第2話 疑問?難問?回答!
「ひっ……!?」
光の真っ直ぐで甘い視線に耐えかね、太は慌てて両手を前に突き出して制した。
「ま、待て! ちょっと待ってくれ!」
「ふえ? どうしたんですか、おじさん?」
きょとんと首をかしげる光に対し、太は頭を抱えながら、ずっと胸の中で渦巻いていた最大の疑問を口にした。
「……なぁ、なんで俺なんだ?」
「え?」
「いや、え? じゃないだろ。俺は45歳のくたびれた社畜のおっさんだぞ? 加齢臭も気になる年頃だし、毎日残業で死にそうな顔して帰ってくるだけの、何の面白みもない中年だ。なのに……なんで隣に越してきたばかりの女子高生が、俺なんかに興味を持って手料理まで振る舞ってくれるんだよ。普通に考えて怪しすぎるだろ……! 何かのサギか? 新興宗教の勧誘か!?」
切実に訴える太を前に、光は一瞬だけ呆気にとられたような顔をした。
だが次の瞬間、そのパッチリとした瞳をふわりと細め、心底嬉しそうに、そして愛おしそうに微笑んだ。
「ふふっ、サギでも勧誘でもないですよ。……ずっと、探してたんです。私を助けてくれた、優しくて素敵なおじさんのこと」
「は……? 助けた……?」
「忘れちゃったんですか? ……助けてくれたじゃないですか。5年前の公園で」
「……え? 5年前……公園……?」
身に覚えのない言葉に太が首をかしげると、光は両手をそっと胸の前で組み、完全に恋する乙女の表情で太を見つめた。
「あの日、泣いていた私に……おじさん、缶のココアをくれたんです。『生きてりゃいいことあるよ』って、優しく頭を撫でてくれて。私、あの時からずっと……おじさんのことが忘れられなくて」
「(5年前……? 確かに残業続きで精神が病んでた時期に、夜の公園で泥酔して誰かにココア奢ったような……いや、相手は確か学ランを着たボロボロの男の子じゃ……!?)」
太の脳裏にうっすらと浮かびかけた違和感の記憶。
しかし、目の前で「運命の再会」に頬を染め、ウルウルとした瞳で自分を見つめてくる完璧な美少女の威圧感に、その違和感は一瞬で吹き飛んでしまう。
「……だから、これは運命なんです。私、おじさんの隣に住むために、ずっと準備してきたんですよ♡」
「(待て待て待て! 完全にロマンチックなモードに入ってる!! ていうか重い! 乙女心が重いし可愛いけど、相手はJKだ! 通報されたら俺の人生が終わる!!)」
太はプルプルと震える手で胃薬の袋を破り、水も飲まだに口へと流し込んだ。
(※太はまだ気づいていない。5年前の公園で助けた『泣いていた学ランの男の子』こそが、目の前で恋する乙女の顔をしているこの可愛い子――光本人であることに……!)




