


ということで、パン屋の場所を教えてもらって二人で行くことしたミライだったが、歩き始めて少し経つと、冷や汗をかいてきていた。

先程述べた通り、村は朝早く人通りも少ない。なおかつ隊員服で歩いていたミライが今度は小さな女の子を連れて歩いている。稀にいる通行人たちは冷たい視線を注ぎ、連れがいるならば互いに耳打ちしている。そんな状況におかれ、おじさんが良いなら良いよという言葉の意味をミライは理解していた。

何分歩いたか分からないが、その交差点は香ばしい臭いが漂ってきていた。元気になるような香りに奮い立ったミライはソウに蚊の泣くような声で尋ねた。


「あの……ここの近く……ですか?」

「うん! あ、レティ姉ちゃんもいるー!」


彼を縛っていた重荷は、悩みの元凶のもとへと駆け出していった。









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