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Neva Eva  作者: 真樹
懐かしき日々
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56/61

03


 補講授業、一日目。


 授業内容は、『属性』について。

 二・三人で適当にグループを作ってください、と言われたから、レイとノイエと一緒のグループになったワケなんだけど。



「ちびっこ……ちょっと待ちなさい」

「うぇっ、はいっ?」

「……ねぇ、マメちゃん、貴方ホントに人間?」

「はいっ!?」



 何故だかオレは、結構な暴言を吐かれてる真っ最中だったりします。



 ……え、あれ、ちょっとどういうこと!?










 魔法使いには、『属性』というものがある。


 相性の良し悪しもあるので、人によっては習得できない属性もあったりするけど、逆に言えば習得できる属性ならどれを選ぶも本人の自由だ。

 自分で属性を選ぶ前に精霊と契約しちゃった場合は、使い魔としたその精霊の属性がそのまま魔法使いの属性となったりする。その辺は結構アバウトなんだよね。

 えぇっと……、前に会ったシエルがこの例にあたるかなー……。アレも結構なイレギュラーだとは思うけど、自身で属性を決める前に精霊と契約しちゃって属性が決定した辺りは、これに当て嵌まると思う。ちなみに、シエルの属性は『火』。あの女の子は火の精霊だったからね。

 弟くんは、使い魔をまだ持ってなかったけど、属性がちゃんともう決まってた。以前、オレじゃない別の魔法使いの人に師事した時に自分で選んだんだろうね。


 属性を選ぶ、とは言うけれど、そもそもトコトン相性の悪い属性の精霊とは契約自体結べない。力が反発するっていうのかな、無理に契約を結ぼうとすると、“晶石”にしようとしてた石が割れるとか砕けるとかするらしい。理由は判ってないけど、稀にそんなこともあるみたいだ。


 普通は、一人につきひとつの属性。

 使い魔にできる精霊の種類も一種類。属性が『火』なら、火の精霊しか使い魔にはできないといった風になる。

 相性や、魔法使い自身の力量みたいなものによっては、二つとか三つの属性を持てることもあるみたいだけど、それはホントに珍しい例。たくさんの魔法使いが集まる『学院』の中であっても、数える程しかいない。



 属性、っていうのは結構大事なんだよね。魔法にも相性ってものがあるから。

 例えば、同程度の力の火の魔法と水の魔法をぶつけたら、水の魔法が勝つ。これは純粋な相性の問題だ。火は水に弱い、っていうのは小さな子でも何となく感覚で知ってると思う。

 地の魔法を水の魔法でサポートしたら、出る効果が軽く倍近くなる、というのもある。これも相性の問題。


 組み合わせることで効果が伸びるもの、逆に威力が半減するもの。

 属性に相性というものがある以上、その属性の精霊の力を借りて発現する『魔法』に関しても右に同じだ。

 魔法使い同士戦うことがあると仮定して、相手の属性と相性が悪ければ、例えそもそもの力量に差があっても苦戦を強いられることもある。だから、相手の属性を見極めるのは大事なことだと昔教わった覚えがある。


 …………だから、ちょっとクセになってるんだよね。



「えっと……レイが『火』で、ノイエが『風』かぁ……」



 相手の属性を無意識のうちに探っちゃうというか……うん、そういうの。


 オレが呟いたその瞬間、レイとノイエが揃って動きを止めた。……ん?


「え、え? な、何……?」


 何で二人してじぃーっとこっち見てくれちゃってるの??

 特に、レイ。眠そうでダルそうになんだけど、レイにじーっと凝視されるとすんごく落ち着きません。これは過去に問い詰められた経験があるせいだけど! …………すみません、マジで落ち着かないんですけど何でしょーか!?


 オレに視線を固定したまま、ちょっとだけノイエが首を傾げて言った。


「“反輝石”、持ってるのマメちゃんだっけ?」

「いんや、それはない。今持ってんの俺よ」


 ノイエの言葉に、ひらりと右手を振ることでレイが否定を返す。そんなレイの左手の中には、白く濁った手のひらサイズの石があった。

 何か形状はタマゴに近い。えぇっと……コレが“はんきせき”? 何だっけ、それ。何か聞き覚えはあるような気がするんだけど……。


「えー、じゃ何でマメちゃんが、ズバリとあたしやレイの属性言い当てられんの?」

「俺が知るわきゃないっしょ。ちびっこに訊きな、ちびっこに」

「……うぇ?」


 再び二人の視線がオレに戻ってきた。ええええぇっと……ナニゴト?


「マメちゃん、何であたしやレイの属性判ったの?」

「何で、って……」


 そう訊かれると、オレの方が困ってしまうワケなんですが……。え、ナニ、判っちゃまずかったの!?


 え、だって判るでしょ?

 瞳を閉じた方がより鮮明に判るけど、普通にしててもその人が持ってる力の色ぐらい判るってば。

 レイの中に感じる力は、赤い。ノイエの方は、僅かに黄色がかってるカンジだ。それは確かに、彼らが持つ力を示すもの。


 …………え、いや、だからそこで妙なカオされる理由がよく判んない。


「……どう思う?」

「どう、って言われてもねぇ。ホント怪しげなちびっこだなぁ……」


 ちょっと聞き捨てならないことを呟いたレイは、ひとつため息を吐いて手にしてたタマゴ形の石をノイエの方へと向けた。で、口の中で小さく何かを呟いたと思った瞬間に、その石がポゥと淡く光り始めた。白く濁ってた石が、優しい黄色へと色彩を変える。


「わ、何それ!?」

「これを『何それ』って訊いちゃうマメちゃんの反応の方が『何それ』って感じだわー。おねーさんビックリよ」

「え、何でっ!?」

「あのね、ちびっこ。これ、魔法使いの常識よ? 相手の『属性』を知るためのアイテム、“反輝石”」


 淡く光るタマゴ形の石を左右に振りながらレイがそんなことを言う。言われたオレは、ん?と首を傾げた。


 “反輝石”……で、魔法使いの常識で、『属性』を知るためのアイテム……?


「―――― あ、オレには必要ないだろ、って断言されたアレか」


 そうだ、思い出した。

 “反輝石”。どっかで聞いたことがあるとは思ってたけど、『学院』時代に授業で使ったことのある石だ、それ。

 相手の『属性』を知るのに必要となるアイテム…………だけど、お前には絶対に必要ないから、って言われて詳しい使い方とかは何ひとつ教えて貰えなかったアレだよね。今考えると酷い話だ。


 ひとつ思い出すと、記憶が芋づる式に思い出されてくるもので。


 コレを向けた相手の『属性』が色となって映し出される石、そんな特殊な石を総じて“反輝石”と呼ぶらしい。

 元は白く濁った色をした石なんだけど、対象人物の属性を読み取って、石の色は変化する。

 変化する色の種類は、主に四種類。『風』なら黄色、『火』なら赤、『地』なら緑、『水』なら青といった具合だ。

 さっき、レイがノイエに向けてこの石を使った時、現れた色彩は黄色。イコール、ノイエの属性は『風』ってことになる。


 オレが相手から感じる力の色も、“反輝石”に現れる色とまったく一緒の分類だから、その辺の違和感はないんだけど…………って、え、何? 何でそんなビミョーな視線をオレへと向けますか、そこの御二方。


「何かどうにも計り知れないコだわねー。どう思うー? レイ」

「いやだから、どうって訊かれてもねぇ……。怪しさがこうグングンと増してる感じはひしひしとするけれどもさ」

「え、何がっ!?」

「そこで何とか訊いちゃうちびっこが、おにーさんは不思議でしょうがない」

「だから何がっ?」


 ちょっとやっぱり聞き捨てならないことを言いながら、レイは今度は手にした石をオレの方へと向けた。石の色は、もう元の濁った白に戻っている。


 …………あ。

 それはちょっとばかりマズイ……、と思って止めようとしたけど、それよりもレイが石を発動させる方が早かった。


 一瞬の空白の後、石はゆっくりと色を変えた。

 赤、青、黄、緑……それから、黒と白、そりゃもうこれでもかってぐらいに色彩を変化させて ―――― 最後はその色を全部混ぜたみたいに、ぐちゃっと斑に染まった。

 あああああ、やっぱこうなるワケね……!


 過去にもあった光景。

 やっぱり『学院』の授業で、オレへと向けられた“反輝石”は斑に染まった。

 通常ならありえない反応に先生はちょっと固まってたけど、友人達はむしろ「やっぱりね」って納得の表情になってた。

 ………………納得されるのもどうなんだ、という話…。


「……どーゆー反応よ、これ」

「わー……、初めて見たわ、こんなの」


 斑に染まった石を眺めて、レイが呆れたみたいに頬杖を付く。その隣で、ノイエがいっそ感心してるともとれる調子で石を覗き込んでいる。

 直後、これはどういうことかと問う二人の視線に、オレは晒されてたりするワケで。

 ううう、その視線嬉しくないぃ!


「えぇと、あの、何ていうか……」

「何ていうか?」

「オレ、全属性扱えたりね、するワケで……」


 だから、石に全属性分色が現れて、なおかつ斑に染まったりするんだよー、みたいなことをしどろもどろに伝えていたら、途中でレイの声に遮られました。


「ちびっこ……ちょっと待ちなさい」

「うぇっ、はいっ?」

「……ねぇ、マメちゃん、貴方ホントに人間?」

「はいっ!?」


 え、イキナリ何だ、その反応?! 何でオレ人間かどうかなんて、そんな根本を疑われちゃってんの!?


 結構な暴言を真顔で言い放ったノイエは、けれどオレに何かの返答を期待してたワケではないようで、すぐに石へと視線を戻した。ふ、普通に酷いと思う……! これって放置とか言わね?


「うーわー、言われてみればホントに全属性の色が出てるわよ、コレ」

「しかも、ここ…………」


 ふと、途中でレイが言葉を途切れさせた。ここ、と言いながらレイが撫でていたのは、石の中で白と黒に染まった部分。

 しばらくそこを指先で撫でてたレイだけど、不意に「……ま、いいか」と呟いて石から指を離した。?? な、何だろう、その反応は…。



「ねー、ちょっとー。コレ、何て書く? マメちゃんの属性」


 声に振り返れば、ノイエがペンを片手に紙をひらひらとさせているところだった。

 ……あ、忘れてた。コレに各自の属性を調べて書きなさい、って話だったよね。今そういう作業してたんだよね、そういえば。


 ノイエの問いに、レイがあー……と視線を宙へと動かした。

 そのまま、数秒。



「…………よし、属性『非常識』とでも書いとくか」

「待って」



 ちょっと待って! それは待って!!

 じょ、冗談だよね、それ!? ……って、ホントに書こうとしてるし! 「あ、それいいわねー」とか隣で同意してるノイエもどうなんだ!?



 ぎゃあぎゃあと二人と攻防戦を繰り広げてたオレは、直後「そこ、騒がしいぞ!」と担当教官に注意されました。



 いや、ね。うん。

 騒いでたのは、悪かったと思うけど。



 …………釈然としないって、こういう心境のことを言うんだと思う。


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