3話 ~玄関に指人形~
「……事情は俺から話すより、当人から聞いた方が早いだろう」
流星が促すと、桜は居住まいを正し、計太を真っ直ぐに見据えた。
「わかりました……。お話しします」
桜は静かに、しかし理路整然と語り始めた。
「実は、いま都内のマンションで一人暮らしをしているのですが……。一週間ほど前から、不可解なことが続いているんです。きっかけは、玄関のドアのすぐ外に、小さな指人形が置かれていたことでした。最初は近所の子供が落としていったものだと思ったんです。なので、その日は少し離れた共用スペースの棚に避けておきました。ですが、夕方に帰宅して確認すると、その場所からは消えていて……落とし主が拾っていったんだと思いました」
一度言葉を区切ってから桜はまた話し始めた。
「ですが、翌朝。また全く同じ場所に、あの指人形が置いてあったんです。怖くなってすぐに管理人に確認しましたが、他の住人の方から同様の報告はないそうです。私の住んでいるマンションはオートロックではないので、やろうと思えば誰でもドアの前までは立ち入れてしまいます。管理人は『見回りを強化する』と約束してくれましたが……」
そこまで言って、桜は膝の上で細い指先を固く握りしめた。
「すると翌日、やはり同じ場所に指人形がありました。私は怖くなって流星先輩に相談しました」
流星と計太は、一言も挟まずに彼女の独白に耳を傾けた。リビングに流れる時計の秒針の音だけが、彼女の声の合間を埋めていく。
「それは……まず警察に相談した方がいいんじゃないですか? 」
すると、それまで沈黙を守っていた流星が、苦いものを噛み潰したような顔で口を開いた。
「それができない事情がある。……彼女は俺の大学の後輩なんだ」
「ってことは、東大?」
計太が聞き返すと、桜は少しだけ視線を伏せて答えた。
「はい。一応、そうなります」
「そして今も後輩だ」
「それはそうでしょ」
「そういうことではなく、今は同じ職場の後輩ということだ」
「ってことは上原さんも警察官!?」
ふたりはゆっくりと頷いた。
「けど、それが何の関係が?警察官だって困ったことがあれば警察に相談するんじゃないの?」
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