子どもたちのお茶会 6
「ローザ様が、お母さまとお話ししたいっておっしゃってるの」
「連れてくるようにとおっしゃってるよ」
「まあ……」
メリッサは、フェリオに視線を向ける。
しかし、彼はいまだ人に囲まれこちらに来ることは出来なそうだ。
彼は、この国において重要な立ち位置にある。しかし、最前線に三年もの間いたこともあり、社交界にはほとんど参加していない。
この機会に、彼と話したいと思う高位貴族が多いようだ。
「行きましょう」
メリッサは、フレデリカの元へと向かった。
「国王陛下の御祖母であらせられるローザ・フレデリカ様。お呼びと伺い参りました」
「ロイフォルト伯爵夫人、よく来てくれたわ」
フレデリカは、扇を開いた。
扇には今日も、虎と王座……王家を表すモチーフが描かれている。
「……」
「そんな顔しないでいいの。あなたが、どれほど夫を支え、この国に献身したか知らぬ者はいないわ」
フレデリカの視線が、先ほどの二人に向いた。彼女たちの顔色は、青ざめている。
ルードとリアはニコニコしているが、メリッサは気が気ではない。
そのとき、フェリオが戻ってきた。
「おや、妻の危機にそばにいないなんて」
「いざとなれば、何を置いても駆けつけますが、メリッサ一人でもあのような者たちどうということはないでしょう」
「まあ、信頼しているのね」
「ええ、妻は努力家で、困難を乗り越える力を持っています」
「ふふ……」
フェリオは素知らぬ顔でそう言った。
フレデリカはいかにも楽しそうに笑ったし、ルードとリアは目を輝かせた。
メリッサは頬が熱くて仕方がない。こんな場所なのだから、平静を保たねばと思うのに……と、急ぎ扇で顔を隠した。
そのとき、会場が静まりかえった。
振り返ると、入場してきたのは未婚の王族だ。
国王陛下の弟妹の中で、未婚なのは第八王女アンナーティアのみ。
そのほかの子どもたちは、まだ幼い。
メリッサとアンナーティアの視線が交差した。
彼女は、王族としての感情が読めない笑みを浮かべている。
二人きりで会ったときの、学園内での表情の変化が嘘のようだ。
そのとき、アンナーティアを真っ黒な制服の騎士たちが取り囲んだ。
真っ黒な制服は、近衛騎士団や王立騎士団とデザインは同じだが物々しい。軍事犯罪を裁く専門の部署、軍務監察隊の制服だ。
「――どうして、この場所に憲兵が……」
「魔術精霊派が動き出したようだ」
メリッサが視線を向けた先に、フィアーレ公爵がほの暗い笑みを浮かべていた。
その横では、レティシアが震えている。
アンナーティアを守るように、近衛騎士が憲兵の前に立ち塞がった。だが、彼らの表情には明らかな困惑が浮かんでいる。
「此度の魔術師団の戦いで、情報を他国に流し、魔術師団長を危機に陥れた疑いで第八王女アンナーティア・ティアレイアを罪に問う!」
憲兵が声高に叫んだ。
王族に手を掛けることは本来許されない。
だが、唯一例外がある。
国家機密の漏洩や敵国への内通など、戦時中の国益を損なう疑いがある場合、憲兵隊は王族であっても一時身柄を拘束できるのだ。
「フェリオ様……!」
「君が心配することはない。手は打ってある」
彼らはまるで、悪人を捕らえるようにアンナーティアを取り囲んだのだった。




