13.ヒロイン様の危機、そしてヒロイン様との邂逅
今日は朝から何やら騒がしいです。
教室に入り、何があったのかを近くの子に訊くと、朝から王城の使いの者が来て、ヒロイン様とヒロイン様が攻略した攻略対象者たちとついでにボニファーツ様を王城に連行したそうです。
いわずもがな、学校にいる女子たちはこれでヒロイン様が国王様自ら断罪するのではないかと期待に満ちた目をしています。こんなことで断罪するのかとは思ったのですが、ヒロイン様の幼馴染以外の攻略対象者はこの国の重鎮の長男ですので、当然のことかもしれません。ですが、私個人としては納得できません。
ヒロイン様が『転生ヒロイン』だと、私の知っているあの人だと、先日やっと確信を持つことができたのです。それにもし、カトレア・ミルフィーユが『ゲーム通りのカトレア・ミルフィーユ』なら、こんな事態には絶対になっていません。これは紛れもない事実なのです。
もし、国王様や国の重鎮たちが自分の役目よりも、自分の息子の父親であることを選ぶならば、自分の息子の醜聞をすべてヒロイン様に押し付け、ヒロイン様を死罪にし、諸々すべての罪をかぶせてしまうでしょう。私はこれを断固として阻止します。
私は急いでこの場で転移魔方陣を展開し、寮にある自分の部屋まで繋ぎます。そして、寮にある自分の部屋に戻るとそこに仕込んである転移魔方陣で、実家の屋敷にある自分の部屋まで行きます。そこからは、父の執務室にある転移魔方陣を使い、王城にある父の執務室まで移動します。途中、声をかけられた気もしますけどすべて無視です。
私は、とりあえず玉座のある広間を目指します。
行く途中、ボニファーツ様が窓の外を眺めてたそがれているお姿を見かけしました。急いでいたので素通りしようとすると、ボニファーツ様に声をかけられました。
「アイリス嬢、学校はどうした?」
「それどころではありません。失礼してよろしいでしょうか?」
「それどころではない?どういうことだ?」
「本日、スズラン・ヴァーニルさんが国王様に呼び出されたとお聞きしました」
「そうだ」
「もし、スズランさんに彼らの罪をすべて押し付けようとするなら、私はそれを阻止しなければなりません」
「それだけのことをしているだろ」
「そうでしょうか?彼らがスズランさんの取巻きになって、スズランさんのためにと思い込んで権力を行使したことは変えられない事実です。ですが、スズランさんはそれを望んでいたのでしょうか?」
「どういうこどだ?」
「スズランさんが、王太子様の愛読本『女王様の所有犬』の作者ドンパテージ・ドッグだとはご存じないのですか?そう、彼女は男に興味が全くないのです!女王様の犬になりたい人なんです!」
「ナニィ!? 彼女が、俺と同じ願望を持ちなおかつ師匠だと?それは、本当か?」
「はい、そうです」
「アイリス嬢、今すぐ国王、いや父上たちの愚行を阻止するぞ!」
「はい」
玉座のある広間の前に着くと、ヒロイン様に罪状を言い渡そうとする国王様の声が聞こえてきました。
「...というわけだ。スズラン・ヴァーニル、最後には何か言うことはあるか?」
「死刑にするなら、早く死刑にしなさいよ!こんなことなら、生きてたって仕方ないわ。それにこんなはずじゃなかったわよ。なんでなんで、カトレア・ミルフィーユが女王様じゃないのよ!私は、彼女に拉致・監禁・調教されて犬になりたかったのよ!おかしいじゃない!」
ヒロイン様の告白を聞いて、広間が静まり返りました。気持ちは分かります。美少女が、こんな願望を広場で叫ぶなんて誰も思わないからですね。
私とボニファーツ様はその隙に、広間に入り込みました。
ボニファーツ様は何やら感動で震えているようですが、私は見なかったことにします。
「もうおやめ下さい。国王様、いや父上!」
「王太子。ここでは父上は止めなさい」
「止めません。一人の少女にすべての罪を押し付けて、彼らの罪をなかったことにするなど、見逃すわけにはいきません!」
「お前の弟もいるのだぞ!」
「それは...」
この場で、ボニファーツ様にすべて任せてはヒロイン様を助けることはできません。ここは、私の出番ですね。
「国王様、よろしいでしょうか?」
「アイリス嬢か、なんだ」
「実は、スズラン・ヴァーニルさんが国の重鎮たちの息子を侍らせていたのはとても深い理由があるのです」
「どいうことだ?」
国王様は興味を持ってくれたようです。この場にお父様もいるのですが、私が何を言うか分からずにハラハラしています。私はそれを気にせずに続けます。
「スズランさんが気がついた時にはすでにもう遅く、彼らを侍らす形になっていました。そして、ズズランさんの気を引こうとした彼らは次第に家の権力を我儘に行使していきました。そこで、国の未来を憂えた王太子様は彼らに見つからないようスズランさんに密かに会い頼みごとをしたのです」
「それは?」
「国の未来のために、彼らを見極める機会が欲しいと。なので、彼らを侍らせ続けて欲しいと。それを見て、どうするのか国王様に進言すると言われたのです。ご自分の意思で、スズランさんから離れ、スズランさんのためと思い込んで権力を使うのを止める意思を持って欲しいと、王太子様は心から願ったのです。そして、できなかった結果と事実がこの場を作りだしたのです。本当に、残念なことに...先ほどまで、王太子様はそのことを悔やんでいるご様子でした」
「王太子、それは本当か?」
「はい、国王様。アイリス嬢、スズラン嬢を連れて出ていきなさい。後は、私から国王様に説明する」
「わかりました。スズランさん、行きましょう」
私は、ズズランさんを連れて出ていきました。
スズランさんは納得できない顔をしているのですが、どこか安心した様子です。
「どうして助けてくれたの?」
「スズラン・ヴァーニルさん、いえ同志・調教された犬同盟No.1、お久しぶりですね。私は、No.99です。私が気付かないと思いました?」
「マジかよ。どうりで俺の本が出た後に、印刷技術が異様に発展したわけね。でも、どうして俺だと気付いた?」
私が前世のお仲間と気づいてすぐに、元の口調にあたらためてきました。
「行動が、悪役令嬢(女王様)の調教ルート一直線に行っていましたので。それに、人気のないところで天馬に蹴られて踏みつけられて楽しんでいたのを見かけたので...」
「あれを見られたのかよ。いつだったか、天馬が人の気配を感じた様子だったしな」
「告白すると、同志・調教された犬同盟No.1とここ数日前に疑って観察していたのです。それで、確信を得ました」
「犯罪行為かい!でも、この後どうすっかな。目的も果たせなかったし。あんたは、いつカトレア・ミルフィーユが女王様じゃないことに気づいた?」
「はじめて会った時に。会うにつれて、私の理想の女王様像が崩れていき、木っ端みじんに幻想を打ち砕いてくれました」
思わず、あの日を思い出し遠い目になりました。思い出したくもない、遠い日の出来事ですね。
「なんか、本当にごめん」
とどこか遠くから、ヒロイン様の声が聞こえました。
翌日、ボニファーツ様からヒロイン様ことスズランさんの無罪放免とヒロイン様として攻略された攻略対象者たちが家からの廃嫡が決定したことを聞きました。
その時に、スズランさんはボニファーツ様にドンパテージ・ドッグだということを話して、女王様に調教されたい願望を語り合い盛り上がりました。
この後、ボニファーツ様がスズランさんのことを『お師匠様』と呼ぶようになりました。
転生ヒロインことスズラン・ヴァーニルの前世は、調教された犬同盟No.1。
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