最終話.ヒロインの戦いはこれからだ
カトレアとボニファーツ様から似たような相談をされました。
「婚約破棄をしたい」とお二人から。
カトレアは、バウムクーヘン先生の個人教育を受けるうちに、自分では制約の多すぎる王妃という役目をこなせないと気付いたからだと言われました。
ボニファーツ様は、今更ながらにカトレアが自分の理想とする女王様になれないと思い知らされたからだと言いました。...って、イマサラですか?言っては何ですが、カトレアが理想の女王様になるのが不適格というのが分かる行為は何度かあったと思うのですが?
とりあえず、カトレアには「王妃の役目ができませんので、婚約を辞退したい」、ボニファーツ様には「王妃になる品格がないので、婚約破棄をしたい」とご両親にストレートに伝えることを提案しました。
後日、お二人から正式な婚約破棄を伝えられました。
カトレアにいたっては、晴々な表情をしていましたね。さすがのロースペックさでも、あの婚約は重荷になっていたようです。
それと同時に、王家では第三王子の婚約者にアルストロメリアさんが候補になっていることをエドワール様とのお茶の席で、教えてもらいました。
以前、アルストロメリアさんはアウレーリオ・ブリオッシュ様の婚約者でした。これは、魔法省の所長が仕組んだものです。出資者を欲してではなく、権力のある家の結びつきが欲しいがために、アルストロメリアさんの許可なく所長が決めていました。その後の所長は、チクチクとアルストロメリアさんのイヤミ攻撃を胃に穴があくまで受けていました。
そして今回、アルストロメリアさんはシュルヴェステル様の婚約者候補になりました。現在では、継承権第二位の王子様です。今度は、王家です。すごいですね。王家と魔法省が、アルストロメリアさんの才能に目を付け、他国に行くことのないようにしたいとの思惑です。また、所長は胃に穴があく行為を自らするという悲惨な行為をするようです。新たな性癖を開発されてしまったのでしょうか?今度から、所長を見るときは憐れみを持った目で見ることにします。
三年後____
私とスズランさんは二回ほど飛び級し、卒業式を迎えました。
前世知識と今世知識を利用し優秀な成績を出したので、魔法学校でここ数年間なかった飛び級が認められたのです。
卒業式でマカロン先生は私に、「私を見捨てるのですか」と恨み節に泣きながら、一応は卒業を祝ってくれました。マカロン先生と私は『クラス対抗魔法オリエンテーション大会』の後、カトレアが何かしでかした後の後始末係を学校から押し付けられたのです。私は、アルストロメリアさんとスズランさんを巻込みました。三人よれば文殊の知恵というわけではなく、アルストロメリアさんの知恵だよりでした。これは、学校の成績が優秀以外の優秀さが必要なことですからね。私とスズランさんと別方向の頭の良さがあったということです。
今日は、スズランさんとお茶をしながらおしゃべりすることになりました。
「なんで、ここに女王様はいないのかしら...」
哀愁たっぷりに遠くの空を見ながら言いました。
「まだ、いないと決まったわけじゃ」
私がそう言うと、スズランさんは私に詰め寄る勢いで訊いてきました。
「どういうことよ!!!」
「ここが乙女ゲームの世界だとしても、私たちにとってはここは生きる場所で現実です。ゲームでは、この世界はこの国が舞台で他の国が出てきませんでした。ですが、」
私の言葉を遮って、スズランさんは言いました。
「そういうことね!他国に行けば、私の理想の女王様に出会えるかもしれないと!理想の女王様に、鞭で叩かれたり、踏みつけられたり、罵られたり、尻の穴に蝋燭を突っ込まれるかもしれないのね!!」
目を輝かせながら、うっとりして言うスズランさん。いくら理想の女王様といっても、お尻の穴の中に蝋燭を突っ込まれるというのは、勘弁願いたいものですね。人の性癖に突っ込むのはアレですし、ここはスルーするのがいいですよね?
その後、嬉々として女王様に調教されるプランを語るスズランさんに、世界観がディープすぎてついていけませんでした。どうやら彼女(元男)は、足を踏み入れれば戻れない世界まで、地球からロケットに乗って月に行くスピードの如く乗り越えて行ったようです。もし彼女(元男)について行ける人物がいるとすれば、俄かファンでなく本物の世界に躊躇いなく足を突っ込んでいったボニファーツ様しかいないでしょう。
そして数日後、スズランさんの旅立ちの日。
街の門の前にいます。
そこに、なぜか、ボニファーツ様もいました。スズランさんがも、驚いています。
「あの、ボニファーツ様、なぜここにいるのですか?」
私が訊くとボニファーツ様は、
「決まっているだろう。スズラン嬢が、女王様を求めて世界に旅立つと聞いてな。俺も、同行することにしたんだ!」
ドヤ顔で言い切った王太子様。王太子様がそんなことをしていいのでしょうか?
「そんなこと事前に聞いてないわよ。王太子様なのになんでそんなことをするのよ。立場上ダメでしょ」
「スズラン嬢、それなら問題ない。俺の女王様に対する熱い思いを国王様に伝え、王位継承権を放棄してきた。弟のシュルヴェステルやエドワールがいるから問題ない」
この時、国王様はボニファーツ様の説得を諦めたんだなと思いました。きっと、その時周りにいた人たちは何とも言えない空気になったんでしょうね。それに気づかないボニファーツ様、なんか想像できてしまいました。
「ちょっと、私が女王様に調教される邪魔なんてしないでよ!」
「心が狭いな。一緒に調教されればいいだろう!」
「それもそうね。でも、一番は私なんだからね!これだけは、譲れないから!」
こんな会話が繰り広げられている間に、ビミョーな表情をして門番の人たちはここから離れていきました。その時に、私は門番の人たちに憐れみの目で見られました。そして、「この方たちが国の外に行くまでそこにいてくれ!」という思いを感じ取りました。
「じゃあ、アイリス。行ってくるわ。生存報告は、『女王様の所有犬』の新刊よ」
「アイリス嬢、達者でな」
「はい、いってらっしゃいませ」
スズランさんとボニファーツ様は、旅立っていきました。
この後、やはりズズランさん作の『女王様の所有犬』が大陸中でヒットし、ついに彼女(元男)は理想の女王様に巡り会うことになります。
理想の女王様に出会って、スズランさんによって性癖を変えられた数人の男たちと一緒に調教されていると手紙がきました。
女王様はちょっと変わった逆ハーレムを築いているようです。
女王様が、どういう方か気になるのは気になるのですが、知らない方が幸せかもしれないですね。
あと、番外編を一話書きます。本編に名前?しか出なかった主人公の友人視点です。




