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序・新人操者の初任務10


何はともあれミライとイセンは玄関まで飛んでったレティを見送った。


「思い出させてくれてありがと! またいつか!」


何か返そうととりあえず口を開いたミライだったが、不機嫌そうに手を振るイセンを見て、ばつが悪そうにそのまま口を閉じる。


「今日はお疲れ様だったな」

「俺はこのまま隊員服で寝ますよ」


ミライは怠そうに伸びをして、口元を腕で覆いあくびを出す。


「そういえば、替えの服を探しに行ったと言ってたが、それどころじゃなかったからな。もしかしたらレッジ夫妻がご飯を作ってくれるかも知れんから、ちょいと聞いてくるよ。」


イセンはそう伝えると、廊下を歩いていった。その後ろでミライがそわそわしてると、イセンに二階の誰の名も書かれてない部屋を使えと言われ、階段を上がっていった。




「なるほど、サラヴァンさん、ディーナさん、……この部屋かな」


二階の部屋全てには、部屋主の名前が彫られた木札が掛けられているが、イセンに言われた空き部屋だけ裏返しになっていた。ドアノブに手を掛けたミライだったが、ふとした好奇心から木札をひっくり返した。


「レティ……」


書かれた名前を口に出してしまい、念のため後ろを振り返ったミライだったが、誰もいないようなので木札を元に戻して今度こそドアノブをひねった。




台所では鍋の中から蒸気と共に空腹を刺激する匂いが漂ってきており、誰に聞かずともあと少し待てば夕飯が出来るであろうことは予想がつく。そんな中、夕飯のことを聞いてくると言っていたイセンと、夕飯を作っているディーナが話をしていた。


「私も独り暮らしで料理とかは自分で作ってるんですよ」

「あら、一人なんですね。てっきりご結婚されてるのかと思ってました」


ディーナは鍋を火にかけながら、嫌な顔一つせずイセンの他愛ない会話に付き合っている。


「結婚なんていやはや。いつ帰るかも分からない職では相手も疲れてしまいます」

「そうは言っても帰る側の人としては信頼できる相手に待っていて欲しいのではなくて?」

「まあ、確かにそうかも知れませんね。ただやっぱり、信頼できる相手にも負担は掛けたくないものです」


ミライと初対面の時とは打って変わって落ち着いた雰囲気で話すイセン。


「そういえば、もう一人のパイロットの……ミライさん? はよろしいのでしょうか。あと少ししたら夕飯の支度も出来ますので、イセンさんも少々休まれては?」

「あー、そうすることにします。ではまた後で」


ディーナに勧められ、階段を上がるイセン。もう仕事らしい仕事は終わったので、夕食前に着替えようかなどと考えつつ、照明の漏れている後輩がいるであろう扉に手を掛ける。


「失礼する。一応確認するが入ってもいいか?」

「お疲れさまです! 大丈夫ですよ」


部屋には昼過ぎにイセンが使っていた机とベッドがある。お互いの荷物は部屋の隅にまとめておいたが、部屋を空けている間にミライの手荷物が少し散乱している。


「夕飯はもう少ししたら出来るらしいぞ。あと微妙に物が散らばっているが、なんか探し物でもあったのか?」

「イヤホンいれたっけと思いましたが、やっぱり持ってきてなかったです。まあ、普段音楽とか聞かないんで当たり前なんですけどね」


指摘されて居心地が悪かったのか、ミライは隅に置いたの荷物の近くに行き、何をするでもなく浮き足立っている。


「まあ、俺しかいないし散らしたいだけ散らしても構わんぞ。ゴミとかは……さすがにないか」

「ははは……外には出しませんよ。さすがに」

「あー、うい」

「変な声出さないでくださいよー」

「そういえば、不本意ではあるが人の手荷物を見たことだし、私の荷物も晒そうか」


そう言ってミライの隣へ行き、荷物の中から書類のようなものを取り出す。


「私とミライ、君? ……継葉は先輩後輩の関係であって、上司部下ではないからな。今日私が片付けた事を、ゆくゆくは一人で出来るようにしてほしいのだ」

「ああ、はい。確かにそうですね」


露骨ではないのだが、なんとなく嫌そうな気持ちが現れている表情のミライ。そこで、イセンが補足して話し始める。


「まあ、そういうことは最終日に回して、明日はインスヴァイトについて教えよう。一般に知られていること知られてないこと問わずにな」

「あ、それはありがたいです! ありがとうございます!」

「ふっ、これもつまらないようだったら私から教えることはもう何もなかったぞ」


支部に帰って嫌々覚えるだけだからな、という言葉は一旦飲み込み、思い出したかのように続ける。


「さあ、もうそろそろ下に降りようか。せっかく作ってくれたのだし、しっかりいただいて明日に備えてくれ」

「了解です。明日もよろしくお願いします」




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