第2世界 『勇者召喚』研修
天界へ転送された次の日の朝――
ルミナ「はい、という事でね。本日は異世界創造の前段階として、“勇者召喚の実地研修”を行います」
神(新棚 加見)『急に神チャンネル始まっちゃったよ。どうせサムネで肌見せて、アクセス稼ごうって魂胆でしょ?ってか研修!?異世界作る前に研修あんの!?』
ルミナ「ちっ……」
神『また舌打ちぃ?設定上はアンドロメイドのくせに感情ダダ漏れ過ぎじゃない?』
ルミナ「そのような感情は許可されておりません」
神『はい引っかかったー!許可されてないなら、舌打ちするのもいけないと思いまーす!』
ルミナ「……」
ルミナ「はい、という事でね。本日は異世界創造の前段階として、“勇者召喚の実地研修”を行います」
神「なんで2回言うのよ。そういや、異世界転生ものってさ、元の世界では死んでるパターンが多いじゃん? 俺の場合って、みんなの中では、交通事故か何かで死んだことになってんの?」
ルミナ「いえ、新・神様の場合は『そっくりさん』が代わりに暮らしています」
神『なんで?神様だけ特別に「そっくりさん」なの?初めて聞いたんだけど、そんな裏設定の作品なんてあったっけ?』
ルミナ「よろしければ、一度ご覧になりますか?」
ルミナの両目がスクリーン状に変わり、現実世界の教室を投影した。
そこに映っていたのは――
授業中に机に突っ伏して寝ている「新棚 加見」……
神「……なんか違くない? えっ、俺って周りから見たらあんな感じに見えてんの?」
ルミナ「自撮りと他撮りの違いのようなものです」
神『そうかなぁ。でもアレ、身体は人間だけど顔の部分とかラクダだよ?唾液とかめっちゃ臭いやつだよ?なんでみんな受け入れちゃってんの?……あ、ちょっと待って」
投影の中で、隣の女子が鼻をつまんで盛大に舌打ちし、デオドラントスプレーをぶっかけている。
神『ほら、めっちゃ『臭ぇんだよお前』って顔されてんじゃん!あれ? ラクダ、泣いてる……?』
ルミナ「問題ありません」
神『むしろ問題しかなくない? まぁ、どうせもう元の世界には戻れないんだろうし、どうでもいいかぁ』
ルミナ「戻れますが?」
神『嘘でしょ?神様だよ?俺が居なくてもいいなら、なんで転送されたの?」
ルミナ「嘘です」
神『嘘かぁ。そういう冗談も言うんだ?でも嘘で良かったよ。流石にあのラクダへの扱いみたら、元の世界に戻ったら泣いちゃいそうだもん』
ルミナ「明日はラッコです」
神『日替わりかぁ。元の世界のみんなって、そんなに俺に興味無かったの?ラクダからラッコだよ?絶滅危惧種の海獣で日本に3頭しかいないって言われてるやつだよ?「ラ」しか共通点無いじゃん』
ルミナ「コアラ、という選択肢もございますが……」
神『なんなの、その「ラ」縛り。どうせ縛るならライオンとかカッコいいのにしてよ」
ルミナ「すいません、下ネタはちょっと……」
神『縛り?縛りの部分?どうやって「ラ」の形に縛るんだよ、頭の部分切り離されるじゃん』
ルミナ「本日の作業は、新たな勇者を異世界に召喚していただきます」
神『会話ぶった斬るの好きだよねぇ。そういや勇者って、どういう基準で選んだらいいの? やっぱ顔? 顔か?ラクダでも勇者になれんの?マニュアルとかある感じ?』
ルミナ「あー、そこになければ無い感じですねー」
神『店員か。品出し中に「話しかけてくんなオーラ」出してる店員かよ』
神『元の世界から勇者召喚する時って、その人はどうなっちゃうの?俺みたいに「ラ」縛りで、顔だけアニマルと入れ代わる感じ?』
ルミナ「死にます」
神『死ぬのかぁ。俺が殺しちゃうみたいでなんか嫌なんだけど、その、苦しまずに死んじゃうやつなんだよね?』
ルミナ「最近のトレンドは車に轢かれるか、過労死ですね」
神『鬼じゃん。過労死とか、もう頑張ったじゃん。成仏させて休ませてあげよ?』
ルミナ「ちなみに、先代の神様は、ムカつく人間を選んで殺したいが為に、勇者にしては碌でもない異世界に召喚しておりました」
神『死神じゃん。それもう神様じゃなくて、まごう事なき死神じゃん。でもまぁ、誰でもいいならいっそムカつくやつもありなのか?』
同じ頃――
名門・神ヶ丘高校サッカー部グラウンド。
スポーツ情報番組
「スパルタ!」の取材班が来ていた。
アナウンサー「それでは大岩監督! 今年のチームの展望をお願いします!」
大岩監督「今年は新たなエース、新田 神斗の加入により、インターハイ優勝は確実です! 彼は将来の日本代表を背負う逸材です!」
マネージャー候補の女子たち「キャー! 神斗きゅふぅん!!」
新田 神斗は爽やかな笑顔で手を振っていた。
そのすぐ後ろで、
ラクダ顔の加見そっくりさんが「ふしゅるるるる……」と唾液を飛ばしながら立っている。
女子たち「きっしょ……◯ねばいいのに。さっさと神斗きゅふんにインタビューしなさいよね」
すると――
突然、グラウンド横の道路から
暴走トラックが突っ込んできた。
ドゴォォォォン!!
新田 神斗「――!?」
監督「新田ぁぁぁぁ!!」
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白い花畑の映像が流れた後、
血まみれの新田神斗が、呆然と立ち尽くしていた。
轢かれた直後の新田 神斗「……こ、ここは一体? 僕はさっきグラウンドでインタビューを受けていたはずなのに……」
神『(小声で)えっ、なんでこの人血だらけなの? 中身出ちゃってんじゃん。朝からグロいのマジ勘弁して欲しいんですけど』
ルミナ「最近のトレンドですと、先ほど申し上げましたが……」
神『いや、そんな地産地消みたいなノリで言われても……。何あれ、痛みとか感じてないの?ってか、本人は死んだの気付いてないの?』
ルミナ「神斗きゅふぅん様、突然ですが、貴方様は勇者としてインターハイ出場し、田舎のおばあちゃんに孫孝行をしていただきます……」
神『うん、死んじゃってるけどね。孫孝行どころか、祖母不幸者だけどね。ってか、勇者としてインターハイ出場ってなによ。いつから国防戦になったのよ』
轢かれた直後の神斗「……え、僕が勇者に!?」
神『理解が早くて助かるわぁ。えっ、神斗きゅふぅんってこんな天然記念物の愛されキャラだったの?』
ルミナ「新・神様も絶滅記念物ですので、格付けとしては互角かと……」
同じ頃――
名門・神ヶ丘高校
仄暗い陰キャ達の巣窟(一年生の教室)。
暑苦しそうな人(田中)「いつの時代もロリカワエルフ一択でござるよ!一番ありえないのが、天界で神に仕えてるとかいう、The・ありきたりな設定の、銀髪でクールぶってるヒューマロイド型メイドでござるな。自分が作品のヒロインだと主張して来るあたりが痛々しいでござる」
暑苦しそうな人(田中)「……え、僕が勇者に!?」
神『(小声で)えっ、ちょっ、ルミナさん?俺コイツ転送してないんですけど。ってか、顔見知りなんですけど……』
ルミナ「代わりに私が呼びました。光学迷彩を施していますので、現在お二人には神の姿に見えておりますので問題ございません」
神『神様じゃなくてもお呼びできちゃうんだ。それで、いきなり勇者候補二人になっちゃったけど、大丈夫なのこれ』
ルミナ「勇者召喚を必要としている異世界は星の数ほどございますので、些末なことです。どうでしょう、よろしければ、転送した人物に合わせて最適な異世界への召喚手続きをさせていただきますが」
神『うん、まだどんな異世界があるか分からないし、じゃあ、お願いしちゃおうかな』
ルミナ「では、手続きを進めます。神斗きゅふぅん様は『サッカ星』へ、豚野郎は『豚の惑星』へと召喚いたします」
神『根に持ってるよね?さっき、田中がルミナの設定ディスったの、絶対根に持ってるよね?』
ルミナ「いえ、そのような感情を抱く事は許可されておりません」
神『すげぇ嘘つくメイドがいるらしいじゃん』
ルミナ、二人の勇者召喚儀式を行う。
二人はありきたりな白い光に包まれる
轢かれた直後の神斗きゅふぅん「サッカ星、僕が必ず救ってやる!!」
豚野郎「ブヒィィィィィ!!」
神『最後の意気込みくらい、ちゃんと言わせてあげて?……勇者召喚って、思ったより雑なんだね。ってか、毎回こんな感じでいいの?』
ルミナ「いえ、本日は“勇者召喚の練習”で、明日からは、いよいよ"新しい異世界そのものを創造"していただきます」
神『……え、異世界創るより先に“勇者召喚”しちゃったの?順番おかしくない?』
ルミナ「異世界創造神としては、一般的な流れです」
神『一般的なんだ……。じゃあ、次回からは本格的に“異世界づくり”ってわけね』
ルミナ「はい。明日からが本番です、新・神様」




