15.無理な補正は失敗に繋がる
今日は、『クラス対抗魔法オリエンテーション大会』があります。
なんというかツッコミどころしかないですね。ゲーム通りのタイトルに思わず、失笑してしまいそうでした。それにしても、なんなんでしょう?『クラス対抗』『オリエンテーション大会』って。製作会社の脚本をチェックする人は何も言わなかったのか大いに疑問ですね。
この行事を大真面目に説明するのはいいですが、ここは現実なのに教師たちは誰も疑問に思わなかったのでしょうか?魔法学校の伝統行事だからとそのままにした可能性が無きにしも非ずですが...
私は参加ではなく、監視側になります。
理由の一つは、私がカトレアの召喚獣の暴走を止めたことによります。
もう一つは、魔法省に勤めていることです。魔法省で勤めている一部の者は、『魔法バトル・バカ』と呼ばれます。私もその中に入っていると思われているのは、心外ですね。アルストロメリアさんは、参加側に入っているのに。
ちなみに、魔法省は別名『お菓子省』となぜか呼ばれることもあります。
私は、クラス対抗魔法オリエンテーション大会前日までに一定間隔で自分専用の転移魔方陣を仕込みました。今回仕込んだ転移魔方陣は、通常の指定した場所に行くものではなく、魔力の流れをたどり、自分が行きたいところに転移するものです。自分専用と言う名の通り、他人が使用できない仕様になっています。魔法省の同僚たちからは、『改悪版』なんて言われましたが。魔力の流れをたどるだけで行けるというのは、案外便利なんですよ?私以外、扱える者がいないという欠点があるくらいです。
『クラス対抗魔法オリエンテーション大会』というのは、簡単に言うと魔法バトルです。
クラス対抗となっていますが、別学年で別クラスの人とチームを組んでも構いません。要は、学校の生徒同志で交流しましょうということです。
参加者は、手首にブレスレットをはめます。ブレスレットは、一定の魔法攻撃を受けると壊れる仕組みになっています。ブレスレットが壊れれば、失格です。
魔法バトルはポイント制です。
生徒は、1ポイント。
先生は強さ別に、ジョーカー・ダブルジョーカー・トリプルジョーカーと分けられます。ジョーカーは3ポイント、ダブルジョーカーは6ポイント、トリプルジョーカーは10ポイントになります。腕章をつけているので、どのジョーカーか区別がつきやすくなっています。
トリプルジョーカーは、この大会の監視を兼任しています。そんなわけで、私は生徒でありながらトリプルジョーカーです。「狙って下さい」と言っているようなものですね。
ジョーカーは、逆転チャンスを狙う生徒が魔法バトルに挑みます。
私をトリプルジョーカーに指名した先生によると、あまり魔法バトルに挑まれないそうです。トリプルジョーカーなら、挑まれないと言っていましたよね?ウソだったのですか?
私は現在、絶賛狙われ中にございます。監視の片手間に、上級生たちを撃退しながら移動中です。次のターゲット...ではなかった、スズランさんとボニファーツ様のコンビに意識を取られていたら、近くから攻撃してきた上級生をうっかり手加減なしで撃退してしまいました。
近くで見ていた同級生と上級生は顔色を悪くして逃げていきます。中々に失礼な態度ですね。そこまで酷かったのでしょうか?
「...マジで酷いわ」
声を震わせながら、スズランさんは言いました。
「先ほどまで手加減していたのですが、不意打ちを食らいましたので、うっかりいつもどおりに」
「トリプルジョーカーになるだけの実力はあるな。マカロン先生が、ラスボスだと思ったんだが」
ラスボスとは、倒すだけでこの大会の優勝者になれます。
マカロン先生は、心労を催す様々なことが原因で色々しでかし、そのことから真の実力者として校内に名を轟かせています。
最近では、国内屈指の実力者であるこの学校の校長と教頭を『謎の腹痛』と『謎の腰痛』、そして『謎の頭痛』で倒したそうです。とにかく倒した後には、清々しいくらいの眩しい笑顔を浮かべていたそうです。
そんなこんなしている間に、新たな気配がこちらに近づいてきました。
カトレアとカトレアの取巻きたち(今日の当番)とアルストロメリアさんです。
珍しい組み合わせです。
カトレアは早々に失格になると思ったのですが、アルストロメリアさんがうまく操作しているのでしょう。
「勝負です!ボニファーツ様、ヴァーニルさん」
私はこの時に、魔法バトルの邪魔にならない位置に移動しました。
「今日は、カトレアの光魔法があるから勝つわよ」
光属性のスズランさんに向かって言う言葉ではないと思うのですが?
「甘いわね、グロゼイユさん。私も光魔法を使えるのよ!忘れたの?」
スズランさんとカトレアは、互いの光属性の魔法をぶつけ合います。
ボニファーツ様は、アルストロメリアさんと取巻きたち(今日の当番)と戦います。ボニファーツ様は、手加減をしていますね。余裕で複数の攻撃を交わしながら、相手に攻撃をしています。
これなら、問題なく終わると思っていた時にカトレアの魔力が暴走してしまいます。それと同時に、カトレアの召喚獣 一角獣が暴れ出しました。
召喚獣の暴走は、分不相応な契約をしている場合に起こりやすいです。
召喚獣が自分を主と認めて契約していると、間違った魔力の使い方をしても、召喚獣自身が調整して魔力暴走しないようしてくれます。ですが、今回のカトレアの場合だとそれができないようです。一角獣が、カトレアの放出する魔力の多さに驚いて魔力調整できないみたいです。暴れることで、多すぎる魔力を消費しているような感じがしました。
光属性の魔力を相殺できるのは、同じ光属性でしかできません。
とりあえず、魔力を相殺できるような状態にするため、カトレアと一角獣を拘束しようと思います。
私は大気中や大地に含まれる水を集めて、鎖のようなものを作り二人を縛りつけます。拘束された隙に、スズランさんに彼女たちに魔力を全力でぶつけてもらいます。彼女たちは自分が持つ魔力以上の魔力を浴び、気絶しました。どうやらうまくいったようです。
この『クラス対抗魔法オリエンテーション大会』は、カトレアの一週間停学処分という結果で落ち着きました。
これから、カトレアはこの学校で一番の鬼教師と言われるバウムクーヘン先生の魔力制御のスパルタ教育を強制的に受けることになります。




