12.悪役令嬢(仮)がロースペックのため、自作自演を自爆できない
ヒロイン様が、転生ヒロインであるかどうか調べるために、前世でいう犯罪行為『ヒロイン様のストーカー』を現在絶賛しているアイリスです。
このために、気配を殺す・足音を立てずに忍び寄る・読唇術などの技術を会得しました。貴族令嬢としてはおかしい行為ですね。ですが人に訊かれた時には、『乙女の嗜みです』と言って、誤魔化しています。
ここ一ヵ月以上、ヒロイン様を観察していますが、一人を除き効率よく攻略対象者を攻略していってます。ですが、気になることにヒロイン様は『あのルート』に入ろうとしているんですね。カトレア・ミルフィーユが真の女王様、違った悪役令嬢をしていないとできないルートなんですけど...
ヒロイン様が攻略している攻略対象者は、
【イェレミアス・キャラメリゼ】
この国の第二王子。何事にも完璧にこなす兄ボニファーツに多大なコンプレックスを持つ。
兄の隠された願望にはドン引き。
【アウレーリオ・ブリオッシュ】
アルストロメリア・グロゼイユの婚約者。
鏡大好き・自分大好きなナルシスト。
【コニー・シュトーレン】
この学校で、憧れのお姉さまと慕われるツバキ・ストロベリーシャンティの婚約者。
紳士的な態度を崩さない。
【バーンハード・クーベルチュール】
アイリスとアルストロメリアと同じ魔法省に勤める。
彼女たちに魔法勝負を挑むが、一度も勝ったことがない。
【エルネスティ・パリブレスト】
ヒロインの幼馴染。
幼いころに、結婚の約束をした。
【リオネル・コンポート】
ヒロインの担任の先生。
フェロモン垂れ流し男。
実は、ヒロインの幼馴染以外の攻略対象者の監視役。
攻略できない攻略対象者
【ボニファーツ・キャラメリゼ】
この国の王太子。ゲームでは、カリスマ溢れる俺様だった。
現実では、女王様に調教されたい願望を持つ残念な人。
ドンパテージ・ドッグを心の師匠と仰ぐ。
以上、こんなところですね。ボニファーツ様以外は、前世でした乙女ゲームの攻略対象者の紹介を思い出してみたのですが、バーンハードさん...?...誰でしたっけ?
魔法省で、魔法勝負を挑まれるのは何度もありますので誰が誰なのか覚えていません。今のところ、無敗なんですよね。いちいち誰だとか覚えてられないのですよ。
あの乙女ゲームは、女王様(悪役令嬢)ルートしかやり込んでいませんので、他ルートはうろ覚えなのです。バーンハードさんっていましたっけ?アルストロメリアさんに訊いたら、誰なのか分かるかもしれませんね。
今日は、学校の全体清掃の日ですので、生徒がいれば邪魔なので早めに寮に戻らされます。これは、年に数回行われます。
学校の全体清掃は、清掃専用魔法を使う専門の業者が数十人で行うらしいです。かなり繊細な魔力行使をしないといけないので、学校に誰も残ることができません。
授業が早く終わったので、アルストロメリアさんと一緒に魔法省に行くことにします。その時に、バーンハード・クーベルチュールさんを知っているかと訊くと「もちろん、知らないわ。学校で騒がれている内の一人だということだけ知ってる」と言われました。
行くところが違うので、アルストロメリアさんと別れました。これから、魔法省発のお菓子の新作案を他の方たちと出しあわないといけません。
私はトイレとお部屋の芳香剤以外に、己の欲望を満足させるために魔法で印刷技術を確立しました。この世界、大変不便なことに印刷技術がなかったんです。手書きなので、発行部数が少ないという私的に困った問題を解決しました。これで、この世界に同志の本を幅広く広めることができます。
現在は、魔法に全く関係ない『お菓子作り』に専念しています。これまた困ったことに、この世界は前世の世界に比べて私好みのお菓子が少ないんです。解消するには、自分で作って広めればいいんじゃないと頑張ってます。庶民でも手に入れやすい価格設定にしているのでもしかしたら、広まるかもしれません。もし、広まればちゃんとしたお菓子作りの職人さんがいいお菓子を作って販売するかも...
ヒロイン様が、カトレアを本来の悪役にすべく動き出しました。
確実に、女王様(悪役令嬢)ルートを目指して攻略対象者を侍らせて人前で人を気にせずイチャついてます。カトレアをチラチラ見て意識させようとしていますが、カトレアはそれを気付かずにスルーしています。何度しても、カトレアに無視されて焦るヒロイン様。ゲームのカトレアなら、ヒロイン様を断罪するのですが、現実は違います。ヒロイン様にそれを指摘すべきでしょうか?
ヒロイン様は、自作自演で自爆するべく行動を開始しました。
手始めに、「カトレアに意地悪された、突き飛ばされた」と攻略済みの攻略対象者様たちにウソの訴えをしました。これにより、ヒロイン様が攻略済みの攻略対象者様たちはカトレアに敵意を剥き出しにしてきました。その殺意交じりの敵意さえまったく気づかないカトレアに、ある意味尊敬の念を抱きそうです。
ヒロイン様はこれなら自爆できるのではないかという思いを込めて、乙女ゲームの自爆の定番を選んで次々に仕掛けていきます。自分の教科書を切り刻む、自分の魔法練習着を破る、etc.
どれも不発に終わりました。さすがのロースペックというべきですね。
しかし、不発に終わるも攻略済みの攻略対象者様たちはカトレアに不満を募らせていきます。
とうとう、攻略済みの攻略対象者様たちは私たちのクラスの授業時間を権力を行使して奪い、カトレアを断罪する場に仕立て上げていきました。
この時に私は、「これがこの国の未来の重鎮たちか。この国の未来ヤバくね?」と思いました。場合によっては私だけが持つ最後の手段、私が精霊王と契約していることをばらし、この国の権力を乗っ取ろうと思います。この世界では王族よりも、精霊王と契約している方が権力を持つのです。私としては、その権力が持つ義務を果たせないと困るので、精霊王と契約していることを隠している方が都合がいいんですけどね。
しかし、ヒロイン様が攻略済みの攻略対象者様たちに思いもよらぬ方向から攻撃を仕掛ける者がいました。このクラスの担任のアゲラタム・マカロン先生です。彼女は、日ごろのカトレアの残念具合に胃を痛め、胃薬を持参する日々が続いています。神経がまいっています。これ幸いとばかりに日ごろの八つ当たりを彼らに向け、彼らの精神を言葉で抉り、言い分を撃破していきます。マカロン先生は今、輝いているように見えました。彼らが反論できないくらいに言い負かしたマカロン先生はとても満足げな顔をしています。そんなにストレスをため込んでいたのですね...
この時、私は数日後にヒロイン様を死罪にすべく国王様自ら動き出したことを知る由もなかったのです。




