訓練3 86
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「あ、怪我をしても聖職者の職業適性を持つ者がいるので安心してください」
そう言ってみたが、フィアスたちの表情は優れなかった。声も出せないでいるフィアス達に苦笑しつつ、昼食の準備を手伝ってもらう。
食事をささっと済ませて、騎士全員に集まってもらって午後の訓練内容を伝えた。午前中にスキル習得訓練をしていた者達は狩りに出て、狩りをしていた者達はスキル習得訓練だ。
「さぁ、午後の訓練も頑張りましょうか」
「うむ、行ってくる」
返事をしてアーベル達が騎士を連れ、村から出て行った。アーベルには伝えているが、午前中にスキル習得訓練をしていた騎士達は能力的に他の騎士より少し劣る。いや、騎士としての戦い方が染みつき過ぎているというべきか。
だから、アーベル達は午後の狩りがいつもより厳しい戦いになると伝えている。まぁ、村人たちのパワーレベリングの時に比べれば楽なものだが。
騎士五十人にアーベル達、村でも実力者の二十人が付いていく。それだけいれば問題ないだろう。
「それでは、我々もスキル習得訓練を始めますか」
アーベル達を見送ってから、フィアス達に振り向いてそう告げた。それに、フィアス達は緊張した面持ちで首肯する。
まずは、皆の習得済みスキルの確認だ。職業適性は戦士が四十人、弓使いが五人。聖職者と盗賊、魔術師が五人という構成である。
「それでは、二十五人が受け流し、十五人が剛剣のスキル習得訓練ですね。聖職者の人はイリーニャ達と一緒にお願いします。後は、魔術師の人は魔力増幅訓練ですね。魔術は発動しなくて良いので、詠唱してキャンセルを繰り返してください」
そんなこんなで、弓使い以外の全員の訓練内容を伝えておいた。そして、フィアス達には並んで弓を構えさせる。
「それでは、フィアスさん達は言われた通りにお願いしますね」
「は、はい!」
訓練開始を伝えると、フィアス達は弓を構え、真剣な顔で返事をした。うむ。やる気があってよろしい。
そう思いつつ、フィアス達の訓練の様子を確認する。
騎士団において、弓使いとしての訓練は矢を射ることだけだと聞いていた。なので、皆が持っているスキルは狙い撃ちのみだった。とんでもない話だ。
「よし、鍛えるぞー」
騎士団の常識など、知ったことではない。我がグランドール村は効率重視であり、誰よりも強くなるのだ。それをテオドーラ王国の騎士団にも知ってもらうとしよう。
騎士達が訓練を開始して一週間が経過した頃、変化が訪れた。
「……ラーシュ殿。我らの訓練だが、週に一度で良いので陣形訓練を取り入れてもらえないでしょうか」
エルネストからの陳情である。
「ラーシュ殿も、一ヶ月で訓練の成果を出す必要があると聞いております。それならば、騎士団としての能力が低下していると良くないかもしれません」
エルネストは色々と理由を付けて別の訓練を提案してきたが、そうもいかない。正直、騎士団が行っている陣形訓練は同じような戦い方をしている相手専用の戦術だ。そんな戦いでは強くなれない。
「一ヶ月程度のことなので、大丈夫ですよ。心配せず、訓練に集中してください。頑張れば、その分だけ強くなれますから」
そう言ってみるが、エルネストは曖昧に頷くばかりだった。それから、言われたことはやるものの、エルネストやその考えに同意する十数名はあまり訓練に身が入っていないようだった。
まぁ、良かろう。それも選択である。エルネストを含め、その全員が騎士団でエリートのような立場である為、騎士としての教えが染みついているに違いない。嫌がる者を無理やり働かせるのも趣味ではない。
その判断が、更に二週間後に結果として現れた。
「班の編成を変えます!」
そう告げると、フィアス達は緊張した面持ちで背筋を伸ばす。しっかりと話を聞いているのは、この三週間、死に物狂いで頑張ってきた騎士達である。アーベル達と比べるとまだまだだが、フィアス達は明らかに強くなっていた。
良く成長しているメンバーをバランスよく組み換え、五組作る。これが上位五班だ。対して、そこそこなメンバーを集めたのが中位三班。そして、成長が少し遅い者達が下位二班である。
上位の五班は、もう目的のスキルを習得したか、もうすぐ習得するだろうということで、狩りばかりに行くことになる。後は、実践でレベル上げとスキルの熟練度上げである。
中位三班は二日に一度は半日のスキル習得訓練を行いつつ、狩りでレベルアップも行い、下位二班はこれまで通りの日々だ。
そのことに、下位二班に選ばれたエルネストは不満を持っていたようだが、何も言わずに訓練を続けていた。残り二週間程度だから、その間を黙って耐えようということか。やはり、物凄く真面目である。ただ、その真面目さを訓練に生かしてもらいたかった。
そうして、更に三週間後、少し遅れて村に王都からの使者が訪れた。
「おお、ラーシュ! 久しぶりだな!」
ドラスが騎士を引き連れて現れ、笑みを浮かべる。その後ろから、見事な金髪が揺れ、少女が顔を出した。
「ラーシュ! 来たわよ!」
「リネア?」
まさかのリネアも一緒である。現れたのは騎士百名とドラス、リネア。それに従者としてグリント、ドーラの緑髪の兄妹も同行していた。
「リネア王女!」
リネアの登場に、エルネスト達は地面に片膝を突き、頭を下げる。ドラスはその様子を見てから、こちらに顔を向けた。
「うむ。皆元気そうだな! それで、ラーシュ。皆は一ヶ月で強くなったか?」
ドラスにそう尋ねられ、苦笑しつつ頷く。
「ちょっとバラつきはあるけどね。まぁ、それなりに」
「それなり? 父上に強気で交渉したんだから、しっかり成果出さないと駄目よ?」
こちらの返事を聞き、リネアが心配そうに眉根を寄せる。まぁ、大丈夫だとは思う。
「それなら、少し見てもらおうか」
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