子どもたちのお茶会 7
「……国王陛下の妹である私にこのような仕打ち、許されません」
アンナーティアは、動揺することもなく背を伸ばした。
以前から美しかったが、堂々と立つ彼女は神々しいほどに美しい。
「先日の戦にて、隣国と内通し情報伝達を邪魔した罪に問われています」
「……」
アンナーティアが軽く眉を動かした。
彼女がメリッサとフェリオのやり取りを邪魔したことは事実だが……。
「証拠があるとでも?」
「ロイフォルト伯爵と夫人に確認すればわかることでしょう」
「……」
憲兵がフェリオとメリッサのそばに歩み寄った。
「――事実、情報が途絶えたと聞き及んでおります」
「……事実だ」
「夫人との手紙のやり取りも滞ったと」
「……」
メリッサは、慌てて前に歩み出た。
アンナーティアは、当時まだ十二歳。
恋心を利用されたのに、ほかの罪までかぶせられるなどメリッサには許せなかった。
「……ロイフォルト伯爵夫人もお気の毒に。夫との連絡が取れずに苦労されたことでしょう」
「手紙なら、届いておりましたよ? 何か間違いがあるのでは」
「しかし……」
メリッサは、バッグから手紙を取り出した。
それは、先日ラランテスがメリッサに手渡した手紙だった。
「これは、夫が戦場から私宛に送った手紙です」
「……そんなはずは」
「ご覧になりますか?」
本来であれば、メリッサがアンナーティアをかばうはずがない状況だ。
遠くから風に乗ってささやき声が聞こえてくる。
「なんてお心の広い……」
「許さなくても良いと思いますけれど」
「仕方ないですわ。そんな奥様だからこそ私たちは……」
視線を向ければ、そこにいるのは上品な老婦人三人組だ。
彼女たちは扇で口元を隠しているが――何かを企んでいるようにも見える。
周囲が騒いでいる様子はない。
フェリオだけは眉根を寄せたから聞こえたのだろうが……。それだけではない、彼は上を向いた。
メリッサもつられて視線を向ける。
シャンデリアと同じ高さにあるギャラリー。
本来は、王族が広間を見下ろす場所のはずだが……。
「あ……あの子たち!」
参加者たちは、気がついていないようだが確かにルードとリアだ。
ルードとリアが書類を上からばらまいた。
次の瞬間突風が吹き荒れた。
「何が起きたのでしょう」
「――ほぼ間違いなく、フレデリカ様の指示によるものだろう」
風は参加者たちの手に一枚ずつ紙を届ける。
次に視線を向けたとき、ギャラリーは無人で、すでにルードとリアの姿はなかった。
どこからか、三人の侍女と国王の祖母の高笑いが風に乗って聞こえてきた気がした。




